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第三十八話 「雷嫌ひを諫めて止めし事」
しおりを挟む根岸鎮衛著「耳嚢」 巻之五
「雷嫌ひを諫めて止めし事」より
ある人が語ったこの話は、実際にあった話であるという。
大変な雷嫌いの親友を持つ男が、ある時、彼と酒を飲んで談笑していた時の事、
「おまえさんは、誰にも負けないくらいの大の雷嫌いだが、俺の意見の通りにすれば、雷嫌いなどすぐに治ってしまうぞ」
「・・・うむ、つまらない事で、自分でも雷嫌いなど恥ずかしいと思うのだが、雷が鳴りそうな天気の日は朝から気分が悪く、一旦雷が鳴り始めると魂も消え失せそうになるくらい恐ろしくなってしまうのだ、武士に生まれてこんな臆病なことでは残念だと思っているので、雷嫌いが治るならどんな事でもしようと思っている、なにかいい方法があるのか?」
雷嫌いの友人がそう言ったので男は、
「よし、それならば、お前さんの大好きな酒をやめるのだ・・・いや長く禁酒するには及ばない、雷が鳴りそうな日まで禁酒して、雷が鳴り始めたら酒を飲むようにするのだよ」
雷嫌いの男は、友人からの教えを固く守り禁酒していたが、夕立が降りそうな暑い日の午後、「ああ、酒が飲みたい・・・」と思うのを我慢していると、夏の空に雨雲がムクムクと広がってくる。
激しい夕立がきそうな気配に、
「はやく雷が鳴ってくれれば・・・好きな酒が飲めるのだが・・・・」
と、雷が鳴るのを心待ちにする気持ちになったという。
その後、その雷嫌いの男は、一転して大の雷好きになったとか・・・。
面白い話なのでここに記す。
・・・・・これはあの「パブロフの犬」の応用ですね!
あまりの「条件反射」にちょっと笑ってしまいました。
不快な場所や不快に感じる事を克服するのに、なにか楽しいことと置き換える、っていうのはストレスの回避や解消に、他にも応用がきく方法ですね。
仕事で大事なイベント、緊張するイベントを控えているような時「よし、これが無事終わったらステーキ食おう!」「欲しかったアレを買っちゃおう!」と思うのも、この話の応用編なのかも(笑)
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