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第三十九話 湯殿で気がついた本当の気持ち ~優しい菊の眼差しと美しい裸体~
しおりを挟む「・・・・幸介さん、お背中を流しますね・・・」
湯殿の引き戸がカラリと開き、いつもの薄い湯文字一枚の美しい菊の白い肢体が淑やかに湯殿に入ってくる。
幸介がこの蜂ヶ谷家に厄介になるようになってから、欠かさず続けられている菊の「女中」としての務め。
最初は、この若く美しい菊の破格の「サービス」に面食らったものだが、今はすっかり慣れてしまった。
幸介にとっては、心の奥で好ましく思っている菊との湯殿での一時は心躍るものだった。
「あっ、菊さん!・・・いつも本当にすみません・・・部屋の掃除から洗い物まで・・・」
「ウフフッ、いいんですよ、幸介さん、菊も幸介さんのお世話が出来ることが嬉しいんです!・・・だから、幸介さんのお身体が余計心配で・・・」
「・・・心配?・・・僕の?・・・」
菊はウットリするような柔らかい手で幸介の背中についた石鹸の泡を撫でながら小さな声で言う。
「はい、幸介さんのこ村でのお役目・・・本当に大変そうで・・・」
菊は幸介の「オス蜂」としての役目の事を言っているのだ。
「えっ、ええっ・・・でもまあ、僕は若いからっ!ハハッ・・・こんな境遇なんて、いくら金があったって出来るものじゃないし・・・僕も不思議な感じはするんですが、どんな理由でも女性にモテるってのは男にとっては悪くないですよ、アハハハッ!」
明るく笑い飛ばす幸介・・・菊相手だから言える本音だ。
「・・・そ、そうですよね・・・」
その菊の声に、かすかに暗さを感じたのは幸介の思い過ごしだろうか。
「幸介さんっ・・・どこか悪くなったらすぐに言ってくださいね?きっとですよ?」
「ええ、ありがとう菊さんっ・・・今は全く元気だけど、本当に体が良くないときはちゃんと菊さんに言いますよ!」
「・・・・あっ、有難うございますっ、幸介さん!」
「いや、菊さんっ、そんな・・・お礼を言うのは僕の方ですよ」
真剣に自分の体調を心配してくれる健気な菊!・・・幸介が思わずクルリと菊の方に向き直ると、真っ白でツンと上を向いた美しい乳房が目の前に飛び込んでくる!
彼はあまりに日常的になり過ぎた菊の、この湯殿での奉仕に慣れ切って、彼女が湯文字一枚の姿であることをすっかり忘れていたのだ!
「・・・あっ!き、菊さんっ、ゴメンっ!」
「こ、幸介さんっ・・・恥ずかしいっ・・・」
背中を流すために湯殿で湯文字一枚の姿を晒すことに抵抗を感じていなかった菊も、思わず幸介を「男」して意識してしまったのか急に恥じらいを見せ、体をよじり両手で胸を隠す。
・・・しかしそんな風に恥じらう艶めかしい菊の姿は、かえって普段は特に気にすることなく互いの肌を晒していた幸介と菊に「男と女」を意識させてしまうのだった。
謝りながらも菊の瑞々しい裸体から目が離すことが出来ない幸介。
十八歳の雪のように白い肌は二十一歳の彼をすっかり魅了してしまう。
・・・と同時に、幸介は雷鳴に打たれたように突然ひらめく!
最近感じていたポッカリと空いた心の空虚な部分・・・女達と「交尾」に明け暮れる毎日でも満たされていなかった心の空白の「理由」がこの瞬間、突然閃いたのだ!
彼自身もおぼろげにしか意識していなかった想い・・・本当の自分の心。
・・・ああ、僕は菊さんが好きだったんだ!身体だけの関係ではなく、一人の女性として!・・・心の通い合う「伴侶」として!彼女を欲していたんだ!
幸介は感激したように天を仰いだあと、もはや遠慮することなく菊と向かい合う。
彼はこの瞬間、自分の気持ちに正直になろうと決心した。
「・・・き、菊さんっ・・・」
「・・・は、はい・・・幸介さんっ・・・」
菊は顔を真っ赤にしながら両手で乳房を抱えるように隠している。
湯に濡れてすっかり透けている湯文字が見える淡い陰毛を幸介に見られないように、不自然に捩らせた美しい曲線を描く腰から尻のライン・・・。
幸介は古の名工が刻んだ西洋の女神像でも見ているように、眩しそうに菊の裸体を見つめる。
・・・ムクッ・・・ムクッ・・・
もうすっかり慣れ切って、手拭いて隠すこともしていなかった彼の股間から、まるで蛇のように頭をもたげてくる男根!
しかしそんな男性器の発情でさえ、今の彼には決して猥らがましいものではなく、神聖で純粋なものに思えたのである。
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