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第二十八幕 「女王危機一髪」~ヴァネッサの天誅~

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 「ぐふふっ・・・この国の女王様の子宮に俺の子種をブチ撒けるっ!最高じゃねえかっ!オオッ!・・・ウオオッ!だっ、射精すぞっ!中に射精すぞおっ!俺の子種で孕めっ!アレクシア女王っ!」

 ・・・・ジャン=ベルジュが、女王の畑に禁断の種を撒こうとしたその瞬間!

 ・・・ガチャッ!バタンッ!

 けたたましい音を立てて、楽屋の扉が勢いよく開かれる!

 「ジャン=ベルジュっ!ロレーヌさんから離れろっ!」

 前立腺をひくつかせ、放精のカウントダウンに入っている男の後ろから飛びつき、引き剥がそうとする小柄な男の影。

 ・・・・・アラミスである!

 彼はアレクシアに命令され、一度は一人で劇場を後にしたものの、ふと不安になって様子を見に楽屋に戻ってきたのであった。
 普段、絶対に女王の側を離れない侍女長ヴァネッサの不在、そしてジャン=ベルジュの言動にかすかな違和感を覚えたのである。

 「・・・・ああっ!アラミスっ!来てくれたのねっ!」

 「ぐわあああっ!なっ、なんだっ!」

 ブチュウッ!・・・ジャン=ベルジュの射精寸前のペ〇スがアレクシアの女陰から飛沫と共に抜け出て、彼の巨体は背中から床にひっくり返る。

 「・・・きっ、貴様っ!ロレーヌさんになってことをっ!」

 男の巨体に馬乗りになり、動きを封じようとするアラミス。
 ・・・・しかし、○○歳の少年士官と、このデップリと太った巨漢とでは、体力の差があり過ぎた。

 「てっ、てめえっ!お楽しみを邪魔しやがって!ぶっ殺してやるっ!」

 ブルンっ!・・・ヌロヌロと淫液に光る、勃起したままのペ〇スを槍のように振り立てながら、ジャン=ベルジュがクリルと体を入れ替え、逆にアラミスを組み敷いてしまった。

 「せっかくいいトコロだったのによおっ!!野暮な真似しやがって!それに、こいつはロレーヌなんかじゃねぇ!この国の女王、アレクシアだぜっ!お前も知ってたんだろっ!」

 グギッ!・・・ドスッ!

 二度、三度・・・強烈な拳が、アラミスの頬を直撃する。
 軍人と言えども、入隊したての見習い准尉・・・この体格差はアラミスにとっては形勢不利だ。

 「グウウッ!」

 なす術もなく殴られ続けるアラミス。
 ジャン=ベルジュが、床に脱ぎ捨ててあった自分のズボンに下げていた短剣を引き寄せ鞘を払う。

 「可哀想だが死んでもらうぜっ!」

 間一髪!・・・・ジャン=ベルジュが短剣を大きく振り上げた瞬間だった。


 ・・・・ドスウッ!

 「・・・・この外道っ!地獄に堕ちなさいっ!」

 「グゴッ?・・・ぐっ・・・オグッ・・・グアァ!・・・」


 ジャン=ベルジュの脳天に深々と突き刺さりあごまで抜けたニードル状の懐剣!
 男の後ろに目にも止まらぬ速さで忍び寄った陰・・・・それは侍女長のヴァネッサだった!

 「ハアッ、ハアッ・・・ま、間に合った・・・申し訳ございませんでした、アレクシア様っ・・・」

 眠り薬を盛られ、朦朧としながらも気力で立ち上がり楽屋に戻った侍女長ヴァネッサ。
 彼女のいつものコスチューム、くるぶしまで隠れるロングドレスの中の、白い太腿を覆っているガーターには、いつもニードルや投げナイフなどの暗器が収納されているのだ。

 「・・・・ヴァネッサっ!」

 「・・・も、申し訳ございませんっ、アレクシア様っ・・・この男に一服盛られて、不覚を取りましたっ・・・お許し下さい・・・」

 ズチュッ・・・・愛用の長いニードルをジャン=ベルジュの頭から引き抜くヴァネッサ。
 糸の切れた操り人形のように無様ぶざまに床に転がるジャン=ベルジュの巨体・・・即死である。

 ピュル・・ピュルゥ・・・床に仰向けにひっくり返ったジャン=ベルジュの勃起したままのペ〇スの鈴口から、弱々しく白い精液が溢れ出し、天井を向いて直立したままの太い竿を伝って床に流れる。

 ジャン=ベルジュの精液は間一髪で、女王の高貴な畑ではなく、楽屋の薄汚れた床に撒かれたのである。


 「・・・・危なかったわっ!ヴァネッサっ!・・・お前らしくもない失態ねっ!」

 「は、はいっ・・・弁解の余地もございませんっ・・・アレクシア様・・・」
 
 そう言うヴァネッサも青い顔をして、フラフラとして今にも倒れそうだ。
 まだ眠り薬の効果が残っているのだろう。

 「・・・・アラミスっ!ヴァネッサを介抱なさいっ!」

 「・・・はっ、はいっ・・・」

 ジャン=ベルジュにしたたかに殴られ、顔を真っ赤に腫らしているアラミスが、慌ててヴァネッサをソファに寝かし、アレクシアの裸体にはローブかける。

 「アラミスっ!・・・なんなのっ!あのザマはっ!それでもロシュニア王国陸軍近衛師団の准尉なのっ!訓練が足りないわよっ!」

 アレクシアが、厳しく叱りつける。

 「・・・は、はい・・・申し訳こざいません・・・・アレクシア様・・・」

 必死の思いで女王を助けたにもかかわらず、逆に叱られションボリとするアラミス。
 ヴァネッサも何とか回復し、女王アレクシアも一介のストリップ嬢「ロレーヌ」に戻って、楽屋を後にしようとした時、アレクシアが、アラミスの耳元でそっと囁いた。

 「・・・・ありがとう、アラミス・・・あなたが来てくれなかったら、危なかったわ・・・」


 ・・・その夜の後始末は大変だった。
 急いでお城に戻ったヴァネッサが、自分に忠実な秘密警察のエリート部隊を使い、ジャン=ベルジュの死体を楽屋から運び出し、床の血痕を全て拭い去って証拠隠滅する。

 ・・・・翌朝、市内を流れる大河、ジャロン河の川岸に、顔をメチャクチャに潰された男の全裸死体が流れ着いたのを、水汲みに来ていた近所の農婦が発見して人々を脅かせた。
 所持品も一切身に着けていない身元不明のその死体は、結局引き取り手も現れないまま、近くの教会の無縁墓地に葬られた。

 歓楽街ローシェルでは、いくつもの酒場を経営する遣り手の経営者、ジャン=ベルジュの失踪が話題となった。
 高利貸し、女衒ぜげん、賭場・・・法律スレスレのあくどい事にも手を染めていたジャン=ベルジュは敵も多い男だった。

 この国一番の歓楽街・ローシェルでは珍しくもない様々な事件、縄張り争い、抗争・・・彼の失踪は金銭絡みのトラブルと思われ、そのまま人々の記憶から消え去っていった。

 この歓楽街を賑わした、突如、彗星の如く出現した美貌の踊り子・ロレーヌ嬢も、ジャン=ベルジュの失踪と時を同じくして姿を消したことも、いつの間にか人々の記憶から忘れ去れていったのだった・・・。


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