国王様は新米騎士を溺愛する

リアン

逆襲のルーク

「なっ、なっ…何だ！どういうことだ？ルーク！」

狼狽するフェルナンドにルークが冷たく笑った。

「何って？見ての通り俺が決闘に勝った。今まで10年もの俺のチキンっぷりそこそこ上手かっただろ？」

ヒュン！と見えない位の速さで剣の先をフェルナンドの顔に寸止めした。いや、ちょっと刺さったぞ。フェルナンドの眉間から血が出た。

ルークは残忍な笑みを浮かべてフェルナンドを睨む。

「ヒ、ヒィッ！」

フェルナンドがビビりすぎて尻餅をつく。表情が凍りついていた。

「誰もホールから出すな、重罪人の協力者だ。招待客リストもこちらの手にある。」

騎士団長アイゼルがテキパキ指示を出していく。フェルナンドと腰巾着の貴族が捕縛された。

「さて、キャリー。」

ルークに呼ばれて、びく！と震え上がる、残されたキャリー。既に泣いて顔も何もかもボロボロだった。

「こいつを奴隷にすると言ったな。お前ごときが厚かましい。」

ルークは俺の腕を掴んで引き寄せた。肩を抱かれる。

「重罪人の娘、キャリー。お前の身分を最下層まで落として一生王宮の地下の下水処理場で使ってやろう。太陽の下へはもう二度と出られないが死罪まではしない。フェルナンドは国家反逆罪で市中引き回しの上斬首。母親は北端の孤島の修道院へ送る。
尚、フェルナンドと近しい貴族は身分を剥奪の上、領地は没収、個別に罪状は吟味の上、斬首もしくは監獄送りとする。ガリアス、すぐに手続きにかかれ。」

「御意。」

ルークのフェルナンド親子と一派への罪の決断は早く、どうするかはもう決まっていたんだな。今日のこの捕縛劇はアイゼルとガリアスと３人で計画されてたんだ。俺は何も知らなかった。ちょっとショック。

宰相ガリアスは一礼するとホールから護衛兵を連れて出ていった。

ルークはフェルナンドの腰巾着どもを一瞥すると、俺の腰に手を廻す。キャリーは絶望して倒れこんだ。

「一同、沙汰を待て。騎士団長アイゼルにこの場の指揮を任せる、以上！」

凛とした声でルークがこの場を締める。

「はっ！」

騎士団長アイゼルが敬礼した。手の空いてる騎士も敬礼だ。

穏やかで国民人気だけの国王という評価だったのが、これまでに見たことのない威厳と逞しい荒々しさを目の当たりにして、招待客や騎士たちは息を呑んで静まり返っていた。

俺は腰を抱いたままのルークに首を傾げた。
この人なんでずっと俺を抱っこしたまんまなの？

その疑問は解けた。そんな俺をもっと抱き寄せてルークははっきり大声で周囲にとんでもないことを言ったのだ。

「あと、この護衛騎士は俺の想い人だ。傷つけるやつは誰であろうが許さない。覚えておけ！」


…はぃ？



想い人？

告白大公開？国王やっぱりご乱心？

俺はそのままルークに手を引いて連れられ、早足でホールを出て王の私室へ向かわされた。