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【二十四】【番外編♥】少し真面目に、真言立川流について調べる方法・・・・
しおりを挟む誤解を恐れずに言うと、おそらくは「正統」な真言密教のトップに脈々と受け継がれていた最強にして秘密の「真の教え」、日本の仏教史上最も危険な経典「理趣経の真の解釈」
そんな門外不出の、師から選ばれた弟子にしか伝えられてこなかった「秘法」を、平安時代末期、朝廷内の陰謀とゴタゴタで伊豆に「島流し」となった高僧・仁寛が、失意の自殺の前に彼を訪ねてきた氏名不詳の「立川の陰陽師」に公開したのでしょう。
越法罪・・・「資格の無いものに真言の秘密の教えを公開する罪」を、あえて高僧・仁寛が犯し、自分の持っている真言宗の「闇の秘儀」「理趣経の真実の教え」を、自分を訪ねてきた立川の陰陽師に伝えたのが真言立川流の起源だと・・・多数の文献から勘案して、私はそう考えております。
権力の絶頂から失意の島流しへ、そして自殺の決意・・・死を目前にした、彼なりの朝廷、仏教界に対する、一種の彼の「復讐」でしょうか。
仁寛も「醍醐三宝院流」の創始者を兄に持つ高僧で、宮中に出入りしていたくらいですから、抜群の知力と魅力、そして強力な法力を持っていた事でしょう。
しかし、仁寛から真言宗に口伝で伝わる秘密の教えを開示され、「真言立川流」の源流を作った「立川の陰陽師」もまた、類いまれな知識を見識、カリスマ性を持っていたのではないでしょうか。
中期密教の中でも「後期(タントラ)密教」への萌芽となり得る「性的」な教えと、中国の呪術をルーツにもつ「陰陽道」の完璧なるコラボ!
実は、呪術を得意とする「密教」と「陰陽道」はすっごく相性がいいのですね・・・。
それが、日本の宗教史上、最高に過激な淫祠邪教「真言立川流」を産んだのではないでしょうか?
とかくオドロオドロしい「髑髏本尊」の部分はおいといと、密教以外の宗派からは「煩悩が強く成仏できない劣った存在」と断罪された女性をも、性の別なく抱擁する壮大な教え!そして日々の暮らしや病気に苦しんて「来世」ではなく「現世」での救いが欲しい民衆のニーズに対する驚きの「解決策」(セッ〇スで即身成仏♥)
現世利益に対する民衆のニーズに上手く応えていない!・・・それが当時の仏教の最大の弱点であり、ヒンドゥー教に勢力を奪われた根本原因でした。
本編でも散々お話しましたが、原始仏教、初期仏教、そして上座部仏教あたりは、
「現世はもう諦めろ(笑)!この世で善行と修行を積んで、来来に少しでもいい世界に生まれかわって、そうして延々と修行を積んでいればいつかは「お釈迦様」のように悟りを開ける時もくる・・・かもしれないよっ♥」
・・・・そんな、驚くほど気が長くて、けっこう頼りない教えなのです(笑)
それに対し革新勢力「大乗仏教は」僧侶の義務として現世で苦しんでいる民衆の救済をテーマとしてきました!
自分一人が修行して悟りを得るよりも、今苦しんでいる民衆の救済を優先しよう!という教えです。
そしてヒンドゥー教との激しい競争の中で、次第に「現世利益」への容認は拡大の一途を辿り、密教ではほぼ仏教は「現世利益」(お金持ちになりたい~っ!恋人が欲しい~っ!等々)の総合デパートになりました(笑)
しかし、一般民衆はヒマな平安貴族達と違って働かないと食ってゆけませんし、坊主のように寺に篭って修行三昧!ってわけにもいきません。
せいぜい覚えた短い真言を唱えるか、お寺や坊さんに喜捨をして「徳」を積むくらいが関の山でしょう。
徳を積むことで間接的に「成仏」に近づく、随分と回りくどい方法じゃありませんこと、それって?
・・・しか~っ!(笑)
そんな回りくどかったり、メンドウかつ苦しい修行などせずとも「即身成仏」・・・つまり、この世ですぐに「成仏」できる秘密の方法が方法があるぞ~!というのが密教、特に真言立川流の最高の「売り」だったのです。
いわば「立川式インスタント悟り」メソッドですっ!・・・まあ、現代のわれわれの宗教的感覚から言うと「悟りの大安売り」「それってアヤしくない?」「なんかカルトっぽいよねぇ」
てな感じです・・・はい、まさにその通りです!(笑)
・・・その方法とは!・・・・散々繰り返してきましたので、もうお判りでしょう!
「真言立川流」における「即身成仏」の方法はズバリ、男女のセッ〇スです!
♥妙適淸淨句是菩薩位
男女のセッ〇スのウットリしちゃう快楽は、清浄な菩薩の境地だからっ!
・・・あの有難いお経「理趣経」を、面倒で難解で苦しい解釈をせずに、そのまま「実践」しちゃえは、大好きなカレシ・カノジョ(夫・妻)とキモチよお~く合体した瞬間に、成仏(ここでは死んじゃう事ではなく究極の悟りの境地に入ること!)出来ちゃうのです!
・・・誰でも、いつでも、どこでも!(野外でも?(汗))男女のセッ〇スで「即身成仏」っ♥
これは陰陽道の方では、女性(陰)と男性(陽)が一体化して調和することを意味しますから、陰陽道的側面からも「効果間違いなし!」と言える凄い行法なのです!
・・・こんな簡単・・・というか、簡単を通りすぎで最高にキモチのいい方法で、苦しい修行とか一切抜きで高僧と同じ「悟り」の境地に入れるのなら、こんな最高なものはありません!
というわけで、真言立川流的、陰陽合体即身成仏はそのシンプルな教えで、日本各地で大流行し、一時は「正統」の真言寺院の中にも影響力を持ち始めたといいます!
元々密教はその名の通り「秘密仏教」ですから、その真の教義、秘密裏に行われる祈祷や儀式に立川流のようなセッ〇スを用いたものが入っていたとしても何ら不思議ではありません。
宮中でも当時新興勢力として朝廷を圧迫していた関東武士への「調伏」の祈祷と称して、立川流的な「性的な」密教の儀式が極秘裏に行われていたことは想像に難くありません。
庶民から宮中、そして格の高い寺院にまで、「左道的教義」は深く入り込んでいた形跡があります。
・・・しか~し!そんな「堕落」した現状に異を唱える僧侶たちが出現しました!
清浄であるはずの密教寺院内部にまでコッソリと(堂々と?)入り込んでいた「立川流」的セッ〇ス礼賛を「エッチなのはいけないと思いますっ!」とばかりに声高に糾弾し始めた、「真面目派」が出現したのです。
・・・その代表が鎌倉、南北朝朝時代から室町時代に活躍した心定や宥快という僧侶達、彼らは「受法用心集」「宝鏡鈔」という書物を著して真言立川流を真っ向から批判し、弾圧に乗り出しました!
現在伝わっている「真言立川流」の断片的な「いかにも邪教」的内容は、まさにこの宥快達の遺した糾弾の書が重要な資料となっております。
(だからそれが真実かは不明ですし、糾弾する側からの視点ですから誇張もあると思います)
というのも、この後から江戸時代中期まで「真言立川流」は実際に徹底的に弾圧され、その経典、本尊などごことごとく破却されてしまい今はほとんど残っていないのです。
ですから、真言立川流については、実際に使われた曼荼羅とか、造られた髑髏本尊とか「直接的」な学術的資料はほとんど期待出来ないのです。
・・・いや、令和の世の中になっても、どこか我々の知らない「秘密」の場所で、密かに伝承されているのかもしれませんが、当然、現在は表向き「真言立川流」を名乗る宗派・宗教法人は存在しません。
紛うことなき「セッ〇ス教団」・・・あったら即解散命令ですねぇ、きっと・・・。
・・・さて、ここからはちょっと「いつもの」脱線コーナーになりますが。
実は、このエッセイは、私が長年趣味で読んでいる、かなり広範な(研究書から入門まで)真言宗系の本とか、私の尊敬する故・笹間 良彦先生の著作、そして時代はかなり古いですが、大正・昭和期の真言宗の僧侶「水原堯栄」氏の大著「邪教立川流の研究」という本を愛読して書いております。
特に、真言立川流についての認識と見解は、この水原氏の説に傾倒しております。
その際、確認作業として、お手軽なネットで「ウィ〇ペディア」を多少眺めてみました。
・・・が、「正確なようでけっこうシレッと嘘が書かれている」(笑)「ウィキペ〇ィア」!
真言立川流を調べると「実は巷で流布している、セッ〇ス儀式を行い荼枳尼天等を祀っていたのは「真言立川流」ではなく、名称不明の一団・通称「彼の法集団」なのである!」などという珍説に殆んどの紙面を割かれています!
・・・ちょっと意外性があって驚きでした(笑)
まあ。これなどは笑止千万で、少数・・・いえ、たった一人の研究者の「一論文」「新説」に過ぎませんから、わざわざ「真言立川流」を、いくら詳細不明とは言え「彼の法集団」なる珍妙な呼び名に変更する合理性も必要性も皆無でしょう。
真言立川流的儀式や祈祷は、その教義と実践の内容から、それを「表看板」で堂々と標榜した大きな寺院で行われていたものでないことは火を見るより明らかですし、むしろどこの寺にも属さない半僧半俗の無名の者達や、祈祷などで生計を立てている民間の宗教者(拝み屋・修験者のような)が細々と・・・そして秘密裏に伝えていったものでしょうから。
ある程度の組織性・横の繋がりが無かったとは言いませんが、「普通の寺」(本山・末寺制)のような、巨大なピラミッド的な組織があったわけではないでしょう!
その内容は理趣経の十七条清浄句を「そのまま」読んで、陰陽道的「隠し味」を加えればすぐに理解出来るのですから、巨大な秘密組織など無くても世間には流布するでしょう・・・。
最高に直感的で体感的、すぐに実践できる♥・・・実に判りやすい教義ですしね(笑)
その実態がどうであれ、鎌倉時代以前から「真言立川流」という名で認知され、歴史の中で糾弾されてきた一派の名が「真言立川流」ではなく「彼の法集団」である、などと主張するのはナンセンス極まりない事です。
歴史の中に事実として「存在」したのは「彼の法集団」という名称ではなく、たとえ実体は謎に包まれはいても「真言立川流」なのですから。
言葉遊び!・・・それはただの遊戯に過ぎません。
・・・「歴史」あるいは「歴史学」って研究成果が地味過ぎる分野だからでしょうか?「定説を覆してなんぼ」「話題になったら勝ち」みたいなイヤらしい部分がありますから、新説だけに重きを置くのはかなり危険という一例でしょう。
珍説・新説が話題性だけで注目を集めがちな世界とでも言うのでしょう。
「聖徳太子は実在しなかった」とか、「鎖国はなかった」とか・・・。
今の教科書ではどういう扱いになっているかは知りませんが「鎖国」なんてのは、江戸幕府が交易相手国と場所を厳格に限定した「管理貿易」の事が後世になってそう呼ばれ定着しているのですから「無かった」というのは極めて的外れな議論です。
いわば「江戸幕府式♥管理貿易」を今は「鎖国」と呼んでいるに過ぎないのですから。
鎖国についていえば「鎖国などなかった」派の論は「他国との外交を断った孤立状態」「幕府が完全に貿易を管理していた状態」とか、言葉自体を手前勝手に「定義付け」したうえでの詭弁でしかないでしょう。
鎖国は、最新の研究成果で判明した真実を、現在普及している「鎖国」という名で呼べばいいのです。
「日露戦争」の政府公刊誌的な正式名称は「明治三十七八年戦役」ですが、だからといって「日露戦争はなかった!」という暴論を吐く人はいないでしょう。
「太平洋戦争か大東亜戦争か」みたいな不毛な議論は歴史を見ると山ほどあります。
(ちなみにこれは、あの戦争をどう見るかという「視点」「イデオロギー」の違いでしかありません)
エンタメならそれでいいのですが、歴史研究の真面目な部分、教科書に影響してくる部分は厳格な精査が必要なのは言うまでもありません。
ええと、仏教から随分と脱線してしまいましたが、次からは話を本筋・・・真言立川流に戻しますね♥
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