仲恋 (なかれ)

こじゅろう

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やっぱり欲張りだろうか?

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「はあー」
 私の部屋開催&無観客の単独ライブに地球が終わるかのようなため息が響き渡る。言うまでもなく声の主は由木咲良。絶賛学生っぽい悩み?で頭を抱えている。あまり声を大にして言いたくないし、できるなら墓まで持っていきたい内容だ。好きぴが二人いる。物理的に同じ人が二人いるのではなく、それぞれ一人ずつ、だ。最近はこの内容だけで頭の中を掻き回されてる気分だ。二人同時に好きになったのではなく、一人ずつ順番に好きになった。トップバッター、というのはおかしいか。まず、中一に好きになったのは、暁 蓮あかつき れんくん。名前の漢字どうり、男の子とは思えないほど蓮の花のように、清らかでいて優しく、少しクールな人だ。去年の二学期くらいに、同じ班になって、仲を深めた末好きになってしまった。後、顔がいい。二人目は佐伯 日向 さえき ひなた。この人は小学校中学年くらいから仲の良い人で、気持ちに気づいたのは最近。学校の帰り際に笑顔で手を振ってくれたのが嬉しすぎて、気づいたら、だ。この人は、愛されタイプって顔をしている。まるでテーマパークにいるマスコットキャラのような愛嬌があって可愛い人だ。
 こんなふうに言ったら男好きというレッテルを貼られてしまいそうだ。もちろんそう思うのも無理はないし、仮にこれが私じゃなくて他の誰かだったら少なくても一瞬、私はその子にレッテルを貼ってしまう事だろう。でも、断じて私は夜の街にいるような男好きではない。これだけは言わせてもらう。けれど、私もこの状況をどうにかしたいとは思っている。でも、いまだに親友の莉緒に言う決意ができない。
 なぜ決意できないかというと…これは少し前のことなので、気にする必要はないと思うのだが、私は『話してて苛々する』らしい。そうを貼られたのは、五年生の半ば頃。中のいい友達がいた。その子は千智という子で、私とは違っていつもクラスの中心にいるような、自分の意見を容赦なく発言できるような子だった。千智ちさととは幼稚園からの中で、お互いの家を行き来するほどの仲。そして、千智には『好きな人』がいた。その人の名前は阿部 玲央あべ れおと言って、その人の事が恋愛対象に入っていない私でも彼はかっこいい人だ。スポーツもできて、得意教科は算数。私の同級生四割は彼のことが好きだったと言っても過言ではないかもしれない。
 勿論千智もそんな彼のことが好きで、よく私に恋バナを持ちかけるようになったのは、確か五年生初めの頃だったと思う。その時の私は、まだ小学生向けの少女漫画雑誌を定期購入している。いわば、恋愛未経験の赤ちゃんだった。そして、私は生来のコミュ障だったので、親友の莉緒りおのいなかった小学校時代の話し相手は千智かお気に入りのぬいぐるみくらいだった。後は、学校と千智の家、少女漫画を行き来するだけの日々を送っていた。さすがモテるだけある阿部くんは、そんな教室の隅で少女漫画の文庫版を読んでる私にも声をかけてくれる人だった。
 そして、阿部くんと席が近くて、一番仲が良かったピークと千智が阿部くんを好きになった時が被ったことにより、恋する乙女千智には『玲央を奪おうとしている女』の私が何を言っても彼女の耳に届くことがなかった。
 
 五年生二学期
夏休みが終わったが、まだまだ暑い夏。窓から泣いている蝉の所蔵を確認しようとした私に、千智が私をトイレの手洗い場まで引っ張って行った。
「ねえ、咲良」
千智が珍しく、険しい顔で私を呼んだ。珍しい。何かあったんだろうか。
「どうしたの?千智。いきなり」
「咲良、『どうしたの?』じゃないよ!…しらばっくれてんの?」
そういた千智の目に私はいなかった。千智の目を覗き込んだのと同時に、私は理解した。ああ、何かやらかしたな、と。
「ごめんね、本当にわからないんだ」
「…いいよね、咲良は。そうやって何も知らないふりしてれば玲央に好かれるんだから」
と呼んでいるのか、つい最近まで「阿部くんかっこいいー!」ってはしゃいでたのに。いつの間に仲良くなったんだろう。すごいな。私もそんなふうに人と距離を自然に詰めれるようになりたい。…?。
「好かれてる?私が?」
「咲良、いつまでしらばっくれてんの?誰でもわかるでしょ。玲央はあんたのことが好きなの!…なんでこんな苛々させんの?」
勝手にイラついてるだけじゃん。この言葉は口の外にはいけないように規制した。
「私は…千智の方が阿部くんと仲良いと思うよ?ほら、今も阿部くんの事『玲央』って呼んでるし」
「…だよ」
「何?」
「勝手に呼んでるんだよ…」
「え…」
どうしよう。流石に私はそこまで頭が回らなかったので、混乱しまくっている私を横目に、千智は教室に戻って行った。

 その後聞いた話なのだが、私は『話してて苛々する』などの悪口を言われるほどの仲になっていたらしい。そんなこともあってか、私は莉緒と恋バナをすることを極力避けていた。けれど、そろそろ我慢の限界かもしれない。流石にこの事実を一人で抱えていくほど私に余裕はなかった。けれど、言おうとすればする度に「好きな人被ってたらどうしよう」とか「二人もいるなんて言ったら敬遠されるかも」とか考えてしまう。そして、今更ながら明かしてしまうと、暁くんより佐伯の方が好きなのだ。選べる立場だなんて思ってもいないし、そして蓮くんは今クラスも違う。これがロミオとジュリエットのような意味を持ってるのなら大歓迎だが、この様子だと、私のこの恋を神様は応援してはくれにんだろうな。と、早々に悟ってしまった。そうやってそれぞれの人を好きになった経緯をなぞっていくと、私は中のいい人が好きなのかな。と、思った。ま、どちらもなんだけど。そして、何回か時間を置いた後、ようやく右斜め上にある電話マークをタップすることができた。かけてから十秒もしないうちにリオの声がした。
「どしたの咲良?」
私は一呼吸おいて、一文字ずつゆっくりと話し出す。
「実はね、私好きな人がいるんだけど、」
「えっ!?誰々?」
私の言葉を遮って、莉緒の声が私の耳に鳴り響いた。
「さ、最後まで聞いて…」
「ごめんごめん、どうぞ?」
「で、さっき言った通り好きな人がいるんだけど…」
画面の向こうで莉緒がワクワクと相槌を打っていいる音がする。
「ドン引きしないでね?」
「この後に及んでしないよ?!」
「二人いるんだよね…」
めっちゃ神経を使ったが、なんッとか伝え切ることができた。
「えっ!ええっ?誰?誰?」
「二人いることは気にならないの?」
「別に?めちゃ色んな人愛せて器ひろ!?ってなるレベル。で?誰?」
「あ、あともう一個。ドン引きしないでね?」
「もちのろん」
「違うクラスの暁くんと同じクラスの日向くんが好きな…んだけどさ」
「うんうん!?」
「どちらかといえば、日向くんの方が、好きなんだよね。自分でも欲張りなんだろうなってわかってるけど、でもやっぱりどっちも好きで…」
「全っ然いいっしょ?浮気とかは許せないけど、好きな人がいるってフツーにいいことだと思うけどなー」
「あ、ありがとう。莉緒、元気出た。」
「もー、何ちょっと涙声になってんだよ!…辛かったら、いいなよ?」
「うん。ありがと」
「それじゃ、ご飯食べてくるわ。まったね」
「うん。また明日」
電話を切った後に、安心して少し天を仰いで泣いてしまった。莉緒の優しさに触れて、なんか安心してしまったのかもしれない。
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