可愛い双子淫魔(ツイン・インキュバス) ~慈母女王ソフィアのピンク色の吐息~

糺ノ杜 胡瓜堂

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第五十四話 「軍事大国の凋落」~乱心のボルドゥールⅢ世~

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 ・・・アルシュとロルシュが、バルドス王国のボルドゥールⅢ世と会談を果たしてから間もなく、バルドス軍の動きに変化が見られた。
 それまで軍神に取り憑かれたように怒涛の進撃を続けていたバルドス軍は、動揺したように侵略の足を止め・・・なんと侵攻中の各国から撤退を始めたのだ。

 ・・・・ランデルシアの将軍や、セレノ同盟の各国連合軍も、その不可思議なバルドス軍の動きをいぶかしがった。

 間諜の報告では、撤退中のバルドス軍と、金で雇われたヴイベーラ族の傭兵部隊数万が仲間割れを起こし、ヴィベーラ族の部隊が撤退中のバルドス軍に各所で襲いかかり、バルドス軍が各国で略奪した金貨や貴金属を奪い、バルドス兵を虐殺し始めたのだという。

 生き残った数千のバルドス兵は、ほうぼうの体で故郷のバルドス王国に逃げ帰ったが、そこでも目を疑うような大騒動が起きていた。


 あの夜の女王ソフィアの名代として謁見したアルシュ・ロルシュとの会談の場で、突然呆けたように会談を打ち切り自室にこもりっきりになったボルドゥールⅢ世は、なんと愛馬「パンティエーラ号」に心を奪われはじめたのだ。

 パンティエーラ号は、カールした長い立てがみが美しい白馬で、ボルドゥールⅢ世ご自慢の牝馬であった。
 彼は行軍する時も、市中を移動する時も、そのパンティエーラ号に乗って移動するのが常であった。

 ボルドゥールⅢ世は、文字通りその牝馬に心を奪われ、国務や進行中の軍事作戦もそっちのけで、昼も夜も厩舎に入り浸り、愛馬パンティエーラ号と、文字通り「愛し」はじめたのである。

 ・・・・突然乱心したようになった王の道ならぬ愛・・・・。

 読者にはもうお分かりだろうが、それは双子の淫魔ツイン・インキュバス、アルシュとロルシュの一世一代の魔力の力であった。
 二人は、彼等の力が最大限発揮される満月の夜を狙い、王に直々に会い、その淫魔の血のなせる魔力で、残虐な王が牝馬に心を奪われるよう仕向けたのであった。

 淫魔は、人間を淫乱にし精気を吸い取るだけではなく、ギリシア神話のキューピッドのように人の愛欲をコントロールする術を持っているのである。

 ボルドゥールⅢ世の突然の乱心、そして愛馬とのおぞましい愛欲の日々は、当然厳重に秘されたが、人の口に戸は立てられぬ・・・・次第に人々の知るところとなり国民は動揺し始める。

 これでは他国への侵略どころか、自国の命運が尽きかねない・・・・バルドス王国の重臣達は、独断で進軍中の軍の行動を停止し、国への帰還を命じたのであった。
 その結果、それを秘密条約の一方的な破棄ととらえ、憤ったヴイベーラ族の傭兵達の反乱に会い、バルドス軍はほとんど自滅した形となったのであった。

 ・・・ランデルシアでは、女王ソフィアやごく一部の者を除き、その事情は知らなかったが、とにかくゴート大陸を混乱に陥れたバルドス王国の侵略行為はここに終焉をむかえたのであった。


 数日後、アルシュ、ロルシュ、そして彼等の護衛として大活躍をした英雄、リュード・ボワジュエール大尉を祝福して、国を上げての大祝宴が催された。

 王宮の重臣達や貴族達、そしてランデルシアに来ていた各国の大使からもひっきりなしに感謝の意を伝えられるアルシュとロルシュ・・・・。

 彼等は、忙しすぎて目の前の美味しそうなご馳走に手を伸ばす暇も無いようだった。

 ・・・・優しい笑みを浮かべながら、大使達の謝意に対し必死に答礼している双子の王子に近寄る女王ソフィア。

 「・・・・ご馳走は、貴方達が後で食べる分を別に残しておくわねっ♥」

 「・・・はいっ、有難うございますっ、ソフィア様っ!」

 そして、ポオッと少女のように顔を赤らめて2人に囁く。


 「・・・今夜は私にも貴方達の「祝勝会」をさせてねっ♥・・・・ずっと待ってたの♥」
 

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