国王様は新米騎士を溺愛する

ジュリアン

グリン王国到達

シェンはタリムに何か命令をして放した。俺には教えてくれないのだ。
そこが少し不満な俺は不機嫌になった。

「急ぎましょうか。馬はさっき殺されたので徒歩で行かなければなりませんので。」

シェンが荷物をまとめて歩き始めた。

「はい。」

手を差し出されて俺はそれを自分のと繋いだ。暖かい手のひらが俺の指を包み、指と指の間にシェンの指が絡まっていく。

「さっきのタリムがうまくやってくれれば俺の作戦通りにいきます。あと、すごく大切な情報を得ました。」
「なに？大切な情報って？」

「グリン王国に今山火事が多発してるそうです。」
「山火事？」
「はい、雨量は確かに少ないのですが、こんな雨量の年はいくらでもあります。ですが山火事は…大規模なものも発生していて大変な様なのです。」
「…早く帰りたい。シェン。」

ルークはきっと困ってるだろう。俺に何ができるかな？力になりたい。それに、被害に遭った国の人たちの力になりたい。どうしよう！

「急ぎます。とにかく帰りましょう。ただ、ジュリアンとわからないように変装してくださいね。いきなり帰るのは敵に標的にされますので。俺も変装しますから。」

変装…？どうやって？



ーーーーーー

「何でこうなるのかな？説明して、シェン。」
「え、いいじゃんジュリア。」
「ジュリアン！」
「それ、ダメだろ。俺の恋人の超絶美人なジュリア。はい決定。」

俺はシェンがあらかじめ用意していた女性の服を着せられている。金髪の長い髪のカツラをかぶり、女性もののローブを羽織っている。

「ジュリア。本業、グラムリア王国の女性モデル。俺はグリン王国にジュリアの仕事についてきたエージェンシーのマネージャーって事で。身分証もランバートのバンパイア組織に作ってもらいました。」
「後で覚えてろよ…。こんな格好…。」

悪態をつく俺にシェンがキスをした。腰を抱かれて深いキスになる。

「うわぁムラムラします…めちゃくちゃ可愛い。」
「シェン、ほんとは女がいいの…？」

自分のとはいえ、女装に欲情するってことは女が好きなんだろうか？俺そっくりの女が現れたらシェンをとられちゃうかも、と不安になる。

「そんなことはあり得ませんよ。俺はジュリアン一筋。女装してもすごい美人ですね…。可愛い。」

満足げなシェンは機嫌よく俺の手を引いてどんどん歩いていく。

そうして３日後、とうとうグリン王国の国境を無事に越えて入国できた。