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異国での決意
種族の違い
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ジュールと暮らし始めてから3ヶ月が経った。彼は相変わらず優しくて、料理がめちゃくちゃ上手かった。家にいるときは俺のために手の込んだ晩ご飯を作ってくれる。お陰で病気ひとつしていない。俺はジュールの家にある魔法書等を読んで強くなるために勉強して過ごしていた。
ジュールは時折家を空ける。時々休みはあるけれど、どうやら勇者として人間に紛れて生活しているようだった。本人に理由を尋ねると、前の恋人が勇者で、いつか転生してくる恋人の魂をずっと待っているのだそうだ。勇者をしていると戦いの中で彼の記憶が甦るから、とジュールが話してくれた。
「ドラゴン族ってどれくらい生きられるの…?てか、ジュールいくつ?」
そう尋ねる俺に、夕食の牛のテールシチューを口にしたジュールが微笑んだ。
「俺は…シンよりはかなり生きてるよ、もう数百年だ。ドラゴン族の寿命は数千年…少ない種族からね。老けないし死ねないし…」
数千年、と聞いた俺のスプーンを持つ手が止まった。老けない、死ねない?
「それ、まさか俺も…?」
ハーフドラゴンの俺にドラゴン族のその血が半分入っているのなら、俺は人間より寿命が長いのかも知れないという疑問が生じてくる。ジュールが目を伏せて考えるような仕草をした。
「ハーフドラゴンは親しくしていた奴もいるよ、でもそいつはドラゴン族と魔族のハーフだ…。まだ生きてるけどそれは魔族も長寿だからだ、シンの場合はわからないな…だけど人間よりは長いと思う。なんせ白銀王の息子だからな」
「長いんだ…」
俺は俯いた。エリアスとフィリックスとは決定的に世界が分断されたような気になってしまって落ち込んだ。ジュールが話を続ける。
「不老不死に近いって、それが幸せなのかどうかも、俺にはわからないんだ。ドラゴン族の多くは、誰も愛さず異世界の狭間で淡々と生きてるよ、神の下僕として…。きっと、愛することをやめたんだろうな、辛すぎて」
ジュールがテーブルに向かいに座る俺の顔に手を伸ばし、唇の端についていたスープを親指でなぞって拭った。それを自分の口に持っていってペロリと舐める。天井を見上げてぽそりと呟く。
「愛する人が同じ世界で、すぐ隣で生きてる、呼吸をしてる、キスしたり触れられる、自分の姿が瞳に映ってる…ってそれだけで奇跡だ、そもそも誰かを想える心があるのは苦しい事もあるけど、幸せに他ならない。俺はこれからも命が尽きるまで恋人だった彼を愛することはやめたくない」
「…つらくない?転生して記憶がなかったりしたら」
「そうだな…もう何度も、彼の人生をを見送ってるけど、出会いも別れもつらかった。でも、好きな気持ちが全てを満たしてくれる…。…っ…」
目の前のジュールの瞳からポロっと涙が落ちた。
「ごめん、こんな話、メシが不味くなってしまうな…。温め直すよ、それ貸して」
慌てて立ち上がったジュールが俺と自分の皿を持ってキッチンに向かう。その背中を黙って見つめた。
苦しいのは俺だけじゃないんだな。
一つしかないベッドに眠るジュールは、時折俺を抱き締める。額にキスをして、優しく微笑む。
でも俺は知ってる。深夜、寝言のように愛する彼の名前を囁くほど小さな声で呼んで、肩を震わせてるジュールの背中を知ってる。
それを見るたびに泣きそうになる。
俺にもそんな人がいる。
離れることが思いやりとか相手の幸せだと思っていたことに、そんなジュールの姿は俺の価値観をひっくり返されるような気になる。ジュールは俺より過酷な傷を山ほど持っているのかも知れない。
きっとジュールは、俺のことを甘ったれた小僧と思ってるんだろうな…。
目の前にコトリと温かいスープが置かれる、見上げるとジュールが優しい笑顔で俺を見ている。その目は赤い。
「…?」
俺はジュールを見つめた。
「悪い…ほんとは俺の目は赤いんだ…ドラゴン族は感情が高ぶると赤くなる。シンのはきれいな蒼い目だな、吸い込まれそうだ、前の恋人もそんな目だった、初めは黒かったけどな」
俺の髪をそっと撫でてまたテーブルにつき、食事を始めるジュール。
「シン、明日、一緒に街へ買物に行かないか?武器屋に行きたくてな」
「行く、俺も久しぶりに外に出たいかな」
「じゃ決まり。朝から行こう、ついでにゆっくり遊ぼうか、外食したり」
嬉しそうに笑うジュールに安心して俺はまた食事を始めた。美味すぎるスープは丁度よく温かかった。
ジュールは時折家を空ける。時々休みはあるけれど、どうやら勇者として人間に紛れて生活しているようだった。本人に理由を尋ねると、前の恋人が勇者で、いつか転生してくる恋人の魂をずっと待っているのだそうだ。勇者をしていると戦いの中で彼の記憶が甦るから、とジュールが話してくれた。
「ドラゴン族ってどれくらい生きられるの…?てか、ジュールいくつ?」
そう尋ねる俺に、夕食の牛のテールシチューを口にしたジュールが微笑んだ。
「俺は…シンよりはかなり生きてるよ、もう数百年だ。ドラゴン族の寿命は数千年…少ない種族からね。老けないし死ねないし…」
数千年、と聞いた俺のスプーンを持つ手が止まった。老けない、死ねない?
「それ、まさか俺も…?」
ハーフドラゴンの俺にドラゴン族のその血が半分入っているのなら、俺は人間より寿命が長いのかも知れないという疑問が生じてくる。ジュールが目を伏せて考えるような仕草をした。
「ハーフドラゴンは親しくしていた奴もいるよ、でもそいつはドラゴン族と魔族のハーフだ…。まだ生きてるけどそれは魔族も長寿だからだ、シンの場合はわからないな…だけど人間よりは長いと思う。なんせ白銀王の息子だからな」
「長いんだ…」
俺は俯いた。エリアスとフィリックスとは決定的に世界が分断されたような気になってしまって落ち込んだ。ジュールが話を続ける。
「不老不死に近いって、それが幸せなのかどうかも、俺にはわからないんだ。ドラゴン族の多くは、誰も愛さず異世界の狭間で淡々と生きてるよ、神の下僕として…。きっと、愛することをやめたんだろうな、辛すぎて」
ジュールがテーブルに向かいに座る俺の顔に手を伸ばし、唇の端についていたスープを親指でなぞって拭った。それを自分の口に持っていってペロリと舐める。天井を見上げてぽそりと呟く。
「愛する人が同じ世界で、すぐ隣で生きてる、呼吸をしてる、キスしたり触れられる、自分の姿が瞳に映ってる…ってそれだけで奇跡だ、そもそも誰かを想える心があるのは苦しい事もあるけど、幸せに他ならない。俺はこれからも命が尽きるまで恋人だった彼を愛することはやめたくない」
「…つらくない?転生して記憶がなかったりしたら」
「そうだな…もう何度も、彼の人生をを見送ってるけど、出会いも別れもつらかった。でも、好きな気持ちが全てを満たしてくれる…。…っ…」
目の前のジュールの瞳からポロっと涙が落ちた。
「ごめん、こんな話、メシが不味くなってしまうな…。温め直すよ、それ貸して」
慌てて立ち上がったジュールが俺と自分の皿を持ってキッチンに向かう。その背中を黙って見つめた。
苦しいのは俺だけじゃないんだな。
一つしかないベッドに眠るジュールは、時折俺を抱き締める。額にキスをして、優しく微笑む。
でも俺は知ってる。深夜、寝言のように愛する彼の名前を囁くほど小さな声で呼んで、肩を震わせてるジュールの背中を知ってる。
それを見るたびに泣きそうになる。
俺にもそんな人がいる。
離れることが思いやりとか相手の幸せだと思っていたことに、そんなジュールの姿は俺の価値観をひっくり返されるような気になる。ジュールは俺より過酷な傷を山ほど持っているのかも知れない。
きっとジュールは、俺のことを甘ったれた小僧と思ってるんだろうな…。
目の前にコトリと温かいスープが置かれる、見上げるとジュールが優しい笑顔で俺を見ている。その目は赤い。
「…?」
俺はジュールを見つめた。
「悪い…ほんとは俺の目は赤いんだ…ドラゴン族は感情が高ぶると赤くなる。シンのはきれいな蒼い目だな、吸い込まれそうだ、前の恋人もそんな目だった、初めは黒かったけどな」
俺の髪をそっと撫でてまたテーブルにつき、食事を始めるジュール。
「シン、明日、一緒に街へ買物に行かないか?武器屋に行きたくてな」
「行く、俺も久しぶりに外に出たいかな」
「じゃ決まり。朝から行こう、ついでにゆっくり遊ぼうか、外食したり」
嬉しそうに笑うジュールに安心して俺はまた食事を始めた。美味すぎるスープは丁度よく温かかった。
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