【読切り超短編】 槍持勇気の事 ~「享和雑記」より江戸時代の出来事~

  
 読み切りのショート作品です。

 「柳川亭」という筆名で編纂された「享和雑記」

 享和期(1801~1804)の様々な事柄を書き留めた大変に面白い書物です。
 その中から、第三巻三十八に掲載されている「槍持勇気の事」というお話をご紹介したいと思います。

 江戸幕府開府からあと一年で「200年周年」になるという享和二年、十返舎一九が「東海道中膝栗毛」を著したり、江戸で「小石川馬場の火事」と呼ばれる大火があったりした年でした。

 ・・・そんな年の始めに起きた、現在まで記録に残っている小さな事件。

 新年の祝賀というと、今は年賀状が常識・・・それも年賀状の扱いは年とともに次第に減っているそうですが、江戸時代の武士の正月は、上司や親戚、お世話になった家々へ直接に出向いて年始の挨拶をする「年始回り」でスタートしました。

 この年始回りの風習は、明治から昭和にかけて活躍した小説家・劇作家の岡本綺堂氏のエッセイ「年賀郵便」によると明治の中頃まで続いていたそうです。

 回った家々で振る舞い酒をご馳走になり、朝からフラフラになりながら年始回りに歩く武士とその家来達。
 ・・・下戸(お酒が飲めない人)はさぞ大変だったでしょう。


 このお話は、そんな正月の武士の年始回りの際に起こった事件です。


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