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本編
ヴォルフとクレオン
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「え、遠距離?」
俺はそう呟いてしまった。
ヴォルフはクレオンの顔を見て微笑んだあと、ダリウスに答えた。
「ま、それより先にこの反乱をなんとかしないとな。俺たちのことはその後だ。俺はクレオンの一番幸せになる方向に動きたい」
「ヴォルフ…!」
クレオンが青い目を見開いてヴォルフを見つめた。金髪の美貌のクレオンの瞳にうっすら涙のようなものも浮かんでいる。
「そっか、すまん、野暮なこと聞いてしまったな。二人が一番幸せになれるように俺も協力させてもらうぜ」
そう言ってダリウスが笑う。
うんうん、よかったね、がんばろうね!俺は嬉しくて胸一杯になった。
その日は会議をして、明日にはB国の首都へのりこむことになった。B国の兵士がたくさん待ち構えているだろうけれど、士気がかなり落ちているらしく、逃げ出す兵もいると聞いた。
次の日、早朝から俺たちは移動を開始する。首都までは半日かからない。ドラゴンならもっと早い。
だけど、急な知らせが入った。
首都の国民がもろ手を上げてレジスタンスを受け入れたのだ。
それは、クレオンが国王となる条件。
国民はレジスタンス側についた。
そうなった大きな理由は、幸運の金のドラゴンがレジスタンスに味方した、という噂が国中に流れたからだった。元々はB国に住み処のあった金のドラゴンは幸運をもたらす神の使いであると伝説になっていたのだ。
それを知った金のドラゴンと、黒いドラゴン、カイザーが大笑いした。
『王族貴族に無理難題を押し付けられ、幸運アイテムと称したガラクタを作らされて撒いていたのがこんなことになるなんて…お笑いだ』
「元竜騎士のドラゴンだったお前が神の使いとか!爆笑しかないな!」
二匹のドラゴンは笑いが止まらないようだ。
「とにかく無駄な戦いをしなくてこちらは助かったな。国王は宰相によって監禁されていて、廃人同様だったそうだ。クレオンの兄、第一王子は捕まり、宰相は逃げた…おそらく皇后のもとへいくかもな」
騎士アルがほっとしたように説明してくれた。
クレオンとヴォルフは国民の盛大な拍手に迎えられ、王宮に入った。クレオンの側にはヴォルフがびったりついている。
何よりも。
金のドラゴンと、彼に乗った俺が一番の拍手喝采を受けた。
ベンの恋人の俺、ではなく、なんと俺の事を金のドラゴン戦士レイと言われて人々の口の端にのぼっているのだ。
「ははっ…俺はなんもしてないのに。全部ドラゴンの七光りだね、ありがと」
俺がそう礼を言うと、金のドラゴンが首を振った。
『私はレイが好きだぞ、レイがいなければこのようなことに付き合ってはおらん。おまえといると実に面白いし、前向きな心の持ち主だから楽しい。お前さえよければ私はもっとレイと行動を共にしたいと思っている』
へ…?
「ほんと?…友達になってくれるのか?」
「友達?」
俺の言葉にドラゴンが目を丸くする。そして彼の金の瞳がすうっと細められた。
『はは…もう既に友達ではないのか?レイ』
「えっ…」
俺は金のドラゴンの言葉がとても嬉しかった。
俺はそう呟いてしまった。
ヴォルフはクレオンの顔を見て微笑んだあと、ダリウスに答えた。
「ま、それより先にこの反乱をなんとかしないとな。俺たちのことはその後だ。俺はクレオンの一番幸せになる方向に動きたい」
「ヴォルフ…!」
クレオンが青い目を見開いてヴォルフを見つめた。金髪の美貌のクレオンの瞳にうっすら涙のようなものも浮かんでいる。
「そっか、すまん、野暮なこと聞いてしまったな。二人が一番幸せになれるように俺も協力させてもらうぜ」
そう言ってダリウスが笑う。
うんうん、よかったね、がんばろうね!俺は嬉しくて胸一杯になった。
その日は会議をして、明日にはB国の首都へのりこむことになった。B国の兵士がたくさん待ち構えているだろうけれど、士気がかなり落ちているらしく、逃げ出す兵もいると聞いた。
次の日、早朝から俺たちは移動を開始する。首都までは半日かからない。ドラゴンならもっと早い。
だけど、急な知らせが入った。
首都の国民がもろ手を上げてレジスタンスを受け入れたのだ。
それは、クレオンが国王となる条件。
国民はレジスタンス側についた。
そうなった大きな理由は、幸運の金のドラゴンがレジスタンスに味方した、という噂が国中に流れたからだった。元々はB国に住み処のあった金のドラゴンは幸運をもたらす神の使いであると伝説になっていたのだ。
それを知った金のドラゴンと、黒いドラゴン、カイザーが大笑いした。
『王族貴族に無理難題を押し付けられ、幸運アイテムと称したガラクタを作らされて撒いていたのがこんなことになるなんて…お笑いだ』
「元竜騎士のドラゴンだったお前が神の使いとか!爆笑しかないな!」
二匹のドラゴンは笑いが止まらないようだ。
「とにかく無駄な戦いをしなくてこちらは助かったな。国王は宰相によって監禁されていて、廃人同様だったそうだ。クレオンの兄、第一王子は捕まり、宰相は逃げた…おそらく皇后のもとへいくかもな」
騎士アルがほっとしたように説明してくれた。
クレオンとヴォルフは国民の盛大な拍手に迎えられ、王宮に入った。クレオンの側にはヴォルフがびったりついている。
何よりも。
金のドラゴンと、彼に乗った俺が一番の拍手喝采を受けた。
ベンの恋人の俺、ではなく、なんと俺の事を金のドラゴン戦士レイと言われて人々の口の端にのぼっているのだ。
「ははっ…俺はなんもしてないのに。全部ドラゴンの七光りだね、ありがと」
俺がそう礼を言うと、金のドラゴンが首を振った。
『私はレイが好きだぞ、レイがいなければこのようなことに付き合ってはおらん。おまえといると実に面白いし、前向きな心の持ち主だから楽しい。お前さえよければ私はもっとレイと行動を共にしたいと思っている』
へ…?
「ほんと?…友達になってくれるのか?」
「友達?」
俺の言葉にドラゴンが目を丸くする。そして彼の金の瞳がすうっと細められた。
『はは…もう既に友達ではないのか?レイ』
「えっ…」
俺は金のドラゴンの言葉がとても嬉しかった。
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