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第一話 【序】結局ね、♂×♂が一番なのよっ!

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 ・・・・まだ日本の国を神々がお治めになっていた頃のお話よ。

 天の浮橋の河原をウロチョロしていたセキレイに教えられて、国常立尊くにとこたちのみことはBLに覚醒めて日の千麿尊ひのちまるのみことを愛されたの!
 
 そもそもね、全ての虫達までもが「男色の体位」で◯尾するから、この日本は「蜻蛉国あきつのくに」っていうのよ、知ってた?
 (注)ホ、ホントかよっ・・・なんか嘘くせぇ!

 ・・・でもね、素戔嗚尊すさのおのみことが、老後の気の迷いで女である稲田姫と戯れて(ピー)してからは、世の中にはうるさい赤ん坊の泣き声が響き渡り、取り上げばばあ(助産婦)やら仲人なこうど女も出現し、親は娘の嫁入り道具の長持や葛籠つづらの出費に頭を悩ませたりと、いろいろメンドウなことが出てきたのよ。

 「BL」ほど優雅な遊びはないってのに、世の中の◯◯達は、その良さがわからないのねぇ・・・ホントに困ったことよねぇ・・・ハアァ・・・。


 さあて、このBLなんだけどね、とっても歴史が古くて日本でも中国でもその仲間がたくさんいるの!

 中国の衛の霊公は弥子瑕やしかに命をまかせたし、漢の高祖は籍儒にご執心、武帝は李延年と枕を並べて寝たのよ。

 日本でもその昔は、「伊勢物語」の主人公、在原業平ありわらのなりひらが伊勢の弟の大門の中将と五年もの間、愛し合ったって話があるわ。
 5年もの間には、色々なことがあったの・・・花を見ない春、月を忘れる秋・・・燃えたぎる二人の愛は、雪や嵐もものともせず、凍った橋を渡って恋人の元に通い、吼える犬には焼き飯を与え、警備の厳しい築地の小門からは合鍵で忍び込んで逢瀬を重ねたの・・・。

 人目を忍ぶ恋ゆえに、満天の星明かりや、蛍の光さえ恨んでやっとの事で恋人の元へたどり着き、昼間は使用人が涼んでいた腰掛けに中将と一緒に座り、蚊に刺されるのもものともせずに、一緒に過ごしたわ。

 業平なりひらは、彼への思いを綴った「通台集」という一巻の巻物を作ったの。

 ・・・・それなのに、どうして業平は美少年とのBLを見限って「伊勢物語」なんていう女の物語を書いたのかしら?

 業平はその後、元服して奈良の都へ上って、薄情にも恋人と別れ、野郎歌舞伎の女形が着ける薄紫の帽子を被ることになったのだけど、これなんかは歌舞伎若衆の元祖と言うべきものねぇ。

 その業平も男盛りになって、元々は美少年好きだったのに、今じゃ世間では「男女の恋愛の神様」な~んて言われるようになって、草葉の陰で悔しがっているんじゃないかしらね?

 
 あとね、吉田兼好が清少納言の弟の清若丸に何度もラブレターを送ったのは世間でも大目にみていたのに、たった一度人に頼まれて男女間の恋文の代筆をしたばかりに後世までも汚名を残すことになった例もあるわ・・・・ほ~んと「女」ってヤバいわよねぇ!
 (注)あ~、これは西鶴さんがサラッと入れた「嘘松」です、二人は時代が違いますし、清若丸とかそんな人いません。

 アタシもこの世に生まれた時に、今みたいな知恵があったら、女の乳なんかぜ~ったい飲まなかったわっ!乳じゃなくて摺粉や甘葛あまかずらを煮た汁で赤ん坊が育った例はいくらでもあるんですもの。
 (注)そ、そこまで言うか・・・西鶴センセイ(汗)

 成長したアタシは、武蔵の江戸に男所帯で住んで、浅草の片隅に土地を借りて、世間からは没交渉で家の門を閉めて朝食前に「若道根本記」(※男色道の奥義を記した架空の書)を講釈することにしたの。

 その後、人生の裏表を知り尽くした四十ニ歳まで諸国を訪ね歩いて「男色」のと~っても有り難いこと調べ上げ、その全てをこの本に残らず書き記したのよ!
 (注)いやぁ、西鶴さん・・・これも当然フィクションですよね?



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