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【六】 原始仏教の弱点露呈・・・「おまじない」や「儀式」は実は女性に優しい♥
しおりを挟む紀元前6世紀頃にお釈迦様(ゴータマ・ブッダ)によってはじめられた「仏教は」その後インドで王や権力者に支持され勢力を拡大していきました。
仏教でもキリスト教でも、宗教は何でも同じですが「国教」という形で時の権力者から庇護されると、その宗教は安定し勢力を拡大していきます。
インドでも、紀元前3世紀のアショカ王が仏教を庇護したので、仏教はインドで急速に勢力を拡大してゆきました。
しかし仏教だけがインドの宗教ではありません。
・・・仏教が「わが世の春」を謳歌しているその一方で、紀元前5世紀に仏教が批判した既存宗教である「バラモン教」から拡大発展した「ヒンドゥー教」がインドで信者を増やしてゆきます。
現在でもインドの人口の80%が信仰しているというあの「ヒンドゥー教」です!
(ちなみにヒンドゥー教は仏教のお釈迦さまやキリスト教のイエス様のような「開祖」的存在はおらず、バラモン教からマ~ッタリと自然に発展していった面白い宗教です)
仏教とヒンドゥー教は、その「活動拠点」と「信者」に大きな違いがありました。
仏教の拠点が、外国との貿易の活発化と共にインドの各地に出現した「都市」部に住む比較的裕福な人達だったのに対し、ヒンドゥー教は広い農村に拠点を置き、圧倒的多数の農民が信仰していました。
「都市部の仏教」VS「農村のヒンドゥー教」
・・・人口比からしても、ヒンドゥー教の方に分があるのは当然かもしれません。
インド国内から南下してスリランカやミャンマーなど南方に、そして北上して中国を経由して日本にまでその教えを広め、堂々の「世界宗教」となった仏教ですが、4、5世紀あたりからインド国内では次第にヒンドゥー教との競争で劣勢に立たされるようになってきます。
・・・困ったことに、海外にまで広まっていった「仏教」は、皮肉な事に仏教自身が生まれた国、インドでジリ貧となりつつあったのです!
その理由は色々な説がありますが、まずはインドの「都市」が政変等で衰退したという部分があります。
前述のとおり仏教の主な信者は都市部の富裕層なので、都市が荒廃し、彼らが没落することは仏教の存亡に直接関わるわけですね。
しかし、私が仏教が衰退を始めた一番大きな理由だと感じるのは、
① 仏教が民衆の求める「儀式」や「呪術」「おじない」を完全否定していた。
② 教え自体が難解で禁欲的過ぎた!特に性的な面で。
・・・この二つです。
第一の「儀式やおまじない」についてですが、キリスト教の「洗礼」を想像してもらえれば分かりやすいでしょう。
宗教は、誕生、成人、結婚、出産、そして「死」など、人の人生の節目に深く関わってこそ民衆に浸透してゆくのです。
今では「仏教=お葬式」というイメージがありますが、お釈迦様の原始仏教では僧侶(仏教の修行者)が葬式に関わることを基本的に禁じていました。
そういやお釈迦様自身が入滅(死亡)した時もお葬式らしいことしてないっぽいですよねぇ。
「そんな暇があったら修行しなさい!」・・・ってワケでしょうか?
そんな調子で「おまじない」とか「儀式」「呪術」などを「迷信的」として全て切り捨ててしまったのが仏教なのです!
ちなみに日本には明治時代になるまでいわゆる「原始仏教」または、お釈迦様の「オリジナル」の教えに近いといわれる「上座部仏教」は入ってこなかったので、日本の権力者たちが仏教に求めたものは最初から違いました。
日本では最初から「国家安泰」から「朝敵呪殺」まで、仏教の役割は「儀式」や「おまじない」等、仏様のパワーを借りて国を治めることでしたからね。
しかし、お葬式に関しては日本の仏教も最初は「関わらない」主義でした。
最初は仏教のお坊さんは高貴なお方の崩御の際や貴族など、特別な人の場合はいわゆる読経を中心とする「お葬式」を営みましたが、一方で民衆にはまだ仏教式の「葬式」という概念はありませんでした。
一般民衆は死んだらお墓も建てず「野辺」などと言われる一定の葬送場所に捨て置くのが普通だったのです。
その後「聖」と言われる在家の修行者達が道端に捨て置かれている死者を埋葬し弔ったりして葬送に一定の役割を果たしましたが、仏教が「葬式」に欠かせないものになるのは江戸時代のキリシタン対策で「檀家制度」が出来てからのお話で、実はそんなに古い話ではありません。
また随分と話が脱線しましたが・・・話を当時のインドに戻しましょう(笑)
そんな風に民衆の為の「儀式」や「おまじない」「通過儀礼」は迷信として全否定しちゃう仏教に対し、ヒンドゥー教はもう「儀式」「おまじない」「呪術」のオンパレード!
子供の誕生から成人、結婚から人の死まで、祈祷やおまじない尽くしで、ヒンドゥー教は民衆の中に深く儀式として浸透していきました。
特に女性に対してはヒンドゥー教は過剰なほどの儀式と「おまじない」があります。
女性にとって人生の最大のイベントである「妊娠」と「出産」については、ヒンドゥー教では妊娠祈願から、妊娠3か月の安産祈願、男子出生の祈祷、そして出産時の神への幸福祈願の祈祷から、命名、生後6か月の成長祈願等々、もうしつこいほどに(笑)おまじないと祈祷、儀式がテンコ盛り、マシマシチョモランマ状態!
まさに仏教とは真逆・・・・完全に正反対なのです。
現代ではお釈迦様自身が言ったように「儀式」「まじない」「呪術」なんて、非科学的で、まさに迷信そのもの!非科学的でしょ!・・・っていう考えが大勢を占めていると思いますが、私はヒンドゥー教的なものの方がちょっとだけ女性に「優しい」気がします。
(そういや今も女性は「占い」とか「おまじいない」とか神秘的なものが好きですよね)
特に医学や科学が発展していなかった昔は、女性にとっては妊娠と出産はまさに「命がけ」の人生の一大事業!
そんな不安と恐怖に苛まれている時期に、儀礼やおまじないで神様に助けてもらえると思えばメンタル的に「安心」するでしょう。
現代医学にも「プラシーボ効果」(ニセの薬が本当に気分だけで効いちゃう)なんてものが実際にありますが、科学的根拠のない「非科学的」な儀式やおまじないでも、心が不安定な時期にそれで「安心」が得られれば、それは立派な宗教としての「霊験」なのです!
命をも落としかねない一大事業である妊娠、出産の際に女性が安心出来れば、それは仏教が言うように無意味なものではなく、最高に「価値」がある、そう思うのです。
・・・インドでの仏教は、民衆が求める「安心感」とか、不安の除去とか希望とか、その辺りをバッサリ切り捨てちゃったのが痛かったのではないでしょうかね。
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