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しおりを挟む目を開ける と白が見えた。
しばらくしてそれが天井であることに気づいた俺は、辺りを見回そうとしたけれど、首が動かない。ここがどこで、どういった部屋なのか全然わからなくて、ぼんやりした頭で瞬きを数回。えっと、確か、今日は……大学は休みだったので友達と遊んでカラオケに行っていたと思う。そういえば、その後に寄った公園ではしゃぎすぎて階段から落ちてしまった?気がする。なら、ここは病院なのだろうか。
「初めまして、セアラ」
突然、知らない声が聞こえてきて、体がびくりと跳ね上がった。
首が動いたので俺は声のするほうを見た。メガネをかけた白衣姿の知らない男が微笑んでいる。年は30代前半くらいだろうか。そして、ここは手術室か処置室なのか彼の背後に薬や器材がたくさん見えた。
ふと、肌寒くて少し震えた。麻酔をかけられていたのか体の感覚が戻ってきたのかな?どこを手術したのだろうかと思い、自分の腹を見ると。あれ?裸だぞ……。
どおりで寒いはずだった。勢いよく起き上がろうとしたけれど、まだ体に力が入らなくて、気合だけが入って空回り。
「ああ、まだ体をそんなに動かせないはずだから。魂が体に馴染むまでもう少し待ってな」
男がそう言って手を伸ばして俺の頬を撫でた。
今、なんて?彼に言われた言葉の意味が全くわからなくてもどかしくなる。ただでさえ頭が混乱しているのに、だんだん腹が立ってきて彼を睨んだ。でも、男は全く意に介さず話を続ける。
「そうだなあ、平たく言うと、僕がその作りたての体に、異世界から見つけた君のさまよう魂をはめ込んだってところかな」
待って、説明が全然平たくない。ほぼ理解不能だ。とにかく、落ち着いて俺に起こっている事実だけを受け止めようか。
「君のいた世界ではファンタジーや空想の話かもしれないが、ここは異世界。まあここから見れば君のいた世界が異世界なんだけどね、えっと、僕の職業は魔導士、魔法使いだよ。僕はね、だいたいの物は作ることができる。で、君のその体は僕が作って、君の魂を入れたというわけ。はいここまでは理解?」
理解無理。魔法使い。魂。入れ物。異世界。必死で頭の中にこのワードを繋いでみたけれど。信じようがないのだ。
この男が言うには、俺は死んだか何かで魂だけになり、何故かこの異世界に来て、この男の作った身体に入れられた、と。
そして彼に処置されている間に首や体が元通りに動かせるようになった。
「あのー、トイレにいきたいんですけど」
そう言うと、彼が優しく手を引いて連れて行ってくれた。足が痺れていて、生まれたての子鹿のような震える足取りで一歩一歩床を踏みしめながら、ふと見ると、壁にかかった鏡に自分の姿らしきものが映った。
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