青夏(せいか)

こじゅろう

文字の大きさ
上 下
4 / 34
青夏(せいか)

夏休み

しおりを挟む
「で、愛花も私もモタモタしてるうちに夏休みに入った訳だけど。どうする?」
蝉がグレーメンの音楽隊に憧れたのかのように、蝉の大合唱が嫌と言うほど聞こえる私の部屋で私と由依は、夏休みの計画を立てていた。
「でも、お互い隣の席どころか同じ班にすらなれなかったからね」
「しょうがないよねー席運が悪かっただけだし。そもそも、好きな人と仲が良すぎて、席を離される程仲良くないしねー。自由席になればいいのにー!」
由衣が言うこともわかる。けど、席が近くなったらなったらで、緊張して変なことを言ってしまったり、見られているかも、という自意識過剰で、動きがロボットのようになってしまいそうだ。
「でも、自由席でも、好きな人の近くに行くのは勇気いるよね」
由衣が「それを言ったら元も子もないだろ」と言う顔でこちらを見ている。かく言う私も、もし二学期から自由席になったとて、好きな人が見えるギリギリの席を選んでしまうんだろう。やってもいないのに本当に欲しいものから逃げてしまう勿体無い自分が恥ずかしくなってきた。
「考えてもできないことばっかり考えてないで、楽しいことの計画立てよー。どこ行くどこ行く?」
「確かに!でも、どこ行こうか」
「あ、いいこと考えちゃった」
由衣が必要以上にニヤニヤしている。由衣は隠したいことがすぐに顔に出るのが悪い癖だ。
「どうしたそんな気持ち悪い顔して」
「ひっど!由衣ちゃんの顔はクレオパトラで、夏祭り行かない?」
「だまれ、顔面偏差値中の上のくせに、クレオパトラは上の上だぞ。それで、近所の公会堂の室内でやってる祭りだっけ?行くのはいいんだけど、なんでそんなにニヤニヤしてるの?」
「聞いて驚け!みんなで夏祭りに行こう!」
「みんなって?」
優香ゆうかれんちゃんかな、でも、もしかしたら健太と。
山野と野沢も誘おう!あと、優香と恋ちゃんそれと、いずみ!」
「多いな。被ってるし。しかもメンバー全員(蒼天以外)由衣が素で接せる人たちじゃん。」
でも、正直嬉しい。まだ行くって決まったわけじゃないけど。
「素で話せない人と行っても楽しくないでしょー。愛花は山野誘う?」
「やだ、それに山野だけ誘ったら、変でしょ」
「じゃあ、愛花が全員誘う?」
「愛花ってクラスではびっくりするほど陽キャなのに、いざという時にコミュ障発動しちゃうんだろうなー」
「陽キャか陰キャかは正直どうでもいい」
「愛花って本当に、自分を区別されるの嫌いだよねー偏見だけど、天才って言われても嫌がってそう」
「その他大勢のうちの1人として括られたくないだけ。」
「真面目なのか頑固なのかわかりませんのー」
「で、愛花結局みんな誘う?」
「お任せします」
「りょーかーい」
夏祭りが私の「夏休みやりたいことリスト」に追加された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

居候高校生、主夫になる。〜娘3人は最強番長でした〜

蓮田ユーマ
青春
父親が起こした会社での致命的なミスにより、責任と借金を負い、もう育てていくことが出来ないと告白された。 宮下楓太は父親の友人の八月朔日真奈美の家に居候することに。 八月朔日家には地元でも有名らしい3人の美人姉妹がいた……だが、有名な理由は想像とはまったく違うものだった。 愛花、アキラ、叶。 3人は、それぞれが通う学校で番長として君臨している、ヤンキー娘たちだった。 ※小説家になろうに投稿していて、アルファポリス様でも投稿することにしました。 小説家になろうにてジャンル別日間6位、週間9位を頂きました。

お茶会でお茶しましょ!

田上総介
青春
高校一年生の北条麦(ほうじょうむぎ)は幼い頃から思入れのある喫茶店『喫茶ニシキノ』でのアルバイトを頼み込む。 何とか許可してもらうも得た役割は恰も客のように振る舞い、繁盛しているかのように見せる「お客様役」だった。 納得のいかない麦は喫茶店への熱い思いを伝えると、店長らはクラッカーを取り出し「合格」を告げる。 ここまでが採用審査の流れだったのだ。 しかし、帰り道同じ高校の生徒にアルバイトをしていることがバレてしまう。 そして、アルバイト禁止の高校で数日後に停学処分を下されるが、その理由はストーカー行為で… (二話までのあらすじ) 昔飲んだ珈琲が忘れられない 麦 祖母の残した店を引き継ぐ高校生店長 モモ 実はアルバイト歴たったの三日! ポンコツ先輩 緑 シャイなお手伝いJC 穂乃果 自身を最かわと称するボクっ娘 紅花 店長の座と崩壊を狙う 檸檬 喫茶店に異常な執着を持つ みるく 天然キャラになりたいチェーン店店長 茶茶 「ツンデレだからモテてしまう」と考えるツンデレラ 龍子 弱みを握られたイマドキギャル 日向 妹(みくる)に嫌われたい変態冷酷美人 いちご そんな高校生達が起こすほのぼの喫茶店日常です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ペア

koikoiSS
青春
 中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。  しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。  高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。  友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。 ※他サイトでも掲載しております。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

処理中です...