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第六十九幕「三人だけの密談」~呪いを解く次の試練~

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 晩餐を終え、就寝までの女王陛下の短いプライベートタイム。
 アレクシアの自室の大きな厚い扉の前には、二人のいかめしい衛兵が、近づく者を威嚇するように直立不動の姿勢を保っている・・・。

 そこに侍女長ヴァネッサと若い給仕の侍女がワゴンを押して静かに近づく。
 最近、王宮内でもあまり使わない、古めかしい大型のティーワゴンだ・・・。

 「貴方達、いつもご苦労さま・・・ちょっと女王陛下と折り入ってお話をすることがあるから、貴方達は私が出てくるまで、少しの間外してちょうだい、そうそう、侍女達の部屋に焼きたてのダリオルがあるから、貰って食べてちょうだいねっ」

 「・・・はいっ、ヴァネッサ様、有難うございます!それではお言葉に甘えまして失礼します!」

 ワゴンを押してきた若い侍女も帰し、アレクシアの自室を警護する番兵さえ人払いして、侍女長ヴァネッサがティーセットを備えたボックス式の大きなワゴンとともに、女王のプライベートルームの扉の前に立つ。

 「アレクシア様、私です、ヴァネッサです・・・・」

 「・・・・お入りなさい」

 中からアレクシアが返事をすると、頑丈な扉を開けて、重そうなティーワゴンとともに入ってくるヴァネッサ。

 部屋の扉をしっかりと閉め施錠した後、ヴァネッサが古風な大型ティーセットのワゴンに小声で囁く。


 「・・・・もういいわよ、出てきなさいっ・・・」

 「はあっ・・・狭くて死ぬかと思いましたっ・・・・」

 ・・・ゴロン!

 大きなティーセットのワゴンのボックスから転げ出てきたのは・・・・アラミスである。
 彼はヴァネッサによって、中を空っぽにしたティーセットのワゴンの中に無理やり押し込まれ、女王のプライベートルームに闖入してきたのである。

 王宮の窓から侵入する「間男」になったり、ワゴンに閉じ込められたり、最近のアラミスは受難続きだ・・・これも全て、女王アレクシアにかけられた呪いに関わったが為である。

 ここで、女王アレクシアと侍女長ヴァネッサ、そして受難続きの少年士官アラミスが揃ったのだ。
 ヴァネッサが三人のカップにお茶を入れて一息つくと、早速アレクシアが口を開く。

 「・・・・ねえっ、ヴァネッサ・・・・次の策は・・・どうしたものかしら?」

 アラミスとのプライベートセッ〇ス、それはアレクシアにかけられた淫欲の呪いの苦しみを一時的に緩和する「応急処置」でしかない。
 女王アレクシアが、魔女の呪いから完全に開放されるには、千人の民の目の前で恥ずかしい性行為を披露するしか方法はないのである。

 ・・・・目下、女王アレクシア自ら出演する「性交ショー」を目にしたものは合わせて300人程。
 彼女はあと700人の目の前で、恥ずかしいセッ〇スの痴態を公開しなければならないのである。

 ・・・・どんな女性でも・・・場末の落ちぶれた娼婦でさえも嫌がる、衆人環視の中での「見世物セッ〇ス」・・・それをしなければならないのだ。

 この呪いの件を知っているのは、魔女討伐の際にその場に居合わせた侍女長ヴァネッサと、少年士官アラミスだけだ。
 今まで、ヴァネッサの発案で、歓楽街の劇場での「セッ〇スショー」、放蕩貴族達の開催する秘密倶楽部での「見世物」など、色々な手を尽くしてきたが、それらの手はもう二度は使えない・・・・。

 万策尽きた感じのある女王アレクシアはやや苛立ち気味だ。

 「・・・・そうですねぇ、アレクシア様、実は色々考えてはいるのですが・・・・」

 「・・・・なにか案があったら言って頂戴っ!もう呪いの苦しみはたくさんだわっ!一日でも早く、この忌まわしい呪いから開放されたいのっ!」

 魔女エウディケに淫欲の呪いをかけられたのは、女王アレクシア自身の慢心が招いた、いわば「自業自得」である。
 しかし、忠臣の侍女長ヴァネッサは、あくまで真面目に様々な策を考えているのである・・・涙ぐましい努力とも言える。
 なにせ、一国の女王が、まるで娼婦のように民の目の前で「セッ〇ス」して見せるというのである・・・。

 「・・・・あのっ・・・アレクシア様はお気に召さないとは存じますが・・・」

 ヴァネッサが、少し言いにくそうに自信なさげな声で言う。
 ・・・その声の調子で、次の策も女王アレクシアにとって恥辱にまみれた方策であることは予想できる。

 「・・・・い、言って頂戴っ、ヴァネッサっ!・・・この呪いから逃れる為なら・・・・」

 アレクシアにも選択肢はないのである・・・・ヴァネッサは女王の反応を見ながら、小さな声で続ける。

 「・・・・はいっ、もう首都近くでの行動はどんなやり方でも無理だと存じます、盛り場の劇場も、貴族達の秘密倶楽部も・・・・もう危険過ぎて二度とは出来ないでしょう・・・・」

 「・・・・・ま、まあ、そうね・・・・」

 次の一手を切望するアレクシアも、ヴァネッサの言葉には納得するしかない。
 首都近辺で、「女王」の身分を隠して淫らな公開セッ〇スを行う道は絶たれたと言って良い・・・。

 ヘマをして女王アレクシアであることがバレた瞬間・・・・国がひっくり返るほどの騒ぎとなるのは火を見るより明らかである。

 「・・・それは分かるわ・・・・で、何かいい方法は・・・・」

 女王アレクシアが、身を乗り出してヴァネッサの次の言葉を促す!

 「・・・・はい、この王宮のある首都ラノールから離れて、辺境の田舎町まで行って・・・」

 「・・・・ええ」

 アレクシアが思わず頷く、女王の正体がバレる危険性が高い首都ラノール近辺で活動するよりは、いっそのこと首都から離れた田舎町で行うというのは理にかなっている。

 「場末の盛り場で・・・・そ、そのっ・・・ショーを行う、というのは如何でしょう?」

 「・・・あの、ローシェルの劇場でしたみたいに?」


 「・・・・そっ、それが・・・・」

 ・・・・なにかをいい渋るヴァネッサ。

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