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本編

ベンのやきもち

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とりすがったウッドから、さっさと俺を取り上げたベンが忌々しそうに哀れな彼を見下ろす。

「私のレイを馴れ馴れしく呼ぶな」

うわ、ベンが怒ってる…。こんな目をした彼を初めて見た。

「な!レイは元々は俺のだったんだ!俺がちょっと冗談で捨てるって言っただけなのにお前が…ぐはぁ!がっ!」

ウッドがいい終わらないうちにベンが彼のみぞおちを蹴り、その足で頭を踏みつけた。ごりごり、と石畳に押し付けられるウッドの頭が痛そうだ。

俺はウッドから受けたあの屈辱とDVを未だに忘れてない。きっと一生忘れられないんだろう…。

「連れていけ」

ちっ、と舌打ち混じりにベンが吐き捨て、騎士団員がウッドを麻袋に押し込め、縄でぐるぐる巻きにしてしまった。辛うじて息はできているようだけれど、籠った声が何いってんのかわからなかった。

さよなら、ウッド。粗末な馬車が用意され、牢のような荷台に彼の入った麻袋が放りこまれる。そしてB国の宰相だったオッサンと、血だらけで息も絶え絶えの皇后が押し込まれる。

御者が冷たく鞭を鳴らし、馬車が勢いよく走り出した。
うわ、運転荒い…!かなりの揺れだろうな。車輪は裸の木の枠だけだったし。

「…大丈夫か?レイ」
「うん、ベンが守ってくれたから」
「当たり前だ」

俺たちは見つめあった。

「ゲホゲホ…、お二人さん、すまないが、現実に返ってきてくれるか?」

ダリウスが咳払いをしてトリップする俺たちを引き戻した。

「こいつ…どうする?」

あれ?とは?ダリウスの指さした方向を見てみると。
エルンストがダリウスに興味津々でくっついている。

「トレジャーハンターのダリウスさんだ…!うわあ本物だ!」

エルンストの目がハートになっていた。

「俺、トレジャーハンターになりたかったんだよ」

全員が驚いてエルンストを見た。ダリウスは笑ってエルンストの頭を撫でてこう言った。

「そうかそうか。じゃ、俺の弟子になるか?」
「え!なりたい!」

ダリウスの言葉にエルンストが即答した。

「いいの?…ベン、俺、ダリウスさんについていきたいんだけど、父上の許しは出るかな?」
「へ?」

いきなりの相談にベンが面食らった。

「俺は王になるわけでもなし、罪人の子として王宮で生きていくんだよ?シュワルツは愛してくれてるけど、いつまでも甘えて生きていくわけにはいかないし…ねえ、いいだろ?」

ベンが少し困ったように眉間を険しくして、しばらく考えている。皇后の呪いを昇華するために金のドラゴンの力で生を受けたエルンスト。

すると、意外なところから声がかかった。

『エルンスト、ダリウスの弟子になるのなら私がお前についててやろう。お前の一部は私からできているのだから…。レイと一緒にこうやってここまで来てみると、竜騎士のドラゴンだった頃を思い出した。冒険をまたやってみてもいいなと思えたのだ、どうだレイ?ベンに言ってみてはくれないか?』

へ…?金のドラゴンの提案に俺は面食らった。


















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