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竜騎士になったよ
不安だらけの俺
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オリオン号が伝説のドラゴンだと言うことは、フィリックスが伝説の竜騎士ということになる。
でも、本人からはそのような話を全く聞いたことがない。
空にゴマ粒のような黒い点が見えたかと思うとそれはだんだん大きくなり、カイザー号だと目視ができた。…よかった、俺を見つけてくれた!俺はとにかく嬉しくなって胸が締め付けられるほどに、涙腺が決壊しそうになるのをぐっとこらえた。
「伝説の竜騎士様のご登場…か」
「えっ、エリアスを知ってるの?」
俺が驚いてダリウスを見ると、彼はにっこり笑ってエリアスを見上げた。
「シン!」
着地してから翼を数回振り、カイザー号がラースに一直線かと思いきや、オリオン号のそばへ行き、鼻で数回オリオンの頬をつつくように撫で、オリオン号はくすぐったそうな表情でカイザー号を見ている。
ドラゴンの友情見ちゃった…ライバルでいて、仲良しなんだな。カイザー号はそのあとすぐラースを愛おしげに抱っこする。
「ダリウス?!」
エリアスがものすごく驚いてダリウスを見ると、彼は照れたように笑って手を上げる。
「久しぶりだなエリアス。元気そうでよかった」
「ああ…シン、何があった?」
エリアスが俺を心配そうに見つめながら問いかけた。
「この赤いドラゴンがひどい怪我をしてるのを見つけた。通りがかかった俺が治しといた」
代わりにダリウスがさくさく答えてくれたので俺は何も説明することはなく、頷くだけだった。エリアスはオリオン号の傷を確認するとダリウスのほうを向き直った。
「それは礼をいわなければ…」
「じゃあ、礼はシンから貰おうかな」
突然くるっと俺の方を向いたダリウスが近づいてきて、顎をと持ち上げられるや否や、俺の唇にダリウスの唇が触れる。ちゅっ、とリップ音を立ててすぐに離れたと思ったらまたもう一度キスをされ、俺は驚いて瞬きするのを忘れるくらいだった。
えっ、何?
エリアスが即時に反応してダリウスから俺を奪うように引き寄せた。
「…だろうな、お前の顔を見てそう思った。初めて見た、エリアスが誰かを好きになるなんてな」
ダリウスがエリアスをからかうように言う。
「やめろ…。シンに手を出すのは許さない」
ギリギリとエリアスがダリウスを睨み、胸にぎゅっと押し付けられた俺は何だか胸がいっぱいになってしまった。
「ほう…やっぱり。伝説の竜騎士同士はやっぱり運命を感じるかエリアス。こんな美しい子と運命を共にするなど羨ましいな」
「助けてくれたことは礼を言う。でも、伝説は関係ない、シンは俺の大切な人だ」
「言うね、…手放すなよ。こんな可愛い子、狙うやつがたくさんいるだろ」
「言われなくても手放さない!俺の!」
エリアスがよりぎゅっと俺を抱き締めて髪に何度もキスを落とす。俺はエリアスの服を握りしめ、胸に顔を埋めた。
「…シン?」
俺の異変に気づいたエリアスが、顎に手をかけて顔をあげさせる。エリアスの美しい顔が不安に満ちていた。
俺はさっきからずっとボロボロと涙を落として肩を震わせてしまっていた。
「こ…わかった…!オリオン号が死ぬ…かと思った…!何もできないのが悔しい…俺、みんなに迷惑ばっかりかけてるっ…ぐすっ…!」
「大丈夫、もう大丈夫だから…」
エリアスが俺の背中を撫でてくれる。安心しきってしまってそのまましがみついてしまって、離れられなくなった。
「まあ、もう大丈夫だろ…俺はもう行く。モンスターが増えてるぞ、気を付けろ…。でも、元気そうでよかった…エリアス」
ダリウスが俺の頭をポンポンと撫でて立ち去ろうとした。
「ああ…母さんによろしく伝えてくれ」
「ん。伝えとく」
ん?母さんによろしく?
俺はエリアスとダリウスの二人を交互に見た。それに気づいたエリアスが頬を撫でて俺の涙を親指で拭いながら笑う。
「ああ、これ兄貴」
はっ?
「これって言うな。クソ弟め…シン、またな」
ダリウスが苦笑いをしながら俺に手を振った。
兄弟だったんだ!?
そして、ダリウスは繁みに消えて行った。サラッとした兄弟だな…俺は一人っ子なので、気持ちがよくわからなくてただエリアスを見つめる。
すると、俺をぎゅっと抱いたまま、エリアスは大きな木の裏に連れて行き、ドラゴンからは俺たちの姿は見えなくなる。
裏に着くや否や、エリアスが俺の唇を食むように被さってきた。いきなりの熱い、激しいキスに戸惑いながらも俺はエリアスの背中に手を廻して応じていく。やっと安心しきった俺は、エリアスのキスにかなり深く心を揺さぶられた。俺を探して、触れあうエリアスの舌が優しくて、気持ちよくて背中にぞくぞくと快感が走る。
体が熱い。
胸の奥が締め付けられて、キスの合間に唇から漏れるエリアスの吐息が心にじんじんと響いていく。
「シン…不安にさせてごめん…」
「もう…来てくれたじゃん…。エリアス…」
「…っ…。ん…?」
エリアスが唇から離れて俺を見つめようとする。でも俺は。
「や…っ。もっと、キス…」
かすれかけた声で吐息混じりに絞り出すようにねだってしまった。
「シン…」
そんな俺に耐えきれないかようにエリアスが目を細め、俺の名前を囁くように呼びながらまた唇を重ねてくれる。
すると、ためらうようにエリアスが俺の背中を撫で、しばらく迷ってるような感じだったけれども、腰に廻した手が俺のマントの中に入り、シャツをたくしあげながら素肌を探してたどり着く。エリアスの指に直接触れられた瞬間、俺の唇から長い息が自然に漏れ、吸い込む息さえなまめかしくわななく。
「は…。あ、ぁっ…」
俺の声に熱い息を吐き、エリアスが俺の耳元で甘く囁いた。
「好きだ…シン」
まるで雫が水面に波紋を広げていくように、俺の心の中でエリアスの声が広がった。
でも、本人からはそのような話を全く聞いたことがない。
空にゴマ粒のような黒い点が見えたかと思うとそれはだんだん大きくなり、カイザー号だと目視ができた。…よかった、俺を見つけてくれた!俺はとにかく嬉しくなって胸が締め付けられるほどに、涙腺が決壊しそうになるのをぐっとこらえた。
「伝説の竜騎士様のご登場…か」
「えっ、エリアスを知ってるの?」
俺が驚いてダリウスを見ると、彼はにっこり笑ってエリアスを見上げた。
「シン!」
着地してから翼を数回振り、カイザー号がラースに一直線かと思いきや、オリオン号のそばへ行き、鼻で数回オリオンの頬をつつくように撫で、オリオン号はくすぐったそうな表情でカイザー号を見ている。
ドラゴンの友情見ちゃった…ライバルでいて、仲良しなんだな。カイザー号はそのあとすぐラースを愛おしげに抱っこする。
「ダリウス?!」
エリアスがものすごく驚いてダリウスを見ると、彼は照れたように笑って手を上げる。
「久しぶりだなエリアス。元気そうでよかった」
「ああ…シン、何があった?」
エリアスが俺を心配そうに見つめながら問いかけた。
「この赤いドラゴンがひどい怪我をしてるのを見つけた。通りがかかった俺が治しといた」
代わりにダリウスがさくさく答えてくれたので俺は何も説明することはなく、頷くだけだった。エリアスはオリオン号の傷を確認するとダリウスのほうを向き直った。
「それは礼をいわなければ…」
「じゃあ、礼はシンから貰おうかな」
突然くるっと俺の方を向いたダリウスが近づいてきて、顎をと持ち上げられるや否や、俺の唇にダリウスの唇が触れる。ちゅっ、とリップ音を立ててすぐに離れたと思ったらまたもう一度キスをされ、俺は驚いて瞬きするのを忘れるくらいだった。
えっ、何?
エリアスが即時に反応してダリウスから俺を奪うように引き寄せた。
「…だろうな、お前の顔を見てそう思った。初めて見た、エリアスが誰かを好きになるなんてな」
ダリウスがエリアスをからかうように言う。
「やめろ…。シンに手を出すのは許さない」
ギリギリとエリアスがダリウスを睨み、胸にぎゅっと押し付けられた俺は何だか胸がいっぱいになってしまった。
「ほう…やっぱり。伝説の竜騎士同士はやっぱり運命を感じるかエリアス。こんな美しい子と運命を共にするなど羨ましいな」
「助けてくれたことは礼を言う。でも、伝説は関係ない、シンは俺の大切な人だ」
「言うね、…手放すなよ。こんな可愛い子、狙うやつがたくさんいるだろ」
「言われなくても手放さない!俺の!」
エリアスがよりぎゅっと俺を抱き締めて髪に何度もキスを落とす。俺はエリアスの服を握りしめ、胸に顔を埋めた。
「…シン?」
俺の異変に気づいたエリアスが、顎に手をかけて顔をあげさせる。エリアスの美しい顔が不安に満ちていた。
俺はさっきからずっとボロボロと涙を落として肩を震わせてしまっていた。
「こ…わかった…!オリオン号が死ぬ…かと思った…!何もできないのが悔しい…俺、みんなに迷惑ばっかりかけてるっ…ぐすっ…!」
「大丈夫、もう大丈夫だから…」
エリアスが俺の背中を撫でてくれる。安心しきってしまってそのまましがみついてしまって、離れられなくなった。
「まあ、もう大丈夫だろ…俺はもう行く。モンスターが増えてるぞ、気を付けろ…。でも、元気そうでよかった…エリアス」
ダリウスが俺の頭をポンポンと撫でて立ち去ろうとした。
「ああ…母さんによろしく伝えてくれ」
「ん。伝えとく」
ん?母さんによろしく?
俺はエリアスとダリウスの二人を交互に見た。それに気づいたエリアスが頬を撫でて俺の涙を親指で拭いながら笑う。
「ああ、これ兄貴」
はっ?
「これって言うな。クソ弟め…シン、またな」
ダリウスが苦笑いをしながら俺に手を振った。
兄弟だったんだ!?
そして、ダリウスは繁みに消えて行った。サラッとした兄弟だな…俺は一人っ子なので、気持ちがよくわからなくてただエリアスを見つめる。
すると、俺をぎゅっと抱いたまま、エリアスは大きな木の裏に連れて行き、ドラゴンからは俺たちの姿は見えなくなる。
裏に着くや否や、エリアスが俺の唇を食むように被さってきた。いきなりの熱い、激しいキスに戸惑いながらも俺はエリアスの背中に手を廻して応じていく。やっと安心しきった俺は、エリアスのキスにかなり深く心を揺さぶられた。俺を探して、触れあうエリアスの舌が優しくて、気持ちよくて背中にぞくぞくと快感が走る。
体が熱い。
胸の奥が締め付けられて、キスの合間に唇から漏れるエリアスの吐息が心にじんじんと響いていく。
「シン…不安にさせてごめん…」
「もう…来てくれたじゃん…。エリアス…」
「…っ…。ん…?」
エリアスが唇から離れて俺を見つめようとする。でも俺は。
「や…っ。もっと、キス…」
かすれかけた声で吐息混じりに絞り出すようにねだってしまった。
「シン…」
そんな俺に耐えきれないかようにエリアスが目を細め、俺の名前を囁くように呼びながらまた唇を重ねてくれる。
すると、ためらうようにエリアスが俺の背中を撫で、しばらく迷ってるような感じだったけれども、腰に廻した手が俺のマントの中に入り、シャツをたくしあげながら素肌を探してたどり着く。エリアスの指に直接触れられた瞬間、俺の唇から長い息が自然に漏れ、吸い込む息さえなまめかしくわななく。
「は…。あ、ぁっ…」
俺の声に熱い息を吐き、エリアスが俺の耳元で甘く囁いた。
「好きだ…シン」
まるで雫が水面に波紋を広げていくように、俺の心の中でエリアスの声が広がった。
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