67 / 113
伝説のゆくえ
ラース捕獲
しおりを挟む
ヘラクレス号に乗ってエリアスとカイザー号で空気をぶち抜く勢いでフィリックスの送ってきた座標の位置まで飛んでいく。
早く行かなきゃ。あのフィリックスが最後には叫んでたラースを呼ぶ声。二人とも大丈夫だろうか、心配で仕方ないんだ。
「穴が存在したままとはな…」
「穴って何の?」
「魔のモンスターが出入りする穴だ…いつもは王国の護りの魔法が有効だから塞がるんだが、開きっぱなしなんて初めてだ。魔法使いどもが押されてるってことか…」
「魔法使い?」
「ああ、騎士は武力で護るだろ、それとは違って魔法で国を護る仕事をしている魔道士ってもんがいる。そいつらの力は大きくてな、国の自然と繋がっていて、魔のモンスターが出現する情報はすべて魔道士から出てるんだ…魔のモンスターが出現しだしてから護国の魔法が弱められてるんだが、そこまで進んでるとは…」
そう言いながらエリアスの眉間が険しくなった。国を護る騎士というのは選び抜かれたエリートだ。その中のピラミッドの頂点にいるのが竜騎士。いつも国の事を考えて、モンスターや国を脅かすものから護ることを第一にしてる、エリアスはそんな人なんだ…。彼の周囲の人種も違うし、超人的な自分の所属している位置に実感がいつまでも湧かない俺は、隣を飛んでいるエリアスとカイザー号を見つめた。
目の前に翼竜のようなモンスターが現れ、それをすり抜けてもっと奥へ行くと。
「いた!オリオン号!」
ものすごいスピードで飛ぶ俺たちに、ゴマ粒のような赤い点が見えた。
炎を吐いてモンスターと戦うオリオン号とフィリックス。そして、俺の目に入ったのは。
地底から伸びる触手のようなものに絡まるラース。俺はヘラクレス号に乗りながらラースとシンクロした。
「来ちゃ駄目だ!シン!」
ラースが俺にそう叫んでる。なんで?
俺とヘラクレス号と、ラースの間に真っ黒なモンスターが立ちふさがった。ドラゴンの形をした、もっと悪魔のような凶悪そうな、それでいて美しいとも思える姿だ。
『やっと…。今度こそ離さん…』
そいつは俺にそう言ったように聞こえた。
は?なに言ってんのこいつ?ヘラクレス号がカパッと口を開けて、閃光と共に熱線を飛ばし、その黒い悪魔のようなドラゴンに命中した。
「!?」
が、ヘラクレス号の攻撃がまるで効いていない。そいつは全くの無傷だった。
『やっとの思いで魂を召還したのに…』
地面から大きな太い蔓のような触手に絡めとられたラースがギチギチと音を立ててもっと縛られていくのを見て、俺は思い切りラースの名を叫んだ。
「ラース!!!!!」
「シ、ン…!」
ラースが苦しげに俺の名前を絞り出す。
「やめろ!ラースを離して!」
『そうはいかん…こんなに愛しているのに、何度も失い、焦がれ、全霊を賭けて魂を召還するたびに竜騎士に邪魔をされてきた』
突然凄まじい雷撃が、その黒いドラゴンに襲いかかる。カイザー号とエリアスが真上から攻撃してきたのだった。カイザー号はラースをかばうように立ち塞がり、その後に疲弊はしているもののオリオン号が飛んできた。
「すまない、ラースを捕らえられてしまった…」
フィリックスが俺に謝る。
「ラースを離せ!さもないと…」
シンクロしてるので俺には聞こえる、カイザー号の低い声。
「そうだ、ラースはお前のものではない!」
オリオン号も黒いドラゴンにそう言った。
『ふっ…!』
オリオン号の敵意剥き出しの言葉に、黒いドラゴンが鼻で笑う。
「お前が「魔」と呼ばれる者か?」
カイザー号に乗ったエリアスが憎々しげに黒いドラゴンに尋ね、黒いドラゴンはギロリとエリアスを睨み付けた。
『魔、などとは人間が勝手に呼んでいるだけだ!竜騎士…!また二人、誕生するとはご苦労なことだ。上はどうしても俺の幸せを邪魔したいらしい…ふっ』
どういうことなのか、少しのみ込めたような気がする。
こいつは、やっぱりラースを欲しがってる。魔が、欲しがる美しいドラゴン、それはやっぱりラースのことだったんだな。古文書の通りだ。
『今度こそ、失いはしない。魂を召還し迎えにいくたびに竜騎士に邪魔をされ、また失うの繰り返し…何度転生を重ねても俺は何度もお前を見つけて召還し、我が手に抱くまで諦めん!そのためなら何でもしよう、ドラゴン族を敵に回しても折れなかった俺の愛を今度は貫いてみせる!』
う、うん…なんか熱いねこの方…。そんな激烈にラースを求めてるのか。ラースといえば最高に嫌っそーな顔をしてますけど。そりゃそうだ、いきなり知らない奴に取っ捕まって縛られた日にゃ憎いしかないよな。
カイザー号がギリギリと歯ぎしりしているのが聞こえた。背中でエリアスが苦い顔をしている。最愛のラースがそんな目に遭ってたらそりゃ怒るよね…。オリオンもヘラクレス号も激おこだ。中でもカイザー号のは顕著にわかる。
「この糞ドラゴンめ!」
カイザー号が黒いドラゴンに吠える。きっと、伝説の竜騎士になったフィリックスにも明瞭に聞こえるだろうな、このカイザーの低いイケメンボイスが。
でも、さすがに愛しのラースが、こんなひどい目に遭ってたらウルトラ級の力で即助けるかな!
「俺の願望を目の前でやらかしくさって!誰の許しを得てラース縛ってんだぁうらやましい!
こんのクソヴォケがぁっっっ!!!!!!」
ドスの効いた怒鳴り声が木霊のように辺りに響き渡る。まあ、地面に大穴が空いてるんだから、余計に響きますね…。
「……カイザーくん…。最低…」
エリアスが背中でぽそっと呟いた。全員がしーん、となる。
ラースは縛られたまんまカイザー号を見て茫然自失状態だ。
カイザー…お前の願望、そういうのだったんだな…。
さすが発情期は理性を失わせるね。
早く行かなきゃ。あのフィリックスが最後には叫んでたラースを呼ぶ声。二人とも大丈夫だろうか、心配で仕方ないんだ。
「穴が存在したままとはな…」
「穴って何の?」
「魔のモンスターが出入りする穴だ…いつもは王国の護りの魔法が有効だから塞がるんだが、開きっぱなしなんて初めてだ。魔法使いどもが押されてるってことか…」
「魔法使い?」
「ああ、騎士は武力で護るだろ、それとは違って魔法で国を護る仕事をしている魔道士ってもんがいる。そいつらの力は大きくてな、国の自然と繋がっていて、魔のモンスターが出現する情報はすべて魔道士から出てるんだ…魔のモンスターが出現しだしてから護国の魔法が弱められてるんだが、そこまで進んでるとは…」
そう言いながらエリアスの眉間が険しくなった。国を護る騎士というのは選び抜かれたエリートだ。その中のピラミッドの頂点にいるのが竜騎士。いつも国の事を考えて、モンスターや国を脅かすものから護ることを第一にしてる、エリアスはそんな人なんだ…。彼の周囲の人種も違うし、超人的な自分の所属している位置に実感がいつまでも湧かない俺は、隣を飛んでいるエリアスとカイザー号を見つめた。
目の前に翼竜のようなモンスターが現れ、それをすり抜けてもっと奥へ行くと。
「いた!オリオン号!」
ものすごいスピードで飛ぶ俺たちに、ゴマ粒のような赤い点が見えた。
炎を吐いてモンスターと戦うオリオン号とフィリックス。そして、俺の目に入ったのは。
地底から伸びる触手のようなものに絡まるラース。俺はヘラクレス号に乗りながらラースとシンクロした。
「来ちゃ駄目だ!シン!」
ラースが俺にそう叫んでる。なんで?
俺とヘラクレス号と、ラースの間に真っ黒なモンスターが立ちふさがった。ドラゴンの形をした、もっと悪魔のような凶悪そうな、それでいて美しいとも思える姿だ。
『やっと…。今度こそ離さん…』
そいつは俺にそう言ったように聞こえた。
は?なに言ってんのこいつ?ヘラクレス号がカパッと口を開けて、閃光と共に熱線を飛ばし、その黒い悪魔のようなドラゴンに命中した。
「!?」
が、ヘラクレス号の攻撃がまるで効いていない。そいつは全くの無傷だった。
『やっとの思いで魂を召還したのに…』
地面から大きな太い蔓のような触手に絡めとられたラースがギチギチと音を立ててもっと縛られていくのを見て、俺は思い切りラースの名を叫んだ。
「ラース!!!!!」
「シ、ン…!」
ラースが苦しげに俺の名前を絞り出す。
「やめろ!ラースを離して!」
『そうはいかん…こんなに愛しているのに、何度も失い、焦がれ、全霊を賭けて魂を召還するたびに竜騎士に邪魔をされてきた』
突然凄まじい雷撃が、その黒いドラゴンに襲いかかる。カイザー号とエリアスが真上から攻撃してきたのだった。カイザー号はラースをかばうように立ち塞がり、その後に疲弊はしているもののオリオン号が飛んできた。
「すまない、ラースを捕らえられてしまった…」
フィリックスが俺に謝る。
「ラースを離せ!さもないと…」
シンクロしてるので俺には聞こえる、カイザー号の低い声。
「そうだ、ラースはお前のものではない!」
オリオン号も黒いドラゴンにそう言った。
『ふっ…!』
オリオン号の敵意剥き出しの言葉に、黒いドラゴンが鼻で笑う。
「お前が「魔」と呼ばれる者か?」
カイザー号に乗ったエリアスが憎々しげに黒いドラゴンに尋ね、黒いドラゴンはギロリとエリアスを睨み付けた。
『魔、などとは人間が勝手に呼んでいるだけだ!竜騎士…!また二人、誕生するとはご苦労なことだ。上はどうしても俺の幸せを邪魔したいらしい…ふっ』
どういうことなのか、少しのみ込めたような気がする。
こいつは、やっぱりラースを欲しがってる。魔が、欲しがる美しいドラゴン、それはやっぱりラースのことだったんだな。古文書の通りだ。
『今度こそ、失いはしない。魂を召還し迎えにいくたびに竜騎士に邪魔をされ、また失うの繰り返し…何度転生を重ねても俺は何度もお前を見つけて召還し、我が手に抱くまで諦めん!そのためなら何でもしよう、ドラゴン族を敵に回しても折れなかった俺の愛を今度は貫いてみせる!』
う、うん…なんか熱いねこの方…。そんな激烈にラースを求めてるのか。ラースといえば最高に嫌っそーな顔をしてますけど。そりゃそうだ、いきなり知らない奴に取っ捕まって縛られた日にゃ憎いしかないよな。
カイザー号がギリギリと歯ぎしりしているのが聞こえた。背中でエリアスが苦い顔をしている。最愛のラースがそんな目に遭ってたらそりゃ怒るよね…。オリオンもヘラクレス号も激おこだ。中でもカイザー号のは顕著にわかる。
「この糞ドラゴンめ!」
カイザー号が黒いドラゴンに吠える。きっと、伝説の竜騎士になったフィリックスにも明瞭に聞こえるだろうな、このカイザーの低いイケメンボイスが。
でも、さすがに愛しのラースが、こんなひどい目に遭ってたらウルトラ級の力で即助けるかな!
「俺の願望を目の前でやらかしくさって!誰の許しを得てラース縛ってんだぁうらやましい!
こんのクソヴォケがぁっっっ!!!!!!」
ドスの効いた怒鳴り声が木霊のように辺りに響き渡る。まあ、地面に大穴が空いてるんだから、余計に響きますね…。
「……カイザーくん…。最低…」
エリアスが背中でぽそっと呟いた。全員がしーん、となる。
ラースは縛られたまんまカイザー号を見て茫然自失状態だ。
カイザー…お前の願望、そういうのだったんだな…。
さすが発情期は理性を失わせるね。
32
お気に入りに追加
4,205
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる