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伝説のゆくえ

ラース捕獲

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ヘラクレス号に乗ってエリアスとカイザー号で空気をぶち抜く勢いでフィリックスの送ってきた座標の位置まで飛んでいく。
早く行かなきゃ。あのフィリックスが最後には叫んでたラースを呼ぶ声。二人とも大丈夫だろうか、心配で仕方ないんだ。

「穴が存在したままとはな…」
「穴って何の?」
「魔のモンスターが出入りする穴だ…いつもは王国の護りの魔法が有効だから塞がるんだが、開きっぱなしなんて初めてだ。魔法使いどもが押されてるってことか…」
「魔法使い?」
「ああ、騎士は武力で護るだろ、それとは違って魔法で国を護る仕事をしている魔道士ってもんがいる。そいつらの力は大きくてな、国の自然と繋がっていて、魔のモンスターが出現する情報はすべて魔道士から出てるんだ…魔のモンスターが出現しだしてから護国の魔法が弱められてるんだが、そこまで進んでるとは…」

そう言いながらエリアスの眉間が険しくなった。国を護る騎士というのは選び抜かれたエリートだ。その中のピラミッドの頂点にいるのが竜騎士。いつも国の事を考えて、モンスターや国を脅かすものから護ることを第一にしてる、エリアスはそんな人なんだ…。彼の周囲の人種も違うし、超人的な自分の所属している位置に実感がいつまでも湧かない俺は、隣を飛んでいるエリアスとカイザー号を見つめた。

目の前に翼竜のようなモンスターが現れ、それをすり抜けてもっと奥へ行くと。

「いた!オリオン号!」

ものすごいスピードで飛ぶ俺たちに、ゴマ粒のような赤い点が見えた。

炎を吐いてモンスターと戦うオリオン号とフィリックス。そして、俺の目に入ったのは。

地底から伸びる触手のようなものに絡まるラース。俺はヘラクレス号に乗りながらラースとシンクロした。

「来ちゃ駄目だ!シン!」

ラースが俺にそう叫んでる。なんで?

俺とヘラクレス号と、ラースの間に真っ黒なモンスターが立ちふさがった。ドラゴンの形をした、もっと悪魔のような凶悪そうな、それでいて美しいとも思える姿だ。

『やっと…。今度こそ離さん…』

そいつは俺にそう言ったように聞こえた。

は?なに言ってんのこいつ?ヘラクレス号がカパッと口を開けて、閃光と共に熱線を飛ばし、その黒い悪魔のようなドラゴンに命中した。

「!?」

が、ヘラクレス号の攻撃がまるで効いていない。そいつは全くの無傷だった。

『やっとの思いで魂を召還したのに…』

地面から大きな太い蔓のような触手に絡めとられたラースがギチギチと音を立ててもっと縛られていくのを見て、俺は思い切りラースの名を叫んだ。

「ラース!!!!!」

「シ、ン…!」

ラースが苦しげに俺の名前を絞り出す。

「やめろ!ラースを離して!」
『そうはいかん…こんなに愛しているのに、何度も失い、焦がれ、全霊を賭けて魂を召還するたびに竜騎士に邪魔をされてきた』

突然凄まじい雷撃が、その黒いドラゴンに襲いかかる。カイザー号とエリアスが真上から攻撃してきたのだった。カイザー号はラースをかばうように立ち塞がり、その後に疲弊はしているもののオリオン号が飛んできた。

「すまない、ラースを捕らえられてしまった…」

フィリックスが俺に謝る。

「ラースを離せ!さもないと…」

シンクロしてるので俺には聞こえる、カイザー号の低い声。

「そうだ、ラースはお前のものではない!」

オリオン号も黒いドラゴンにそう言った。

『ふっ…!』

オリオン号の敵意剥き出しの言葉に、黒いドラゴンが鼻で笑う。

「お前が「魔」と呼ばれる者か?」

カイザー号に乗ったエリアスが憎々しげに黒いドラゴンに尋ね、黒いドラゴンはギロリとエリアスを睨み付けた。

『魔、などとは人間が勝手に呼んでいるだけだ!竜騎士…!また二人、誕生するとはご苦労なことだ。上はどうしても俺の幸せを邪魔したいらしい…ふっ』

どういうことなのか、少しのみ込めたような気がする。
こいつは、やっぱりラースを欲しがってる。魔が、欲しがる美しいドラゴン、それはやっぱりラースのことだったんだな。古文書の通りだ。

『今度こそ、失いはしない。魂を召還し迎えにいくたびに竜騎士に邪魔をされ、また失うの繰り返し…何度転生を重ねても俺は何度もお前を見つけて召還し、我が手に抱くまで諦めん!そのためなら何でもしよう、ドラゴン族を敵に回しても折れなかった俺の愛を今度は貫いてみせる!』

う、うん…なんか熱いねこの方…。そんな激烈にラースを求めてるのか。ラースといえば最高に嫌っそーな顔をしてますけど。そりゃそうだ、いきなり知らない奴に取っ捕まって縛られた日にゃ憎いしかないよな。

カイザー号がギリギリと歯ぎしりしているのが聞こえた。背中でエリアスが苦い顔をしている。最愛のラースがそんな目に遭ってたらそりゃ怒るよね…。オリオンもヘラクレス号も激おこだ。中でもカイザー号のは顕著にわかる。

「この糞ドラゴンめ!」

カイザー号が黒いドラゴンに吠える。きっと、伝説の竜騎士になったフィリックスにも明瞭に聞こえるだろうな、このカイザーの低いイケメンボイスが。
でも、さすがに愛しのラースが、こんなひどい目に遭ってたらウルトラ級の力で即助けるかな!

「俺の願望を目の前でやらかしくさって!誰の許しを得てラース縛ってんだぁうらやましい!
こんのクソヴォケがぁっっっ!!!!!!」

ドスの効いた怒鳴り声が木霊のように辺りに響き渡る。まあ、地面に大穴が空いてるんだから、余計に響きますね…。

「……カイザーくん…。最低…」

エリアスが背中でぽそっと呟いた。全員がしーん、となる。
ラースは縛られたまんまカイザー号を見て茫然自失状態だ。


カイザー…お前の願望、そういうのだったんだな…。

さすが発情期は理性を失わせるね。






































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