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【二十】密教のその後の進化!(め、迷走だよねっ?)」・・・その前に脱線タイム「稚児灌頂」のおはなし♥

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 さて、密教の世界観と男女の認識について長々とご説明してまいりました。


 ・・・今回は少し(???)脱線して、みなさんのお好きな「ボーイズラブ」について仏教的に論じてゆきましょう(え、ええんか?)


 今まで、特にこだわりなく「密教」と表現してきましたが、ある程度厳密に言うと、今までお話してきたのは「日本の密教、つまり中期密教」限定であると一応お断りしておいた方がいいでしょう。

 以前にもお話したことがある気がしますが、密教は「初期」「中期」「後期(タントラ密教)」と、大きく3つに大別されます。
 同じ密教と称しても、その内容は劇的に変化しているのです。


 また「密教」としての運動が起こる前から、単発的・部分的にではありますが、仏教にもインド由来の呪術や「おまじない」(真言・陀羅尼)が仏教に取り入れられ、その一部は中国を経由して日本にも入ってきていました。

 ・・・これは「雑多で体系化されていない密教の教え」ということで「雑密ぞうみつ」と呼ばれたりします。


 弘法大師・空海が遣唐使として「唐」に渡る前も、日本の山中で謎の修行者に出会い「虚空蔵求聞持法こくぞうぐもんじほう」という行法を伝授し、それを実践したところ全ての経典を一度読んだだけで記憶できるという驚異的な暗記力を得られたといいます!

 これなどは、弘法大師・空海が唐から正当な密教を持ち替える以前に、日本でもこういう体系化されていない「雑密」・・・単発的な密教系の呪文が流布していた揺ぎない証拠と言えます。

 ・・・なお、一介の私度僧として遣唐使のメンバーに加わることが出来た空海は、既に唐に渡る前から中国語は読み書きとも完璧の完全ネイティブ状態!唐に渡ってからも仏教の経典で使われている「サンスクリット語」も中国人の修行僧をすぐに追い抜いて、アッと言う間に完全マスターしたと言いますから・・・・もしかしたら、この「虚空蔵求聞持法」、ガチで物凄い効果の修法なのかもしれません!

 受験生は参考書を捨てて、この「虚空蔵求聞持法」をマスターした方がいいかもしれませんねぇ(嘘です、真面目で地道に勉強するのが一番です、きっと(笑))


 ・・・さて、話をインドの密教に戻しますが、インドでもヒンドゥー教の儀式やマントラ(呪文)を手あたり次第取り入れた、まだ体系化されていない「初期密教」の時代から、次第に経典が「創作され」(このエッセイを読んで頂いている方はお分かりだと思いますが、経典は時代に合わせて次々と「創作」されるもので、お釈迦様の説いた言葉ではありません)体系的に洗練されてきました。

 ・・・これを「中期密教」の時代といい、中国経由で弘法大師・空海が正統後継者となり、日本に伝えられた密教もこの「中期密教」です!

 一番バランスがよく、教義や経典も整備されてしっかりと論理武装して体系化された優れた密教で、この時期の中期密教が日本に伝わったのは偶然とはいえ日本にとって幸福な事と言えましょう。


 もしタイミング的に日本に伝えられたのが初期密教か、ちょっと遅れて後期密教だったなら、密教はそれほど日本に定着しなかった可能性さえあります、いえ、多分そうなっていたでしょう・・・。

 初期密教は日本には既に「神道」「陰陽道」など呪術、まじないが「最強」の宗教がありますし、後期密教期は道徳的に「過激」過ぎるのです! 
 (この部分は最後にお話しすることになると思います♥)

 日本では仏教は時の権力者、主に朝廷の庇護を受けて、次第に国民に浸透していった経緯がありますので、あまりにもエッチなヤツは(笑)権力者の権威を逆に失墜させてしまいますから・・・。

 日本の「中期密教」の特徴は「左道的」(性的な要素)なものがかなり排除されている点でしょう!


 もちろん前回お話した「理趣経」には「男女のセッ〇スの快感は菩薩の境地である」と書かれていたり、かなり「左道的」(性的な儀式や教義を取り入れること)な部分もあるのですが、この後お話する「後期密教」が大胆に取り入れた「タントリズム」の片鱗を、儒教が盛んな中国でかなり(意図的に)排除した形跡がありますし、またそれを継承した日本の仏教界も「左道」的な部分はあえて黙殺しまし、最後にお話しすることになる日本の究極の「左道」淫祠邪教と言われる「真言立川流」は徹底的に弾圧されてあえなく消滅しました!

 ・・・あくまで表向きには(笑)

 関係ないですが、私は好きですけどねぇ「真言立川流」♥


 日本の仏教界は「理趣経」の男女のセッ〇スに関する記述については「比喩として、または修行の際に観念的に想う理想の話で、決して「実践する」・・・つまり本当に僧侶がセッ〇スをするという事ではない!断じてない!ありえない!絶対勘違いするな!」

 という立場を「公式」にはとっています。

 余談で言うと、現在もタントラ密教が残っているチベットやネパールでも現在は「一応」はそういう見解を取っているようですが・・・。


 繰り返しになりますが、仏教の戒壇で「僧侶」としての具足戒(守るべき戒律)を誓っている以上、経典に書かれているからといっても妻帯や女犯(セッ〇ス)は出来ない!というのが当時の結論だったのです。

 ・・・ええと、後期密教のお話に入る前にちょっとだけ脱線させて頂きますと、妻帯・女犯が戒律で禁止されているお坊さん達!
 明治時代に解禁される前も、こっそり「大黒様」「幽霊奉公」などという符丁で呼ばれる「隠し妻」「家政婦兼愛人」をもったり、変装して吉原通いをする坊さんの笑い話は枚挙にいとまがありませんが、それは明らかな戒律違反!

 たいていの僧侶は自身の社会立場や命をかけてまで「女性」とセッ〇スする勇気はありませんので、その「代用品」として「美少年」を囲う事をしました(笑)

 「坊主=男色」というのも、昔からある定番イメージですねぇ♥

 この寺に住み込んで坊主の身の回りのお世話をする美少年達は「お稚児さん」と呼ばれます。

 坊主は彼らを女性の「代用品」とするのですが、さすがに「女人とセッ〇ス出来ないから代わりに少年と○○しちゃう」というのはとても大きな声では言えるものではないし、仏の御前でも「後ろめたい」意識があったのでしょう。
 そりゃあそうですわ!

 ・・・そこで坊主達が考え付いた究極的に「セコい」理論の中に「稚児灌頂ちごかんじょう」というものがあります!(笑)


 「灌頂かんじょう」というのは、密教の師が弟子に対して「密教の秘法を授ける正式な弟子とする」「仏と縁を結ばせる」といった儀式のことです。

 密教寺院などでは、一般の信者にも仏と縁を結ばせる「結縁灌頂けちえんかんじょう」の儀式をしてくれるところもあります。


 ・・・さてさて「女性」の「代用品」として〇〇のお相手を勤めさせる美少年を手に入れた坊主は、少年に「稚児灌頂」という儀式を受けさせます(ある宗派での話)。

 一般信者が結縁灌頂を受けるように、稚児灌頂を受けた少年は観音菩薩と「縁」を結び・・・つまり生きながら「観音菩薩」の化身となって坊主の「お相手」をさせても問題がなくなるっ!っていう「屁理屈」ですねぇ。

 稚児灌頂を終えた美少年は、もはや生身の「人間」ではなく「観世音菩薩の化身」なので~~すっ♥(オマエらなぁ!)


 このエッセイで何度かご紹介した平安時代初期の僧、景戒の著した「日本霊異記」にも、吉祥天の像に恋をした優婆塞うばそく(在家信者)の夢に、吉祥天様ご自身が現れ、毎晩セッ〇スをしてくれた~っ♥ありがたやっ♥・・・というお話があります。

 日本の仏教って「タテマエ」さえちゃんとあれば、けっこう何でもオッケ~♥・・・・みたいな(笑)

 稚児灌頂でも、観音菩薩(三十三変化で衆生を救済してくれる有難い菩薩)となった美少年は、坊主の性欲を鎮めて修行に専念させてくれる有難い存在、いやっ!美少年とエッチすることは観音様の功徳を得る貴い行為なのじゃ!

 ・・・スッゲぇこじつけっ!屁理屈ここに極まれりっ♥


 ちなみにここから「坊主といえば美少年との男色」という常識が生まれ・・・「坊主らぶ♥」という言葉が生まれ、いつしか時代が下って「BLぼーいずらぶ」というジャンルが成立したのです。

 ・・・というのは真っ赤な嘘ですから、ホンキにしないようにねっ♥
 (あ~、嘘をついたオマエは舌抜きの刑じゃ!【閻魔大王より】)


 
 
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