国王様は新米騎士を溺愛する

ジュリアン

魔術師レアル

俺とリアンは甲板に出たら、中くらいの船が横付けされてあった。

そこに天使のような金髪の美貌の男性が立っていた。年は30はとうに越えていそうだけれど、その美貌は年齢を感じさせない。
長く白いローブを着ている格好はまさに魔術師だ。

シェンが黙ってその彼を見つめているのに気がついた。

ギールがその船のほうへ歩み寄っていき、リアンも俺の腕を持って後をついていく。俺の腕を握るリアンの指が緊張のせいか冷たかったので、俺はリアンの目を見つめて笑顔を作った。俺が支えてあげないといけないんだ。

「グラムリアの魔術師、レアルだな？」

ギールがそう呼び掛けると、その天使のような男性が頷く。

この人が、魔術師レアル本人。すると、その後ろからすっと紫の髪の長身の男性が側に立つ。服装からして、騎士。

「そちらがグリン王国のリアン殿か？」

紫の髪の男性がリアンに呼び掛けてきたので、リアンは大きく頷いた。

「では、こちらへどうぞ。…シェン！なにやってんだ早くお連れしろよ！」

紫の髪の男性が突然シェンに話しかけた。ああ、そうだ、騎士なんだから当然シェンの知り合いだよな。

シェンは俺の側にやってきて、軽々とリアンを抱き上げた。リアンは驚きながらシェンの肩に手を廻す。

「参りますよ、ジュリアン様も。」

シェンが先に船に移り、俺も続く。
ギールが突然大声で叫んだ。

「がんばれよ！絶対治るからな！また会いに行くから！」

その言葉を聞いて、リアンが泣きそうな表情で微笑み返し、手を振った。

「ありがと…。」

リアンが、ぽそっと呟くように言った。

ギール海賊団の船はゆっくりとこの船から離れていく。甲板には荒くれ男たちが、リアンにちぎれんばかりに手を振っていた。
ギールの船を見送った俺たちに魔術師レアルが話しかけた。

「さて、リアン殿。俺がグラムリア王国魔術師、レアルです。お話はそちらの国王ルーク様からお手紙で何度も頂戴して理解しています。」

ルーク、そんなに手紙を出していたのか…俺はまたルークのリアンへの愛情を再確認した。

「グラムリアの魔術師といっても、俺は医療魔法に特化しています。治癒の方です。なので安心して任せてください。非公式にグラムリアに入国されるので、バンパイアの船を使いましたが、我が国王の許可は得ていますからご安心くださいね。」

その説明を聞いて、俺とリアンはホッとした。

「シェンが国王に手紙を出してくれたから、今回は特例許可が出たんだよね。」

レアルの付け足した言葉にリアンと俺は驚いてシェンを見た。