異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ

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伝説のゆくえ

死闘

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「ちょっ…とおっ!」

俺は大きな声で怒鳴っていた。目を見開いて俺を見るオスカー。

「赦すってなに?俺は何もできないっ!」
『お前を手にできれば俺は全ての幸福を得られる、それが赦しだ…』
「そんな勝手な!俺の同意は?そんな強引にやるなら大嫌いになるから!」

俺の言葉にオスカーは沈黙した。まさか手に入れた昔の恋人が自分を拒否するなんて思いもよらなかった感じだな。

「それに俺をここへ閉じ込めて二人で暮らすの?絶対嫌なんですけど!」
『嫌と言われても俺はここから出られない…』
「出たじゃん!」
『出たな…でもあれはドラゴンの姿…俺の本来の姿ではない』
「太陽の光を浴びるとドラゴンになるんだよね?じゃあ、夜なら今の人間の姿になるってことじゃないの?」
『……!』

俺の言葉にオスカーが鳩が豆鉄砲をくらったような顔になる。

「魔って名前をつけたのだって、勝手に人間がしたんだろ?自覚が無いなら魔じゃないじゃん!普通のドラゴンとして生きれば?夜は人間になるんだし」
『……。』

俺は乱れた服をいそいそと直すと、オスカーの前に胡座をかいてどっかりと座った。

「悪いけど今の俺は今を生きてんの。昔誰だろうと過去は過去。シンシアもシンゴも過去の一つで同じなんだよ。今一番優先順位はシン、この今の俺で。だからオスカーの想いには応えられない、ごめんなさい」
『俺にとっては今なんだが…』

ぽそりと悲しげに呟いたオスカーに俺は目を細めた。

「こんな、地底で引きこもりんしてるから過去しか見られないんだって、地上に出ようよ」

しょぼくれてるオスカー。

そうなんだよね、何か解決法はないものかな…。

「友達にはなれる…けど…それじゃだめ?」
『友達?』
「うん…俺さ、生い立ちがちょっと特別で友達がいなかったの。だから今、オスカーが友達になってくれたらもれなく一人目の友達」

うわ、我ながら苦しい言い訳というか逃げだよ…!

『本当か!?』

苦々しい表情の俺にキラキラした笑顔でオスカーが笑った。あれ?予想外…。

『本当に一番の友達になれるのか?ならお前の一番になりたい。嫌われるくらいならそっちを選ぶ』
「いいよ。じゃ、友達になろうよ」

俺は魔と友達になってしまった。

突如上から轟音がして、大きな火焔放射と雷柱が降ってきた。驚いて穴から出ると、カイザー号とオリオン号が上空から急降下してくるのが見えた。ラースもだ。

「シン!!!!!」

エリアスとフィリックスが助けに来てくれたんだ。嬉しくて俺は走りだして、ふと、後ろを振り返った。

そのとたん、凄まじい音を立てて雷撃と火焔放射が俺の横をすり抜ける。

「あっ…ち!!」

ちりっ、と焼けるような感覚と直撃を受けてオスカーのいた場所が大爆発する。

「やったか?!」

エリアスとフィリックスがまた構えをして攻撃体勢に入るのが見える。

「ちょっと!みんなやめて!もう戦わなくていいって!」

エリアスとフィリックスがまた怒りの攻撃を仕掛けた。スラッ…と剣を抜いたエリアスがカイザー号から飛び降りて全身にバリバリと雷撃を纏わせ、一瞬でオスカーへと突っ込んでいく。俺の声は全く届いていない。

でも、初めて見たエリアス個人の戦い方に俺は度肝を抜かれた。動きが速すぎて目が追い付かないのだ。

ガキィン!という金属の音。オスカーが自らの腕を鋼鉄に変えて楯となってしのいだ。足元が燃え上がり、フィリックスが炎の刀の様な細い剣でオスカーを攻め立てていく。ドラゴンがいなくとも竜騎士の戦闘力はとても高い。俺は二人の攻撃に魅入られ目を見開いたまま動けなかった。殺気立った二人に恐怖したのもある。おそらくオスカーを殺すつもりでかかってる…。

「くそっ!」

やられっぱなしのオスカーが歯を食い縛り、衝撃波を出して二人を跳ね返す。二人を吹き飛ばした彼が手から黒い霧を発生させ二人の周辺がグレーに染まる。エリアスとフィリックスの二人の足がよろめいて喉を押さえた。

「毒か…!くそ…がっ!」

フィリックスが手を伸ばして青い炎を出し、霧を焼き消す。苦痛に表情を歪めながらエリアスが手のひらから小さな渦を発生させると竜巻が現れ、霧を吹き飛ばし、そのままオスカーを目掛けて大きな台風のような突風が襲いかかる。俺も吹っ飛びそうになって身を伏せた。

巻き込まれちゃう!と思ったらラースが俺のそばへ来てくれたので、首にしがみついて少し下がった。

「シン…無事でよかった!もうエリアスとフィリックスが大変なことになってて」

ああ、見ればわかるよ、ガチギレしてるね。激おこだよ!止めたいけど止める余地がないんだよ!あの人たち、絶対人の話聞いてないし!

「あまり遠くに行かないでラース…このままで」
「なんで?危ないよ?」

目の前で繰り広げられてる見たこともないレベルの死闘に俺はただ、思った。

俺のためなんだよね、この3人…。

オスカーの出す衝撃波がエリアスとフィリックスの体を傷つける。二人の攻撃がオスカーを血まみれにしていく。辺りはもう地面が削れたり爆発したり無茶苦茶で荒れ狂う3人はただ戦いを続けている。

俺の頭の中にエリアスとフィリックスの優しい笑顔が浮かんだ。何処かから甦る短髪のオスカーの笑顔も。

全部俺の大事な記憶なんだろうな。前世が存在するのは確かだから、きっと俺はオスカーのシンシアだった時もあったんだろうね。

その瞬間、俺は走り出して3人の中に突っ込んでいった。

「シン!ダメだ!」

ラースの声が背中に聞こえる。だけど。

「やめてーーーーっ!」

俺は3人の攻撃のど真ん中に身を踊らせた。


ほとばしる血しぶきと誰かに抱き締められる感覚と。

俺の血じゃない。



綺麗な金髪が顔にかかるのが見える。



「…っ…バカ…!」

エリアスのため息のような囁き。

気づくと俺はエリアスに抱き締められ、地面に押し倒されていた。そしてフィリックスがエリアスの上に覆い被さっていた。そのエリアスの背中を庇うために出したフィリックスの手からポタポタと落ちる血。それが倒れた俺の頬に落ちて一筋流れた。

オスカーが目を見開いたまま信じられない表情で立ち尽くしていた。

『…!シン…!俺はシンシアを斬ろうとしたのか…?まさか…』

呆然とするオスカー。

『…己の身勝手な愛情は刃になる。シンシアまでも見失うとは…。怒りに身を任せてシンシアへの愛がこの竜騎士に劣るなど…』

顔を手で覆い、暫く沈黙するとオスカーがフィリックスに向き直る。腕から流れる血を指で撫でると、傷がみるみる塞がっていく。

「!」
『俺はもともと治癒の魔法の方が得意なんだ…意外かもしれんが…お前らのシンシアへの気持ちに負けたと…今、悟った』

オスカーはそう言うと、悲しげに俺を見つめた。





























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