58 / 113
竜騎士になったよ
家出計画
しおりを挟む
「おい、シン?」
エリアスが俺を呼び、ハッとなって我に返る。今は訓練の途中で、ボーっとしちゃいけないのに。
「どうした?体調でも悪いのか?」
俺は首を振ってパンパンと自らの両頬を軽く叩いた。ラースが不安そうに俺を見つめる。
ラースには事情を伝えてあるんだ。
ーーーー
昨日の話。
「シン…僕ら、ここにいちゃいけないのかな…」
二人で空を飛びながらシンクロをして話した。
「ラースはどう思うの?カイザー号やオリオン号はラースにとっても大切なドラゴンだろ?」
「うん…なんでシンはここに居たいって言っちゃいけないの?」
「俺は伝説の竜騎士として王宮に呼ばれたんだよ。なのに、伝説じゃなかったらただの詐欺師じゃん。みんな伝説の竜騎士じゃない俺には用はないって。がっかりするよ」
「そうかなあ…?シンはシンだよ」
「ラースは優しいね。大好き」
「当たり前じゃん!僕はシンが一番大切なんだから!怒るよ!」
「うん…ねえ、ちょっと泣いていいかな?」
そう言う俺の声が震えていて、ラースはそれきり黙って高度を上げた。きれいな星空が悲しくて寂しくて。ラースは誰もいない、お気に入りの崖の上へ俺を連れて行ってくれた。
「このまま、どこかに行く?僕はシンさえ一緒にいてくれたらどこでも生きていくよ」
「ラース…」
俺は濡れた瞳でラースを見た。
「元々二人だけだったじゃないか。そりゃ、カイザー号もオリオン号も、ヘラクレス号も好きだけど…は、離れたくない…けど…」
ラースの声が震えだす。大きな蒼い瞳から涙がひとつこぼれる。ドラゴンは基本、涙は出ない。ラースの涙腺、どうなってんだ…と思いながらも二人で泣いた。
「僕だって…伝説のドラゴンじゃないもん…」
ラースがそう言ったとき、ピアスからガラが話しかけてきた。
『シン、俺はお前と共にするぞ。お前のキスは何より甘い』
ガラ、それ不純だけど嬉しいよ。俺の胸で魔剣ルーカス号も鈍く光る。
「みんな、シンが大好きなんだよ。いこう」
ラースがそう言いながら俺の涙をなめてくれる。伝説じゃないけど、伝説のドラゴンが二匹もついてくれてる俺は幸せだね。ラース、弱いマスターでごめん。
どこへいこうかな?とりあえず辺境の村に戻って、そこから旅に出るのもいいな。ラースを連れて、外国で勇者になるとか、それもいいかも。
その時、真上からまっ逆さまに急激に降りてくるものがあつた。
ドゴォン!と地面にめり込むほどの早さで着陸したのは。
ヘラクレス号だった。
ここ、崖な…崩れるとこだったよ。
「俺もシンと行く…置いていくな」
ヘラクレス号は真剣な表情で俺にそう言った。彼は普段ほとんど喋らない。俺達の何かを察知したのか、追いかけて飛んで来たんだな。
「ヘラクレス号…」
「シンがどこかに行ってしまうような気がしたんだ。何で俺を置いていくの?ベンがいなくなった時みたいに、俺をまた一人にするのか?」
ヘラクレス号が泣きそうだ。何でバレたんだろ…。そうだ、ヘラクレス号の気持ちも考えず、また傷つけてしまうところだった。そうなったらもう、彼は二度と人間に心を開かないだろう。
それに、ヘラクレス号を連れていくことは不可能だ。巨大な体が目立って仕方がない。能力も、普通の人間と混じって暮らすことはできない。
待てよ?ちょっとシミュレーション…。
冷凍光線を使えるラースと魔剣ルーカス号の能力で俺は氷屋さんで稼げそうだな…。ガラの力で魔力はあるから占い師にもなれるかもしれない。ヘラクレス号で火を売る仕事…焼き畑?いや、そこらへんが焦土と化す…。山焼き…いや、山脈が焦土と化す…。無理だ…。
俺はバカだなあ。一人よがりで誰のことも考えてない。わがままなダメダメマスターだ。
俺には4匹のドラゴンがついてくれている。なのに、一人になった気になって体裁を繕うことばかりだ。
「みんな、助けて…俺はどうしたらいいの?」
ボロボロと情けなく泣きながら俺はドラゴン4匹に尋ねる。我ながら情けないけど。
『うーん…正直に話すしかなかろう』
ガラがそう言った。ラースもヘラクレス号もうんうんと頷く。
そうだよな…それが一番いいか…。
ーーーーー
いつ、エリアス達に本当の事を言おうかとタイミングをはかってるけれども、なかなか言えない。最近またモンスター出現が増えていて、エリアスもフィリックスも身が休まらないのだ。俺も戦闘に行くことが増えた。
「大丈夫…ごめん」
「そうか。昼からは休みだ、ゆっくりできるな…後で俺の部屋に来てくれ、見せたいものがある」
エリアスが俺にそう言った。なんだろう?
本格的にモンスターが増えて、王宮で俺を見る目も厳しくなってきた。陛下のお気に入りフィルターがかかっているので直接手を下されることはないけれど気にはしておかないといけない。
訓練が終わり、俺は言われた通りエリアスの部屋へ向かった。
話というのは。
ある古文書をエリアスが手にいれたという。
それは、竜騎士が過去に二人現れた時代のものだった。
エリアスが俺を呼び、ハッとなって我に返る。今は訓練の途中で、ボーっとしちゃいけないのに。
「どうした?体調でも悪いのか?」
俺は首を振ってパンパンと自らの両頬を軽く叩いた。ラースが不安そうに俺を見つめる。
ラースには事情を伝えてあるんだ。
ーーーー
昨日の話。
「シン…僕ら、ここにいちゃいけないのかな…」
二人で空を飛びながらシンクロをして話した。
「ラースはどう思うの?カイザー号やオリオン号はラースにとっても大切なドラゴンだろ?」
「うん…なんでシンはここに居たいって言っちゃいけないの?」
「俺は伝説の竜騎士として王宮に呼ばれたんだよ。なのに、伝説じゃなかったらただの詐欺師じゃん。みんな伝説の竜騎士じゃない俺には用はないって。がっかりするよ」
「そうかなあ…?シンはシンだよ」
「ラースは優しいね。大好き」
「当たり前じゃん!僕はシンが一番大切なんだから!怒るよ!」
「うん…ねえ、ちょっと泣いていいかな?」
そう言う俺の声が震えていて、ラースはそれきり黙って高度を上げた。きれいな星空が悲しくて寂しくて。ラースは誰もいない、お気に入りの崖の上へ俺を連れて行ってくれた。
「このまま、どこかに行く?僕はシンさえ一緒にいてくれたらどこでも生きていくよ」
「ラース…」
俺は濡れた瞳でラースを見た。
「元々二人だけだったじゃないか。そりゃ、カイザー号もオリオン号も、ヘラクレス号も好きだけど…は、離れたくない…けど…」
ラースの声が震えだす。大きな蒼い瞳から涙がひとつこぼれる。ドラゴンは基本、涙は出ない。ラースの涙腺、どうなってんだ…と思いながらも二人で泣いた。
「僕だって…伝説のドラゴンじゃないもん…」
ラースがそう言ったとき、ピアスからガラが話しかけてきた。
『シン、俺はお前と共にするぞ。お前のキスは何より甘い』
ガラ、それ不純だけど嬉しいよ。俺の胸で魔剣ルーカス号も鈍く光る。
「みんな、シンが大好きなんだよ。いこう」
ラースがそう言いながら俺の涙をなめてくれる。伝説じゃないけど、伝説のドラゴンが二匹もついてくれてる俺は幸せだね。ラース、弱いマスターでごめん。
どこへいこうかな?とりあえず辺境の村に戻って、そこから旅に出るのもいいな。ラースを連れて、外国で勇者になるとか、それもいいかも。
その時、真上からまっ逆さまに急激に降りてくるものがあつた。
ドゴォン!と地面にめり込むほどの早さで着陸したのは。
ヘラクレス号だった。
ここ、崖な…崩れるとこだったよ。
「俺もシンと行く…置いていくな」
ヘラクレス号は真剣な表情で俺にそう言った。彼は普段ほとんど喋らない。俺達の何かを察知したのか、追いかけて飛んで来たんだな。
「ヘラクレス号…」
「シンがどこかに行ってしまうような気がしたんだ。何で俺を置いていくの?ベンがいなくなった時みたいに、俺をまた一人にするのか?」
ヘラクレス号が泣きそうだ。何でバレたんだろ…。そうだ、ヘラクレス号の気持ちも考えず、また傷つけてしまうところだった。そうなったらもう、彼は二度と人間に心を開かないだろう。
それに、ヘラクレス号を連れていくことは不可能だ。巨大な体が目立って仕方がない。能力も、普通の人間と混じって暮らすことはできない。
待てよ?ちょっとシミュレーション…。
冷凍光線を使えるラースと魔剣ルーカス号の能力で俺は氷屋さんで稼げそうだな…。ガラの力で魔力はあるから占い師にもなれるかもしれない。ヘラクレス号で火を売る仕事…焼き畑?いや、そこらへんが焦土と化す…。山焼き…いや、山脈が焦土と化す…。無理だ…。
俺はバカだなあ。一人よがりで誰のことも考えてない。わがままなダメダメマスターだ。
俺には4匹のドラゴンがついてくれている。なのに、一人になった気になって体裁を繕うことばかりだ。
「みんな、助けて…俺はどうしたらいいの?」
ボロボロと情けなく泣きながら俺はドラゴン4匹に尋ねる。我ながら情けないけど。
『うーん…正直に話すしかなかろう』
ガラがそう言った。ラースもヘラクレス号もうんうんと頷く。
そうだよな…それが一番いいか…。
ーーーーー
いつ、エリアス達に本当の事を言おうかとタイミングをはかってるけれども、なかなか言えない。最近またモンスター出現が増えていて、エリアスもフィリックスも身が休まらないのだ。俺も戦闘に行くことが増えた。
「大丈夫…ごめん」
「そうか。昼からは休みだ、ゆっくりできるな…後で俺の部屋に来てくれ、見せたいものがある」
エリアスが俺にそう言った。なんだろう?
本格的にモンスターが増えて、王宮で俺を見る目も厳しくなってきた。陛下のお気に入りフィルターがかかっているので直接手を下されることはないけれど気にはしておかないといけない。
訓練が終わり、俺は言われた通りエリアスの部屋へ向かった。
話というのは。
ある古文書をエリアスが手にいれたという。
それは、竜騎士が過去に二人現れた時代のものだった。
33
お気に入りに追加
4,205
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる