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本編

元竜騎士

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竜騎士、と呼ばれる人がこの世にいることは知っている。
幼い頃に絵本で読んだこともある。スーパーヒーローのような、遠い異国のおとぎ話のようなものだと思っていた。生まれつき特別なドラゴンを操るものすごく強い戦士、くらいしか知らないけれども。

それが、だ。
ダリウスの話では、今、目の前にいるこの途方もないキラキラした金髪のイケメン、エリアスという名の弟がその竜騎士らしいという。
竜騎士というのは職業ではなく、生まれもった運命を背負って生まれた存在なのだそう。
その傍ら、トレジャーハンターの仕事もしているそうだ。難しいことはよくわからないけれどすごい人であるんだろう。

「お、久しぶりだなエリアス。カイザーも」

軽い口調でダリウスが弟エリアスに声をかけると、彼はにっこりと笑うのを見てしまった俺は驚いた。

うわ!眩しい眩しい!なんだこの甘いマスクとキラキラした笑顔!アイドルか!

カイザーと呼ばれた黒いドラゴンも軽く会釈をする。このドラゴンも人の言葉が通じるんだ…。

「持ってきたぞ、剣」
「おう、忙しいのに悪いな、エリアス」
「ダリウスが俺を忙しくしてるんだろ?一族の当主がいつも世界に飛び回りやがって不在って…」

エリアスは猫くらいの大きさの包みを開けて、ダリウスに渡す。
それは、…大きな鳥の脚の先?の根元に剣の取っ手がついているような、そんな不思議な形をしている。
ってか!その鳥の脚って剥製!?本物だ!でも5本の指がついているし、こんな大きさは、鳥ではなくは虫類…?とにかく不思議な代物だった。剣というけれど、何も斬れなさそうだし。どちらかというとマジックハンドに近い。

「俺は現場主義なんだよ。俺のお陰でA国にこうやって縁もできただろうが。剣、ありがとな…シンに礼を言っておいてくれ」
「…ああ」
「というか、シンも一緒に来ると思ってたが」

剣を手に取りながらダリウスがエリアスに礼を言った。

「…シンって?」

その剣はシンという人のものなのか。それが誰なのかを知りたくてつい二人に声をかけるとダリウスが笑って答えてくれた。

「ああ、うちの社員。トレジャーハンターの仲間でその剣の持ち主だ…エリアス、シンはどうした?」
「えっ…」

そう尋ねられたエリアスの表情が曇る。え、どうしたんだ?

「体調でも崩したのか?」

ダリウスが怪訝な表情になる。

「いや、疲れただけだ…ダリウスに会いたがってたが、すまないな」

何かをごまかすようにエリアスが笑いながら答えると、黒いドラゴンがため息混じりに低いイケメンボイスで言った。

「シンは今朝、腰が立たなくて寝てるんだよ」

…は?

エリアスが舌打ちをして黒いカイザーというドラゴンを睨みつける。

「エリアスが昨夜抱き潰した…いつものことだ」

だ、抱き潰す…?俺は察した。そのシンっていう人はもしかして、エリアスの恋人なのだろうか?

その時だった。

『ふふっ』

ん?ふと、誰かが可愛い声で笑う声が聞こえた。見ると、エリアスが持ってきたシンの剣から聞こえてくる。エリアスもダリウスも気づいてないようだ。ドラゴンだけがその剣を見た。

え、俺、今、この剣の声が聞こえた…。

か、可愛い声…。そしてすぐ、俺の脳裏にめちゃくちゃ可愛いドラゴンの姿が鮮明に浮かび上がった。















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