腐男子として壁に徹するつもりが⋯これ愛されてね？

一章

腐海に住んでるならやることは一つ

女神が居なくなった後、冷静になり辺りを見渡す。

ずっと真っ白な部屋にでもいるのかと思っていたけど、どうやら違うみたいだった。

壁なんてない。

天井なんかない。

床は鏡みたいになっていて俺の姿が写ってる。

鏡に向かってピースをすると鏡もピースをする。

だからなんだ。


ここが異質なところだとやっと気付かされた。

だんだんと実感が湧いてくる、なんてことはない。

ただひたすら｢すげぇな⋯｣と感じる。


｢⋯本当に死んだんかな。｣

そう言えば死因はなんなんだろう。

死ぬ直前、何かが視界の端を通った気がしなくも無いが、死後の世界で前世を悔やんでもしょうがない。

というか、どうでもいい。

が、好奇心旺盛で探究心までも持っている俺なのでついつい死因について考えてしまう。

転生モノにありがちなのはトラックが突っ込んできて⋯だけど、あの時トラックなんか居たっけな⋯。

あの時、本屋の目の前で戦利品を抱えて⋯。

結局戦利品の内容を見れなかったことを悔やむ。

⋯できることなら[悪×××]を読んでから死にたかった。


ちなみに転生先はもう決まってる。

腐女子腐男子と言えばやることは一つ。


｢女神様ー?｣


｢決まりましたか？｣


女神が現れた。

テレポート？瞬間移動？

常日頃、厨二病をこじらせてると言っても過言では無い俺なんだ⋯。

それは憧れる。


とにかく便利な能力だ。

羨ましい⋯。


[コトブキ花蜜]さんが描いた漫画、[男の俺が逆ハー状態?!]に転生することを選んだ事を女神に伝えた。

｢[男の俺が逆ハー状態?!]の世界に転生、お願いします!｣



ここで少し性癖を語らせて頂こう。

俺の性癖は主に二つ。

[溺愛攻め]と[総受け]。

良さを語ると長くなるから割愛ってやつだ。

それに腐女子腐男子の皆様なら良さが分かるだろ？

そしてBLの世界に転生できるなら完璧な壁に徹したい!

断じてヒロインになり、俺の逆ハーレムを築いてやる!なんて事は1ミクロンも考えていない。

俺は腐男子なだけで恋愛対象が男な訳じゃない。

顔が良ければ絆される自信はあるが⋯。

話が逸れた。


完璧な壁になり、推しカプを見守りたいんだ。

[男の俺が逆ハー状態?!]はタイトルからしてわかる通り総受けなんだ!!

俺の性癖なんだ!!

選ばないわけないだろ!?

しかも溺愛攻めも沢山いる!!

こんな最高な世界線ないだろ!?

⋯あとはまぁ腐海に潜ってる人なら何となく分かるはず。

⋯逆ハーって純粋にエロいんだよな⋯。


というわけで俺は転生先に[男の俺が逆ハー状態?!]を選んだ。


｢了解です!｣


女神が微笑みながら了承してくれる。

死んで戦利品を失い、｢クソが｣とか思ってたがいい女神ってのもいるもんだな⋯。


女神が続けて喋る。


｢あと私女神じゃないですよ。｣

｢え?｣

｢男ですし。｣

｢え?｣

｢それでは素晴らしき転生を～!!｣


待て待て待て!!