第二の人生は王子様の花嫁でした。

あいえだ

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本編

国王陛下の罠

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な、なんで陛下が皇后と一緒に…!?

俺は頭が真っ白になった。シュワルツは?みんなは?なんで国王陛下が皇后と旅行をしているの??混乱しすぎて全く正常な判断ができない。
皇后は不敵な笑みを浮かべて俺を勝ち誇った顔で見ていた。

「陛下がやっと、わたくしに心を向けてくれたというのに…レイのお陰で台無しですわ。早くここから消えなさい。ベンも婚約が整い次第、B国にいるわたくしの姪と婚礼を挙げると陛下が約束してくださったのよ」

べ、ベンが婚礼?どういうこと?
え?B国は倒れたんだよ?なぜそれを知らないの?

すると、複数の馬の蹄の音が近づいてきたのに気づいた。遠くから砂ぼこりを上げて一台の馬車とそれを囲むように沢山の馬に乗った騎士団員や兵がこちらに走ってくるのが見えた。

「迎えが来たか…」

陛下が呟くように言った。

「ええ陛下。楽しい滞在でしたわ。次はどこへ連れていってくださるの?」

しなしなと媚びるような皇后の上ずった声が不愉快きわまりない。
俺はすがるようにダリウスとエリアス、アルを見た。

でも彼らは馬車の一行を黙って見ている。彼らも訳が解らず混乱しているのだろうか、俺の不安が増えていく。足元がひんやりと冷たくなってきた。

なにが、どうなっているのだろうか。俺はドラゴンの腕を掴んで不安にまみれる。

ふわっ、とドラゴンの翼の先が俺を包んだ。

馬車は陛下、皇后、俺たちの前で止まる。馬上の騎士たちも、兵も敬礼をした。

「ねえ陛下、次は?次はどこへ連れていってくださるの?楽しみだわ」

皇后はよほど楽しいのだろう。うきうきと馬車に近づく。騎士の一人が恭しく礼をして皇后に扉を開けた。

「…へ?」

皇后から変な声が出た。それに気づいた俺たちが馬車の中を凝視すると。

馬車の中には。

ボロボロの格好をしたB国の宰相が縛られて座っていた。服は破れ、顔は汚れ、アザだらけだ。
拉致されたときに顔を見たから俺は彼を知っていた。

「あ…にうえ…?」

皇后がかすれた声で兄を呼んだ。

「お迎えに参りました。…皇后陛下」

そしてその隣には、ご機嫌の笑顔のベンがいた。


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