異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ

文字の大きさ
上 下
6 / 113
竜騎士になったよ

フィリックスとの

しおりを挟む
部屋中に香ばしい美味しそうな匂いがしている。

フィリックスが竜騎士の携帯食料を用意してくれた。特上の肉のシチュー、さすが王宮の竜騎士は持ってるものが違うのだな。

「美味そうだな」

フィリックスが俺の作ったポテトグラタンを見て感嘆の声を上げた。イモだけはふんだんにあるし、ヤギのミルクで作ったベシャメルソースも、とっておきのチーズもふんだんに使った。頑張っちゃったよ俺。

「明日からここでは料理できないし、オーブンもキッチンもしっかり使ってやりたかったんだ…」

長老やジジイと作った俺の城。あとでピカピカにしてやろうと思ってしんみりしていたら、

「後で一緒に片付けと掃除をしよう。俺はここの主を連れ去るんだ、この部屋への挨拶がわりにピカピカにしてやるよ」

まさしく今思っていた事をフィリックスが言ってくれて、俺の目の前が滲んだ。

「シン、早く食わせてくれよ、腹へった」
「ああ、そうだった」

俺は小さなテーブルにグラタンを置いて取り分ける。

「あ、先に食べといて」
「シン?」

俺は席を立つと寝室へ繋がるドアを開けた。両開きの大きなドアをわざと作ってある。

寝室の半分はある超特大のベッド。そこにはラースが横たわっていた。

「…ラース?何故、部屋に…?」

フィリックスが怪訝な表情になる。

「え?ラースと俺は一緒に寝てるんだよ。ラース、ごはんだよ」

俺はキッチンから大きな桶を持ってきた。中には野菜とマッシュしたポテト、もうひとつ作っておいた大きなグラタンが入っている。それをラースの前に置くと嬉しそうに食べる。

「いつもラースと一緒なのか?」
「うん。ずーっと24時間一緒だよ…変?」

フィリックスは俺達を見て、少し考え込んだ。

「変ではない…ただ、王宮でそれができるかどうかはわからないぞ…」
「え、やだ!ラースと一緒じゃないと無理!なあ、俺とラースを離さないで」

うーん、とフィリックスは腕を組んでため息をつく。

「一応、竜騎士団長に話をしてやるよ…だが百%通るかどうかはわからないからそれは承知してくれ」
「ありがと!」

3人で楽しく夕食を取り、風呂にも入って寝るだけとなる。フィリックスは料理が上手だってすっごく褒めてくれて嬉しくなる。

「ラース、いこう」
「シン?」

俺がラースを連れて外へ出ようとすると、フィリックスが不審げに尋ねる。

「俺は外でラースと寝るよ。フィリックスは俺のベッドで寝て」
「ちょっ…そんな事ができるわけないだろう!」
「え?お客様なんだからいいよ」

俺がそう言うと、フィリックスが俺の方へつかつかと近づいていきなり俺を抱き上げた。

「えっ!?えっ?」
「いいから!ラース、お前も来い」

フィリックスは俺を抱いたまま寝室へ入り、俺をベッドへ降ろすと自身も隣に寝転がった。

「こんなに広いベッドなんだから皆で寝ればいい、そもそもお前のだ。好意は有難いが俺がここに来た意味がないだろ?」

フィリックスが微笑みながらうつ伏せになって俺を見上げるようにシーツに頬をつけた。ラースも俺の横で寝転がって川の字になる。

「ここに来た意味…?」

俺は10センチ程の至近距離にいるフィリックスの顔を見て尋ねる。

フィリックスが少し頭を上げ、ゆっくり俺の鼻に近づいてきた。



そして。



俺の唇に、そっとフィリックスの唇が重なる。


「ーーーーー!…」

え、これってキ、ス?ええっ!男同士なのに!

柔らかいフィリックスの唇。なんかいい匂いもするし、あぁ、クラクラしてきた…。


ビックリして固まる俺に、キスをしたフィリックスはふっ、と微笑む。

「もっとシンと仲良くなりたいってこと」
「な…フィリ…!」

言いかけた俺の唇を優しく人差し指でなぞる。

「…シンが可愛いから仕方ないだろ」

そう囁いたあと、数秒見つめあって甘い時間が過ぎる。男同士なのに、ドキドキが止まらない。

ふと、フィリックスの眉間が険しくなった。俺の頭の辺りを微笑んだまま見て、固まっている。

「…え?なに?後ろがどうしーーー」

俺が後ろを振り向くと、そこには俺の肩越しに横になったゼロ距離のラースが瞬きもせず、大きな蒼い目でフィリックスをガン見していた。

「…………保護者怖ぇ…」

フィリックスが目を泳がせて言った。




明日はついに王宮へと出発する。

俺の新しい生活が始まるんだ。不安だけど、ラースが一緒だからきっと大丈夫。























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

処理中です...