国王様は新米騎士を溺愛する

リアン

言えないです。

「お休みリアン。」
「お休みルーク。」

チュッ、とキスをしてルークは俺を抱いて眠る。

ルークの寝顔を見ながら俺は考えていた。
せっかく恋人宣言までして、俺もそうなるべく自覚したのに。
天然ルークからありがたくファザコン認定証を授けられてしまった俺は、今後ずっとキスとハグだけの幼児の恋人ごっこのようなままだった。

あの時ジェットの名前を呼んでしまった俺が悪いんだけど！

これからもずーっと、ベッドに二人で寝ててもなんもなしになるってことだよね？生殺しか！何の罰ゲームだよ。
ルークはストイックだからきっといつまでも我慢できる。この人は実行する。
復讐のために10年も我慢してコツコツ時期を待ったこの努力の人はそこらの感情には絶対流されない気がする。えっ俺10年もまつの？無理！

ファザコン卒業だっていつどうやって言う？

「今日からファザコン卒業できたよ、ルーク。」
「わかった。リアン抱くぜ。」

このシチュエーション絶対おかしい。
恋人同士ってもっと、自然な流れで一つになるもんじゃない？

何で待とうとか思うかな？ルークの優しさの向きおかしくない？
ほしけりゃ奪えよ！奪ってくれよ！
あっそれも恥ずかしくて言えるわけないんだけど。

俺は今日のフェルナンド逮捕事件よりそっちのほうが気になって眠れなかった。
人の命よりそっちってのも俺オカシイ。

次の日、フェルナンドの刑が執行された。市中引き回され、石を投げられてボコボコにされた血だらけのフェルナンドが刑場で斬首されたと報告があったのだ。刑の執行には騎士団長アイゼルが立ち会った。

「そうか。」

執務室でルークは表情を全く変えずそれだけ言った。

自室に戻ったルークは疲れたようだった。
肩が凝ったようで、首をゴリゴリひねるルークに俺はマッサージをしてあげた。目を閉じるルークがなんだか切なくて慰めてあげたくて俺はその首に抱きついていた。

「どうした？リアン。」
「大丈夫…？なんだか、つらそうに見えたから。」

ルークは首に廻された俺の手を握って引き寄せて自分の膝に俺を向かい合わせに座らせた。ルークに股がる姿勢になる。
お互いをぎゅっと抱き締め合った。

「やっぱり血が流れるとつらいな…。これからしなくてはならない問題が山積みなのにな。リアン、お前さえ側にいてくれたら俺は頑張れるから。」

こんな弱さを見せてくれるのは俺だけなんだろうな。俺はキュンキュンしてしまった。

以前、ルークの筋トレの声に勘違いしたとき、他の人との仲を疑った俺はドキドキするどころか血の気が引いた。それって物凄く動揺したからだ。

ずっと前から好きだったのかな、俺。
やっと恋人になれたのに。
だけど、どうしたらいいのかわからない。
俺は悶々とした。

「なあ、今日も…お前寝ながら父親の名前を呼んでたんだけど、何の夢見てるんだ？遊園地でも行ってはぐれたのか？うなされてたぞ。」
「え？また言ってたの俺？うなされてた？」

ルークの指摘に俺は驚いた。顔が真っ赤になる。

「ほんとパパっ子だったんだな、リアンは。」

ルークがポンポンと俺の頭を撫でた。

ルーク、違う…。
今朝の夢はうっすら覚えている。
でも、言えるか…。絶対言えない…。

ジェットが生きていた頃の夢。

彼と愛しあった昔の記憶。