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10話 【雄—イセキ—】
しおりを挟む「アイギーナ、つまり王都か」
「簡単に言えばそうじゃな。この国で一番大きな遺跡があるぞ」
「ふむ……少し待っててくれ」
外で雨の音がする中、アルゴナウタイの船橋でアレスがキーボードを叩く。
時刻は既に深夜に近くキプロの街から4日。
ようやく腰痛の治ったディータと今後の予定を相談していた。
これから寝る予定なのでディータは寝巻きに防寒対策にケープを羽織っている。
夏が近づいてきてるが空調の効いたアルゴナウタイは毛布が無いと少し肌寒い。
「昔の地図と重ねてみたが、俺の所属していた国の……所謂王都があった場所だな。当然大型の基地も沢山残っている筈だ」
「ほお、やはり規模的に過去の王都じゃったか。そうなると調査も直ぐには終わりそうに無いのぉ」
「ここから更に一週間か。食料の補充を多めにしておいて良かった」
「一週間? アイギーナは山に囲まれて大回りせねばならぬぞ?」
「アルゴナウタイなら山は超えられる、飛行ユニット無しだからエネルギーをかなり消費するが」
「ヒコウゆにっと?」
「簡単に説明するなら合体する部品だ。アルゴナウタイ、というか500年前の戦艦はPMを合体部品にする事が出来る機能があったんだ。これによって想定されている搭載数より多くのPMを運べるし機動力も被弾に対する保険も得られる。反面PMの構造が複雑化して行ったがな」
「ふ~む、そうなるとこのアルゴナウタイで空を飛んだり海に行ったりも出来るのかの?」
「そうだ、アイギーナより南は海が広がっていたなそう言えば」
再び地図を確認するとアレスの言う通りアイギーナ王都より少し南の方には海が広がっており大小様々な島々が点々としている。
「うむ、色々な島をまとめてコルキス、と国名を付けておるな」
「この地方、昔はもう少し地面が多かったと記憶しているが……戦争で地形が変わったのかも知れないな」
「島が点々となってしまう程の戦争か……あんまり考えたくは無いのぉ」
「そうだな……ディータ、こんな話より次にいくアイギーナの話をしないか?」
「それもそうじゃな。アイギーナと言えば……そうじゃな、英雄の話が有名かの?」
「英雄? マルスの様にか?」
「戦争では無く怪獣から人々を守る、と言う英雄じゃがな。いや広い意味ではマルスという者も確かに守る英雄なのだが」
「時代が違えば英雄の尺度も変わる……それでアイギーナの英雄は?」
「そうじゃな、アイギーナの英雄は二人、ホワイトドラゴンの戦士ジュピタ……しかし5年と半年前に怪獣との戦いで命を落としてしまった」
「そうか。残念な事だな……この時代に会ってみたかったが……もう一人は?」
「もう一人はその娘、コレー。ホワイトドラゴンとエンスのハーフじゃ。半年前に巨人を倒したと言われておるな」
「巨人……?」
怪獣は無く巨人。
今までアレスが聞いた事の無い名前だった。
「3m程のゴーレムとか何とか……その巨人を倒したコレーが父と同じ様に英雄と呼ばれる様になったらしい」
「3mか……もしかすると500年前の無人戦闘機かも知れないな」
「ふ~む、そんな物もあったのか」
「数は多くは無いが一部部隊で使われてたらしい。う~む、位置的に王都だったから配送前に潰されたのが残ったのかも知れないな」
「今の時代この国の王都が立っている……不思議なものじゃな」
「そうだな、ところでアイギーナは王都と言っていたな。王がいるのか?」
「うむ、アイギーナの王はペレウスという名前じゃな……そういえば国の成り立ちは話して無かったかの?」
「成り立ち? 国はここ数年で出来たのか?」
「40年程前じゃな、今から45年前、今の三国を納めている王が一介の冒険家だった時代があるのじゃ。冒険を終えた40年前にそれぞれが生まれた土地の王になったのじゃ……わしがまだ子供の時じゃったな国が出来たのは」
「40年程前か……それにしては街の城壁などの作り方はかなりしっかりしてるな。元々か?」
「うんにゃ、街と村の区別もここ最近じゃよ。城壁などの技術はコルキスのものじゃな。コルキスは鉱物資源が豊富での、他の国より地面面積が少ないのに製鉄技術は世界一じゃ」
「……ディータ、今更だと思うが国の事を教えてくれないか?」
「うむ、良いぞ。何だかんだそういった事は教えて無かったの……え~とこれで良いかな」
ディータが適度な長さの棒を取り出す。
何時もはこの船橋の窓を固定するのに使っているがこれを物差し棒代わりにするのだろう。
「まずはワシらの今いるアイギーナじゃな。この国は他の二国と違い四季、つまり作物が芽吹く季節と暑い季節と葉が枯れる季節と寒い季節があるの」
「ふむ、500年前にもいくつかの地域で見られたな」
「その四季のおかげで作物や農業が発達しておる、この時代、食糧の5割はアイギーナの物じゃな。怪獣の被害が比較的少ないのも手伝っておる」
「この地方だと怪獣は三日に一度見るか見ないかだが……他の国だと被害が酷いのか?」
「そうじゃな、では次は南のコルキス。先程も言ったが海底に眠る鉱物資源が豊富で様々な武器を作っておる。怪獣は海に住んでおるから島の内側で暮らす人が多いの……四季は無く夏が長く冬が短く葉の散る季節が無いので秋と春がないのじゃ」
パネルに表示されている島々をトントン、と軽く突く。
大小様々な島が点々としているこのエリア全体がコルキスと言う国なのだろう。
「さて、最後はここからこの辺りまでの雪国じゃな」
「前にトリトが言っていたな、そうなるとこの国は冬が長いのか?」
ディータがなぞったエリアは現在残されている大陸の半分を占める大きさだった。
つまりこの世界の半分は雪国という過酷な環境なのだろう。
「うむ、この国は冬が長く秋がない……夏になるまで長い冬の季節があるそして何より、この国は怪獣が凄まじく多いのじゃ」
「この地方に怪獣が多いのは、何か理由が?」
「解らぬ、怪獣と雪で地方の奥地には行けぬしの」
「俺の時代の地図だと……この付近には敵国の首都があった筈だが」
「む、そうじゃったのか。敵国の事だと知らぬ事も多いのか?」
「あぁ、特に戦争末期時代は俺でも知らない事が多い。末期前に封印されたからな…………最近考えるんだ。俺の様な過去の遺産は、引っ張り出すべきでは無かった。そんな気がする」
「アレス?」
モニターの文字盤を見ながら、ふとアレスが呟く。
「この船で旅をするようになってから、妙に500年前の人に会うだろ? 偶然か、それとも必然か……500年前の人物は危険な人が多い、ウェスタ以外出会ったら戦闘になっただろ?」
「そうじゃな」
「俺も本来は戦争の兵器だ、危険な物があるかも知れないしこれ以上過去の遺産を掘り起こすのは——」
「何を言っておるか!」
ガシ、とアレスの肩を掴む。
勢いが強く羽織っていたケープが落ちたがそんな事を気にしては居られなかった。
「お主、そんな事を本気で考えておるのか!? 必要ない物ならお主はとっくに死んでいるじゃろ!? お主を作った者が何故お主を殺さずカプセルに封印したと思っておる!?」
「俺を、殺さず……に?」
「そうじゃ! お主が何故封印されていたか、その理由を考えて見よ!」
「……理由?」
何故か、と問われてもアレスには何も答えられなかった。
兵器である自分が、戦争もしないで封印された。
それが自分にとっての矛盾だったのに何故かそれを受け入れていた。
その理由が、たった一つだけある。
「……一つだけ、思い当たる事がある。Dr.ウェヌスは俺を戦争に参加させないのに何故俺を作ったのかと問いかけた事があった」
「して、その答えは?」
「……人間だから、最後に自分の子供を後世に残したかったから、だと」
「…………そうか、Dr.ウェヌスは。そう言う者じゃったのか」
「何か、解ったのか?」
「お主はな、Dr.ウェヌスの子供なんじゃよ。子供に生きて欲しいと望むのは親として当然の摂理じゃ」
コツン、とディータの額がアレスの額に当たる。
キスをしそうなくらいの距離感だがディータの目は真っ直ぐでそんな雰囲気を感じる事は出来なかった。
「のおアレス。ワシはお主の時代の事を半分も理解していない……想像もつかぬ様な恐ろしい兵器があるのじゃろう。お主の時代の人間からすれば現実が見えてない少女の様だと蔑まれるのじゃろう。この世界にお主の様な力は危険かも知れぬ……しかし、それでも」
「それ、でも……?」
「お主はその500年前の人と戦ったのじゃろ? それでその考えに賛同出来そうじゃったか?」
「……それはない。あんな風に戦闘を求めたりしたくはない」
前に戦ったマルスは戦に居場所を求めていた様な気がする。
500年の間に何があったのか解らないが戦の為に戦うなどアレスは嫌だった。
戦争がどういうものか、自分の中に入っているデータだけでもその悲惨さは理解できたからだ。
「それで良い、その感覚を忘れてはならん。お主がどんな目的で作られたとかそんな事はどうでもいいんじゃ。お主は今この時代に生きておるのじゃからそれだけで生きる権利がある」
「俺は、生命(いのち)では——」
「生命(いのち)じゃ。体が機械とか知ったことか、お主は生きておる。お主が何と言おうとワシが決めた」
「……ディータ」
「情報が欲しいとかいいながらもレアを助けて、クラトスを見捨てずマルスに挑んだ。優しく戦が嫌いな人なんじゃお主は」
「……俺が、人」
ディータに言われた言葉を、ゆっくりと噛み締める。
呼吸などしない筈の体なのに不思議と胸が苦しくなるような、息が詰まるような感覚だ。
「あー……何じゃ、言っておいて少し恥ずかしいのぉ。ワシは寝る!」
ほんのりと顔を赤くしたディータがため息を吐いてから船橋を去るのだった。
*
「さて、昼前にはアイギーナに到着するが……遺跡の規模というのはどの位なんだ?」
「そうじゃの、所々瓦礫や通った事のない場所があるのじゃが……恐らくアイギーナの街より大規模な遺跡じゃな」
「アイギーナの遺跡はオレも話を聞いたことがある。未開域の場所が多く規模が凄まじいとな」
「あぁアイギーナの遺跡は有名だなぁ……行くなら全員で行くことになるんじゃねぇか?」
「そうですね、キャンプ用の荷物を持って行くので何日と思いますし……」
「じゃあ皆んなで冒険だね! アタシも一緒に行くよ!」
一週間後、船橋に全員が集まって話し合っていた。
場所はアイギーナの付近、予定通りアイギーナには到着するだろう。
アイギーナの遺跡、つまり500年前の首都は元々とてつもない規模であった。
核兵器で何割かが削れたにしてもその残りだけでも今の時代では王都と同じくらいの規模がある。
地図はアレスのデータ中にあるが瓦礫や生きている装置を探しながら進むので想像以上に困難な道のりになるだろう。
「首都の遺跡なら俺にも使えるデータが得られるかも知れんな……」
「つーなると全員で、それもアイギーナで準備を整えてからって事になるな」
「そうだな、オレの体も大分前と同じように動けるようになった、足でまといにはならないだろう」
クラトスはここ半月で大分体の肉付きが良くなっていた。
四ヶ月前よりは少し痩せて見えるだろうがそれでも十分に動くことは出来るだろう。
「うん、看病した甲斐があったよ! クラトスさん直ぐ無茶するから大変だったけど」
「そうですね、少しでも早く動けるようにって無茶な運動を始めたのはびっくりしました……」
「この前腕立て数回してくたばってたのはそれか……」
「……解せぬ」
「解せぬではないじゃろしっかりレアとローデに感謝するんじゃぞ?」
「それは、解っている」
最近気がついたのだがクラトスは想像以上に抜けている、というかだらしない所がある。
表情や口数が少ないのでひたすら誤解を受けやすい人物、それがクラトスだった。
「とりあえず予定としてはアイギーナに入って遺跡の探索許可を貰う所からじゃな。その間にトリトとローデには買い出しに行ってもらう」
「おう、任せとけ」
「はい、少し多めな位でいいですよね?」
「うむ、クラトスとレアはキャンプ用品の補充で良いか?」
「ああ。使える物と使えないものは昨日点検してあるから後は足らない物を買うだけだ」
「そうだね、こっちは早く終わるから終わったらトリトさん達と合流かな?」
「おー手伝ってくれんなら助かるぜ」
「……そうなると俺とディータで探索許可を貰いに行くのか?」
「うむ、そうじゃな。結構大事なことじゃぞ? もし遭難しても助けてもらえるしの」
遺跡の発掘作業というのは危険が伴う作業でもある。
何時崩壊するのか解らない通路や見つかるかも知れない危険な兵器。
どんな事が起こるか解らない中で発掘作業をするのだから常に危険が伴う。
「そうか、解った。俺とディータで許可書を取りにいこう」
*
「クラトスさ~ん、これはどっちにしようか?」
「カンテラは油より魔法石を使う物にした方がいいからこっちだな」
魔法石を使うカンテラをクラトスが取る。
レアとクラトスは遺跡の中で使うキャンプ道具を買いに来ていた。
元々持っていた道具と男女用に分ける為にテントを一つ、そして人数分の明かりが必要だった。
「そうなの? 魔法石は値段が高いんだけど……」
「油を使うカンテラは空気のない所では使えなくなる。もし閉じ込められた時に油のカンテラを使うと空気を早く消耗して助かる確率が減ってしまうんだ」
「え? お? 火って空気が無いと燃えないの?」
「あぁ、昔そういった資料があった。その後実験をして確信も得た」
「そうなんだ……不思議~……ねぇそうなると魔法ってどうやって出すんだろう?」
「……魔法をどうやって、だと?」
レアの素朴な疑問にクラトスが目を丸くする。
「ほら、魔法を使わないで火を起こそうとすると石や金属をカチカチしたりするじゃない? なのに魔法だとパッと出来ちゃう……何でだろうって」
「……そうだな、確かに火打ち石や火打ち金は叩いた時の火花で火を点けているが。魔法にはそんな規則性は無い……気になるな」
魔法を使える事が当たり前すぎて気にも留めたことがなかった。
何故魔法が使えるのだろうというのは今の時代の人にとって当たり前。
呼吸がどうして出来るのかと聞くような物なのだが確かにレアの言う通り魔法にはこれと言った規則はない。
規則も無く、そして人の鍛錬次第で新しい魔法が発見される事もある。
魔法が使える事への疑問に幼い少女がさり気無く気がついた。
「レアは頭が良いのかも知れんな」
「アタシって頭あんまり良くないよ? ディータさんと勉強してても解らない事多いし……」
「何も問題を答えられる事が頭の良いという定理にはならん。些細な疑問に気が付ける事の方が大事だ、今度オレも勉強を教えよう」
「クラトスさんが? うん、それも楽しそう!」
花の様に笑うレアの笑顔にクラトスも頬を緩めながら頭をぽんぽんと撫でるのだった。
*
「兄さん、これも買いましょう? 安いですよ!」
「ん? 卵かぁ……ケースに入れないといけねぇけど確かに飯のバリエーションは増えるよなぁ」
トリトとローデが買い物をしているのは大きな畑の近くにある直売所であり、新鮮な食材を使った食事場だった。
アイギーナの畑は凄まじく広く、街の半分は網羅しているだろう。
世界中の五割の食料を作ってるのだからその規模は当然と言うべきだろう。
「それにしても流石アイギーナの畑です……何でもありますし良質なお野菜もお肉もたっぷりですね!」
「お、おぉそうなのか……?」
流石に食料の事は解らないので力説するローデに苦笑いしてしまう。
「そうですよ、兄さん達みたいに私は遺跡には行きませんし……戦いに関してはレアちゃん以下ですよ?」
「そりゃあローデは戦う必要がねぇんだから良いだろうよ」
「……でも、私だって色々考えているんですよ?」
守ってもらうばかりではどうしても気が重くなる。
何も出来ない自分に時々嫌気が刺すのだ。
「……悪い、やっぱりローデには戦って欲しくねぇんだ。最近どうも物騒だしな」
「もう、頑固何ですから」
「そうだぜ? 心配するのと過保護は大違いだ」
「あ?」
「……あの、誰ですか?」
気がついた時には隣で竜族で赤と金色の髪の大男が頷いていた。
食事場の近くという事もあってか、大男は骨つき肉を貪っている。
「お? あぁわりぃわりぃ、盗み聞きするつもりは無かったがお前さんどうにも過保護がすぎるぜ?」
「ぐ、会ったばかりの野郎にまでこんな事言われるとは……いや、いやだがな! ローデはオレの両親の形見みたいなもんでもあって!」
「嫌妹ちゃんを形見物扱いはダメだろこんな可愛いだしさぁ」
「え!? か、可愛いってそんな……」
「あ!? テメェなんだ妹に気があるのか!?」
「うわめんどくせぇコイツ!? 可愛いのは客観的に見てだなぁ」
「それは認める!」
「認めんだ!?」
「あ、あの……兄さん……」
トリトが武器に手を掛けようとした時だった。
ローデが申し訳なさそうにトリトの肩を叩く。
「んだぁ!?」
「店内での騒ぎはやめて貰えますか?」
「ゲェ!?」
ローデの声に振り向くと話しかけて来た大男より大きなオーク族の女が立っていた。
あまりの迫力にトリトは目を丸くし、大男もその女性を見て口をあんぐりと開ける。
「あ、お? あぁ……?」
「お、おい謝っとけ!」
「は!? なんでお前に言われなきゃ——」
「ドルグルアアアアアアアアアア!!!」
「ゴボッブロオオオオオオオ!?」
大男の注意に声を荒げようとしたトリトがオーク族の女のボディーブローで吹き飛ばされる。
「に、兄さーん!?」
「……この人元騎士団のリーダーなんだよ……引退して今はここで店長してるけど……」
「てめ……それ早く言え……妙にガタイいいと思ったら……オウェ」
「あら、気絶せず耐えたかい……いい体してるじゃないの、ところでファイス? 話しかけて掻き回したのは貴方よね?」
「ヒィ!?」
これまでの一連の流れを見ていたからかオーク族の女性が大男、ファイスの肩をガシリと掴む。
「い、いや元リーダー!? オレはこの可愛い子が過保護にされすぎて——」
「フンヌボ!!」
「オ°ン!?」
脳天に思いっきり拳骨を振り下ろされたファイスが面白い悲鳴を上げながら地面に倒れるのだった。
*
「のお、あの後ろ姿……」
「……ヘルエス、か?」
ギルドに向かう途中で人混みの中に見覚えのあるマントを見つけた。
何かを探しているのか辺りをキョロキョロしておりしかしアレスとディータを見つけると珍しいモノを見るような顔をしつつ歩み寄ってくる。
「やぁやぁ久しぶり! また会ったね!」
「ふむ、半月ぶり位かの?」
「そうだな……と、言いたいが……何故ここに居る?」
「え? 何だい何だい唐突だなぁ? 何でって旅をしているからに決まってるじゃないか」
「そうじゃよ? よく会うとは思うが旅の方向が同じなのじゃろ?」
「そうじゃない、同じ方向なのはどうでもいい……俺たちはアルゴナウタイで移動している、馬車の何倍も早い速度でだ……それなのに何故同じ街に、俺たちと同じ速度で移動が出来ている……?」
「……あ」
アレスの言葉にディータがハッとする。
アルゴナウタイは全速力を出して移動する事は無いがそれでも馬車の数倍早く普通の旅路寄りもかなり早い速度で移動している筈だ。
ルートもなるべく最短を通っており普通の馬車では到底同じ場所にいるのは不可能だろう。
「あぁ~それかぁ、実は良いもの持ってるんだよ……遺跡で手に入れた一人用の移動機械。こうね、車輪が二つ付いてて大きな音出して走るんだよ」
「……バイク、か? 」
「バイク? 二輪で動く遺産かの?」
「ほっとけば勝手にエネルギーが貯まるし少し浮いてるからどんな道も走ってくれるんだぜ? 怪獣から逃げるのにも使えるしね」
「……ありえるのか?」
「あぁ、そのスペックなら軍隊でも使われてた二輪駆動車だろう。走れる程原型が残っているのがあるとは思わなかった」
「疑問は解けたかい? じゃあ僕は探し物があるからこれで失礼するよ~?」
いつも通りヘラヘラしながらヘルエスは走り去って行く。
「……彼奴は変わらんのぉ無駄に楽しそうじゃ」
「あぁ」
「さて、ワシらもそろそろ行くぞ? 遺跡の申請って意外と時間かかるしの」
「許可を得るだけじゃ無いのか?」
「うむ、案内人を一人付けたいからの」
「なるほど」
*
「はい、解りました……これがギルドの許可書になります」
「うむ、よし、アレス。これを持っていてくれ」
「ああ」
「さてと、次は案内人が欲しいのじゃが」
アレスとディータはギルドに遺跡探索の許可書をもらっていた。
この辺りは遺跡調査が盛んなので少し待ち時間があったが二人で話をしていればそんなものは直ぐだった。
「少々お待ちくださいね……あ、も、申し訳ありません、今空いている案内人が居なくて……」
「な、何じゃと!?」
「案内人がいないのか?」
「えぇ……先月までいた人が引退してしまったので書類の更新が遅れてました……」
「ふ~む……困ったのぉ、広い遺跡である以上案内人が居ない状態で闇雲に探すのは……」
「あの~? お困りデスか?」
ディータが腕を組んで唸っていると不思議なイントネーションで声をかけられた。
声に振り返ると白と黒のまだら模様の少女が立っていた。
竜族の尾や鱗があるその姿はハーフと呼ばれる子だ。
「あ、コレーさん」
「コレーじゃと? 英雄コレーか?」
「前に聞いたな……この子がそうなのか?」
「あはは、コレーデスけど……あんまり英雄とは呼ばれたくは無いデスね……と、え? ウェヌスさん?」
英雄という言葉に苦笑いするコレーと呼ばれた女性。
彼女が前に巨人を退治したというこの街の英雄だった。
その女性がディータを見て首を傾げる。
「ウェヌス……だと? Dr.ウェヌスの事か?」
「お主を作った科学者の名前じゃな? ワシがそのDr.ウェヌスに似てるのかの?」
「え、人違いデスか……? それにしてもよく似てマスね」
「……そういえばアレスも最初ワシを見間違えていたな」
「あ、あぁ……Dr.ウェヌスがこの街にいたのか?」
「えぇ2日程前まで南のコルキスに向かうと港町へ向かいまシタ」
「そうか……解った。追いつけそう、だな……それなら後回しでいい、今は遺跡の案内人を探しているんだ」
「と、そうじゃったそうじゃった……ワシらは遺跡の案内人を探しておるのじゃが……」
「ふ~む、今はやってないデスけど前に遺跡の案内人もしてたボクに任せてくれませんか? 新しい地形なんかは直ぐに覚えられマスし」
「良いのか?」
「はい、まぁ一つだけ……聞きたいことがありマス」
「ふむ、何じゃ?」
「そこのお兄さん……ロボット、デスよね?」
じー、とアレスの事を見つめてからうん、と頷く。
コレーの言葉に一瞬驚いた表情を二人がする。
それはそうだろう、アレスは一見すると鎧を着た人にしか見えない。
ロボットという事情を知っているディータ達ですら時々混乱するくらいだ。
「お主、解るのか?」
「隠すつもりは無かったが、見破られるとはな」
「ちょっとした事情で遺跡の技術に詳しいのデス。ちょっと待ってて下サイね? え~とあちらの部屋で話しましょうか」
「解った」
「うむ」
コレーが受付から受け取った資料に目を通す。
この半年間案内人は休んでいたので少々通れない通路が増えていた。
部屋の中にある椅子に座っている二人の元へ資料を見ながら歩み寄る。
この部屋は遺跡に探索に行く前に外部に情報が漏れない様にする部屋だ。
「ふむふむ、改めて。ボクはコレーデス。この街で半年前まで案内人をやってましたが今は休業中でした」
「ふむ、大丈夫かの? 地図との差異は」
「ハイ、これなら直ぐに覚えられマス」
「……少しだけ聞いてもいいか? 君が倒した巨人というのは……」
「……無人敵地攻撃兵器、と言ってまシタ。ボクは彼と長い時間を過ごして、最終的にボクが壊しました」
書類を確認しながら淡々と喋る。
しかし声は微かに震えており、その雰囲気にアレスは何も言えなくなりそうになる。
「そうか、お主はそのそのロボットを愛しておったのじゃな?」
「何? ロボットを……?」
「ハイ……とても、とても愛してまシタ。二人に声をかけたのも。アレスさんがロボットだったから、デス……懐かしい気分に、なってしまいました」
ロボットを愛していた。
アレスにとってはあまり信じられない言葉、彼にとってロボットはやっぱり無機物で恋愛の対象と言うには少し違和感があった。
「ロボットを、愛する……のか」
「アレス、お主勘違いしておるぞ。正直この時代でAIを持つロボットは人とそう変わらぬ」
「ハイ、あの人も街にいる人と何ら変わり無く話すことが出来ました……ロボットを愛する、と言うよりはあの人を、プルートを愛していたんですボクは」
この半年でプルートの事は既に吹っ切れたと思ったがやっぱり無理だった。
今でも夢に見るのはプルートを直している時の事で起きた時には瞳が濡れている事もあった。
そんな彼女がアレスを見た時にとても驚いた。
あんなに小さな体なのに精巧に作られている。
その知識があるコレーでも見間違えるくらいにアレスは人の姿をしている。
「所でー……アレスさん達って旅人さんデスか?」
「あぁ、発掘した遺跡戦艦で旅をしている」
「戦艦!? 地上用の船って事デスか!? 今の時代活動可能な船が残っていたんデスか!?」
「お、おぉ……凄い食いつきじゃな」
「どこまで昔の技術を知っているのかは解らないが……その気持ちは解る。俺もカプセルが無ければ500年の時は耐えられなかっただろうしな」
「戦艦の事も気になりますね……今回のお仕事が終わったら見学に行っても良いデスか?」
「あぁ、構わん」
「ここまで食いついてくるのは珍しいのぉ、あいやもしかしてワシらも側から見るとこうかの?」
「……コメントは差し控えさせてもらおう」
「お主最近口悪くなったのぉ!?」
「そ、そうか……?」
ディータの嘆きに思わず言葉が詰まってしまう。
そういえば最近妙に軽口を叩く事が増えた気がする。
目覚めた時と違いかなり時間が経ったからか、それとも色んな話を聞いて何か変わったのか、自分では解らないが口が回るようになった気がする。
「……ふふ。ちょっと懐かしい気分デスね」
「む、そうか……ちょっとデリカシーが無かったの、すまぬ」
「いえいえ、でも声をかけた事を良かったと思ってマス。お二人の旅のこと、もっと聞きたいデス!」
「そうか、とは言え……何から話すべきか」
「そんなの簡単じゃろ、お主の事を話して見るとよい」
「……解った、俺は500年前に作られたロボットだ。元々は戦争に使われる予定だったがその前に封印されて——」
「あぁそう言う感じではないぞ? 起きてからの事を話して見るといい」
「そ、そうか? そうだな……俺が目覚めた時はディータともう一人、トリトって男が居てな」
そこからは自分の今までの事を沢山話した。
遺跡の戦艦を見つけて旅立った事。
旅立ってから初めて見たクレータの街でレアと共に旅立つことになった事。
トリトの武器を買いにエペソの街へ出向きそこで戦いがあった事。
遺跡調査にとスパルの村で500年前の英雄と戦ってクラトスが付いてくる様になった事。
補給に為にキプロの街に行きそこでウェヌスの古い研究所やここでも500年前の傭兵と戦った事。
そして自分が、ウェヌスによって作られたロボットである事。
色々な事をコレーは頷きながら静かに聞いていた。
「なるほど……ボクはプルートから話を聞いただけでしたけど、やっぱり500年前の人が今も生きているんデスね?」
「あぁ、Dr.ウェヌスは、どんな感じだった?」
「そこは安心してくだサイ! あの人は医者として世界中を回っていると言ってまシタ! この街でも沢山の人を治してくれまシタよ!」
「ほぉ、それは良かった……お主を作った者は優しい人何じゃな」
「……あぁ」
コレーの言葉にどこか安堵する。
ウェヌスがこの時代でも生きている、それも500年前と同じ優しいままで。
今まで500年前の人は精神に何かしら異常があった様に見えたのでウェヌスもそうなっているのでは無いかと不安だった。
「さて、話もそろそろにして遺跡に向かいまショウ! 他の所で買い物している皆さんも呼びに行かないといけまセンね!」
「うむ、そうじゃな。アレスこの遺跡の探検が終わって次の街に行く頃にはお主の母にも会えるかも知れぬの」
「あぁ、とても楽しみだ……色々聞きたいこともあるがまずは会って話したい」
そう言ったアレスは何処か微笑んでいる様に見えた。
何時かの時よりも表情が柔らかくなった気がした。
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あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
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