第二の人生は王子様の花嫁でした。

あいえだ

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本編

石の上にも20年

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「へ、陛下…?なにを…?」

皇后が目を見開いて半笑いをしている。どうも現実が呑み込めていないようだ。

「ニーナ…お前は利用できるものは全て使って私のもとへ来た。断っても断ってもしつこく私を追い回し、私の大切なものを奪おうとしてきた。シュワルツの実家を潰し、親を無実の罪で葬り、不幸のどん底に落とした。国外追放の憂き目にまで合わせたのはどこのどいつだ?」

うわあ、若い頃の2人の地獄を見た気がする…!国外追放…じゃあそのときにB国のレジスタンスと知り合ったのかな?

陛下は続けた。

「あらゆる手をつくし、私はシュワルツを保護し、手元から離れないように懸命に尽くした…。国に私たちの婚約を反故にされ、絶望したが、あきらめなかった」

「陛下…?なにをおっしゃるの?」

「果てはシュワルツを毒殺しかけ、刺されかけ、あげくにはヴォルフを流産させられかけた…そしてだ、呪いをかけてベンを死なせようとしたよな?それを返すためにそこのドラゴンの助けを求めに行ったこともあったわ…」

陛下の言葉になんと皇后は笑った。

「ふふ、シュワルツさえいなければ陛下はわたくしのものになるのですもの。あいつがどんな汚い手でわたくしの陛下をだましてるのか、陛下はご存知ないのですわ」

うわぁ!ストーカー的考え!俺はぞわっと鳥肌が立った、

「私は今回、お前と何故旅行などをしたのかわかるか?」
「陛下がわたくしとの仲をやっと深めようとしてくださったからでは?わたくしの良さをやっとわかって下さったからでしょう?」

皇后がきょとんとした顔で答えた。何を当然のことをきくのだ、といった風に。

「へ、陛下の心中を察するわ…」
「怖え…」

エリアスとダリウスがドン引きしながら、こそこそと話している。俺もそう思うよ…。

「B国を滅亡させるのに、お前が邪魔だったからだ。もうお前には後ろ楯もなにもない。王家もクレオンが継いだ今、お前とは縁を切ったと報告が入った」
「…どういう、ことですの?」

皇后ニーナの表情が少しこわばった。


そのときだ。


「はうっ!」

皇后が苦しげな表情になる。みるみる腹に赤い染みができ、その胸からは刃物が貫通して突き出ている。

なっ!
そこにいた俺たちは驚きで固まった。

「へへ…へへっ…あはは!これで俺は無罪放免だ!そうだろ?皇后を殺せば俺は助かると!」

そう、男の笑い声が響く。皇后ニーナの背中から剣をひと突きにしたやつがいたのだ。

「重罪人を傷つけた奴を捕らえろ!」

アルが怒鳴り、騎士たちがドっとその男を押さえる。

それは、俺の元婚約者のウッドだった。その隣で真顔で青年が立っている。

それは、皇后の息子、呪われた王子、エルンストだった。






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