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【一】天上天下唯我独尊!・・・お釈迦様の有名な誕生偈(たんじょうげ)
しおりを挟むお釈迦様の誕生譚で最も有名な言葉に「天上天下唯我独尊」(「てんじょうてんげゆいがどくそん」とも)という言葉があります。
なんとお釈迦様は、母君である摩耶夫人が美しいルンビニー園の花園を散歩している時、夫人が木の枝に右手を伸ばした瞬間に右脇の下から生れ出たといいます!
そしてこの世に誕生したお釈迦様は、古い仏教叙事詩である「ブッダチャリタ」によると、生まれたばかりなのに「北に向かって」七歩歩まれたといいます。
「サプタルシ星(北斗七星)のごとくに大股の歩みで、均整をとって踏みしめ、ゆるぎなき七歩を歩みたもうた、水蓮を生じつつ」
・・・この部分は後に「東西南北に七歩歩まれ」などと、ビミョ~に変化してゆきますが(笑)生まれてすぐに歩まれた!という伝承部分は変わりありません。
そしてお釈迦様は左右の手で天と地を指差され、例の有名な言葉「天上天下唯我独尊」とおっしゃるのです!
これを称して「誕生偈」と言います。
ま、まあ・・・いくら人類で唯一「悟り」の境地に達したスゴいお釈迦様とて、さすがに生まれてすぐに立って歩いたり、喋ったりは出来ないでしょう、新生児ですよ?(笑)
絶対に「おぎゃ~」と言ったに違いありませんっ!
まあ、これは現実の話ではなく、後世になってお釈迦様が「神格化」される過程で造られた「物語」あるいは「神話」と見るのが現在の「科学的見地」なのでしょうが、それはひとまず置いといて、昔から物議をかもしているのが、例の・・・。
「天上天下唯我独尊」
・・・っていう不穏な言葉です!
辞書をひもとくと「私は世界中で最も優れた者である」という意味だと書かれています。
そして、その用例として「自分だけがすぐれていると、うぬぼれる事」などと説明がされています。
お、お釈迦様の言葉に対する扱いとは思えないネガティブな扱いですねぇ(笑)
はっきり言って、一般的にはあまり良くない意味で使われます。
確かに現実世界でこんな言葉を吐く輩がいたら、それはちょっと異常レベルの自信家やナルシストか、相当うぬぼれが強いヤツか、サイコパスみたいなキケンなヤツに違いありません(笑)
いずれにしても会社でバワハラでも起こしそうな「ヤバい」ヤツというイメージが満々ですね。
これは間違いありません、だからこそ今では「唯我独尊」の部分が独り歩きして、ネガティブな意味が定着しているのでしょう。
なんせ「オレが一番偉いんだからな!」・・・なんてシレッと言っちゃってるんですからねぇ!
そんなこともあって、このお釈迦様が生まれてすぐにおっしゃったと言われる「天上天下唯我独尊」という言葉には、仏教界でも以前から「問題意識」があったようです。
(生まれてすぐに歩いたとか喋ったって部分はええのんかっ?というのは別として(笑))
のちに悟りを得て仏教の開祖となる人格パーフェクトなお方、お釈迦様の発言としては、ちょっと(かなり?)尊大、傲慢不遜で自惚れに満ちた激しい違和感を覚えますよねぇ、確かに。
「天下唯我独尊って、めっちゃ傲慢でナルシストやん!」
「悟りを得たお釈迦様の言葉としては不適切じゃね?」
「そもそも生まれてすぐの赤ん坊がしゃべれるわけね~じゃん!」
「お釈迦様の説かれた他の説法とは全然違うよね、自分が一番偉いだなんてさぁ!」
・・・「天上天下唯我独尊」という一つの単語に浴びせられる現代人の数々の疑問!仏教の沽券に関わる問題!っていうワケで、最近ではこの「天上天下唯我独尊」の解釈かずいぶんと変わってきております(笑)
実際「お釈迦様がそんな傲慢なことを言われるはずがないから、これはこういう意味ですよ」というアクロバティックな解説をしている方も多く見受けられます。
う~ん、それは暴れん坊将軍の悪役の「上様がこのような場所におられるはずがない!斬れ!斬れ!」っていう「謀反理論」とあまり変わらんですねぇ(笑)
嘘だと思うならば、サラリとネットで調べてみてください。
「私達人間にだけがなしうる、ただ一つの尊い目的(独尊)がある、かけがえのない個人の尊厳を示したもの」
「生きとし生けるものすべてが尊いことをおっしゃった言葉!」
「皆がこの世の中で大切な役割を持っていて、それぞれが尊いのです」
「すべての人がオンリーワンだよ」
「私の命がかけがえのないものなのだから、あなたの命も、また他の人の命も、かけがえのない尊いものなんだよ」
「すべての存在は尊く、かけがえのない命を与えられている」
「全世界、どこを見渡してみても、我という存在はただ独りだけの尊い存在である「唯我独尊」の「我」は、釈迦だけのことではなく、「我々人間」のことなのです」
「比較できない存在。大切ないのちということです」
・・・う~む、いかがでしょう?
どうも最近は「天上天下唯我独尊」という、生まれたばかりのお釈迦様がおっしゃったお言葉は「私」(お釈迦様)が尊い!ではなく「みんなが尊い」という人類愛を高らかに謳った言葉だという解釈が流布しているようです!
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