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本編
新婚旅行で最終回
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前代未聞の親子W結婚式が滞りなく終わった。きっと歴史的に語り継がれるイベントだった、と誰かが言っていたけれど、、自分の幸せより、誰かの幸せを見られてよかったなぁというのが本音だ。
それに、俺の隣にはベンがいてくれる。薄幸な人生でしかなかった俺を救いだしてくれた。確かに俺の事は外交官から口には出ていたのだろうけど、迎えにきてくれたのは幸せより他に表す言葉がない。
ベンは王位継承第一位になった。
ヴォルフはB国の国王補佐官と国王クレオンの後ろ楯として保護者に任命された。B国は自立できるまではガルデスフィールの属国になるという。
俺はというと。
各地をバイオリンで演奏してまわって、音楽家として活動を始めた。
王宮の楽器は全て俺の管轄になり、楽団を作ってもらってしまったのだ。収益は教育や寄付に回す。これも大事なお仕事だ。
俺は前世での夢を実現できた。
昔、俺は貧乏で安物のバイオリンだけを頼りにやってきた。音楽家として、演奏家としてそこそこやってこれたかもしれないけれど、やり残したことや叶わなかった夢ははたくさんあったんだ。
この世界では、音楽はブルジョアだけに与えられるという贅沢物の現状を変えたかった。楽器を大量生産し、施設や学校に普及させたいと言うと、ベンはすぐに行動に移してくれた。
そんなことは極一部だけれど、あれからベンは持ち前の頭脳と行動力を発揮し、彼の人気はどんどん上がっていく。
王位継承第一位になることで文句を言う人はいなくなっていった。
さすが俺のベン。
陛下とシュワルツは外遊に行ってしまった。たぶん新婚旅行のつもりだよね。
そして俺は今もバイオリンを弾いている。
ベンの膝の上で。
「もう!曲芸みたいじゃん!なにやらせるの」
「いや…いっペんここで弾かせてみたかっただけなんで」
「ベンって時々変態だよね…」
「裸で演奏してもいいんだぞ」
「うわぁ最低…」
「ま、それは冗談として。おいで」
ベンがバイオリンを取り上げると、俺に熱いキスをした。
「なあ…私たちの新婚旅行、おあずけ食ってるんだが」
「陛下たちが帰ってこないとね」
「どこか行きたいところはあるか?」
ーーーーーーー
来たことのない山の中腹にそれはあった。
故郷の土を踏むことになった俺はたくさんのギャラリーを引き連れて今ここに立っている。婚約破棄されて、正体不明の嫌われものだった貴族の男に連れていかれた哀れな俺は、大国の次期国王の伴侶として故国に堂々と帰って来た。
着いたのは、公爵だった両親の墓。俺を生んですぐ亡くなった母と、俺を王宮にほぼ置き去りにした父親。昔は大層恨んだけれど、二人がいてくれたから、俺がいる。
第二の人生を始めさせてくれた大切な人だ。
そしてそのあとは、楽しみなイベントだ。
ギャラリーがどよめいた。頭上には金のドラゴンがゆっくり旋回して、俺たちの前に着地した。周囲の人間は、ドラゴン使いにまでなっている俺に仰天するしかなかった。あの憎き元婚約者ウッドの父親である国王や、年若い皇后は息子のしでかしたことにベンにひれ伏すしかなかった。
俺たちはそのまま金のドラゴンに乗って颯爽と空に浮かんでいく。
「いこう、ベン」
「ああ」
二人の楽しい新婚旅行。
ドラゴンの背に乗りながら、ベンが後ろから俺を抱き締めた。すっぽりと彼に包まれるのが好き。
「だいすき」
俺はベンの両手を胸の前で抱き締めた。
「好き?私は好きだし愛してるぞ」
「なんなのそれ…俺だってめちゃくちゃ愛してるもん」
「一生愛する大きさの競争だな」
そうだね、ずっとそうしてもっともっとお互いを愛せたらいいね。ベンのそういう感性が俺をどんどん成長させるし、愛でいっぱいにしてくれる。
「じゃあ、愛の入れ物ずっと満タンにならないね」
なんて、バカップル丸出しの会話をしながらずっとベンと生きていきたい。
『お前ら、…落としていいか』
ドラゴンがため息まじりに言い、みんなで笑った。
俺たちは高く高く飛んでいく。
これはある幸せな二人がもっともっと幸せになっていく話。
「愛してる…第二の人生最高…」
俺はそっと呟いた。
END
読んでくださってありがとうございました。
あいえだけい。
それに、俺の隣にはベンがいてくれる。薄幸な人生でしかなかった俺を救いだしてくれた。確かに俺の事は外交官から口には出ていたのだろうけど、迎えにきてくれたのは幸せより他に表す言葉がない。
ベンは王位継承第一位になった。
ヴォルフはB国の国王補佐官と国王クレオンの後ろ楯として保護者に任命された。B国は自立できるまではガルデスフィールの属国になるという。
俺はというと。
各地をバイオリンで演奏してまわって、音楽家として活動を始めた。
王宮の楽器は全て俺の管轄になり、楽団を作ってもらってしまったのだ。収益は教育や寄付に回す。これも大事なお仕事だ。
俺は前世での夢を実現できた。
昔、俺は貧乏で安物のバイオリンだけを頼りにやってきた。音楽家として、演奏家としてそこそこやってこれたかもしれないけれど、やり残したことや叶わなかった夢ははたくさんあったんだ。
この世界では、音楽はブルジョアだけに与えられるという贅沢物の現状を変えたかった。楽器を大量生産し、施設や学校に普及させたいと言うと、ベンはすぐに行動に移してくれた。
そんなことは極一部だけれど、あれからベンは持ち前の頭脳と行動力を発揮し、彼の人気はどんどん上がっていく。
王位継承第一位になることで文句を言う人はいなくなっていった。
さすが俺のベン。
陛下とシュワルツは外遊に行ってしまった。たぶん新婚旅行のつもりだよね。
そして俺は今もバイオリンを弾いている。
ベンの膝の上で。
「もう!曲芸みたいじゃん!なにやらせるの」
「いや…いっペんここで弾かせてみたかっただけなんで」
「ベンって時々変態だよね…」
「裸で演奏してもいいんだぞ」
「うわぁ最低…」
「ま、それは冗談として。おいで」
ベンがバイオリンを取り上げると、俺に熱いキスをした。
「なあ…私たちの新婚旅行、おあずけ食ってるんだが」
「陛下たちが帰ってこないとね」
「どこか行きたいところはあるか?」
ーーーーーーー
来たことのない山の中腹にそれはあった。
故郷の土を踏むことになった俺はたくさんのギャラリーを引き連れて今ここに立っている。婚約破棄されて、正体不明の嫌われものだった貴族の男に連れていかれた哀れな俺は、大国の次期国王の伴侶として故国に堂々と帰って来た。
着いたのは、公爵だった両親の墓。俺を生んですぐ亡くなった母と、俺を王宮にほぼ置き去りにした父親。昔は大層恨んだけれど、二人がいてくれたから、俺がいる。
第二の人生を始めさせてくれた大切な人だ。
そしてそのあとは、楽しみなイベントだ。
ギャラリーがどよめいた。頭上には金のドラゴンがゆっくり旋回して、俺たちの前に着地した。周囲の人間は、ドラゴン使いにまでなっている俺に仰天するしかなかった。あの憎き元婚約者ウッドの父親である国王や、年若い皇后は息子のしでかしたことにベンにひれ伏すしかなかった。
俺たちはそのまま金のドラゴンに乗って颯爽と空に浮かんでいく。
「いこう、ベン」
「ああ」
二人の楽しい新婚旅行。
ドラゴンの背に乗りながら、ベンが後ろから俺を抱き締めた。すっぽりと彼に包まれるのが好き。
「だいすき」
俺はベンの両手を胸の前で抱き締めた。
「好き?私は好きだし愛してるぞ」
「なんなのそれ…俺だってめちゃくちゃ愛してるもん」
「一生愛する大きさの競争だな」
そうだね、ずっとそうしてもっともっとお互いを愛せたらいいね。ベンのそういう感性が俺をどんどん成長させるし、愛でいっぱいにしてくれる。
「じゃあ、愛の入れ物ずっと満タンにならないね」
なんて、バカップル丸出しの会話をしながらずっとベンと生きていきたい。
『お前ら、…落としていいか』
ドラゴンがため息まじりに言い、みんなで笑った。
俺たちは高く高く飛んでいく。
これはある幸せな二人がもっともっと幸せになっていく話。
「愛してる…第二の人生最高…」
俺はそっと呟いた。
END
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