第二の人生は王子様の花嫁でした。

あいえだ

文字の大きさ
上 下
63 / 93
本編

呪いと陛下の関係

しおりを挟む
俺はとりあえず今までのいきさつを話した。
ベンは当然のことだけれど、ダリウスが俺の拉致事件にとても驚いていた。

「B国の宰相絡みか…あの国はめんどくせぇんだよな、無理難題の依頼がよくあったんだ。確か皇后はそこの王女だっけか…」

ダリウスがため息をついた。ほんとよく知ってるね…。するとドラゴンもため息をついた。

『私も昔はB国の山奥に棲んでいたんだがな…王族などのあまりにも醜い欲望に嫌けがさしてこの国に来たのだ。私の魔力を狙い、王族があれこれとやって来られてうっとおしかったからな』

はぁー、とドラゴンとダリウスのため息がハモる。ほんとなんなのB国って…。

二人とも宰相や皇后を知っているんだ…。なんだか気の毒になってきた。

「まて、王家にかけられた呪いっつったか?」
『ああ…だから国王が私に会いにきた。どうすれば呪いが解けるか、って』
「で、どう答えたんだ?金のドラゴン」

ふう、とまたため息をつき、ドラゴンが宙を見上げる。

「呪いは解けんが、呪った人間の腹にそれを転化して人の形をなし命となって宿らせることはできる、そして国王、貴様がその子を育て浄化すればよい、とだけ教えてやった」

それ…まさか。

「エルンスト…」

小さな、囁くような声でベンが呟いた。

まさか、呪った人間は皇后で、その呪いをその身に纏って生まれたのがエルンストだとすれば、黙ってその子を育てている国王とシュワルツの行動もわかる、一時皇后に奪われたけれど、彼らはまたエルンストを取り返した。

「そうだ。ベン王子、お前の弟のエルンスト王子のことだ。彼は王家にかけられた呪いを私の魔力で人化し、呪った人間に宿らせた」

まあ、男同士で結婚しても、何かこの国にある不思議な力で子どもができちゃうんだよね、それ、魔法って言えば話が早いよね…。ベンもヴォルフもそうやって生まれてきたんだもん、エルンストの出生の秘密が浄化させるための人形だとしてもさして驚かないっちゃー驚かないか。

『ベン王子が気にやむ必要はない。呪った人間が悪いのだ。呪いはその子からその人間の胎内に巣くい、今となってはかなりの苦痛を強いてるはず』

クックッ、とドラゴンが目を細めて笑った。

「ちょちょっとドラゴンが浄化するってわけにはいかなかったのか?」

ダリウスが頭をかきながらドラゴンに言った。

『あの呪いはかけられた者にしか解けん。私ができるのは方向を少し変えるだけ。呪いは国王が解かねばならんのは変わらん。呪った者を愛せば解ける、それが呪ったものの望みだからな…。だが国王は「それは絶対嫌だ!あいつを愛するくらいなら呪いの子ども浄化して育てる」と突っぱねおった。
いや、あんなにアレルギー反応を出されて即拒絶されるとは思わなかった…。相当、相手のことが嫌いなのだな』

ドラゴンが苦笑しながらの説明に、今度はそこにいた全員がため息をついた。

国王陛下ぁ…。

嫌いなのはわかるけど。


「政略結婚というか、皇后に勝手に押し掛けられたようなものだからな…。父上がいらんというのに強引に」

ベンが空を見上げて言うと、ダリウスがきょとんとして尋ねる。

「それ、拒否とか国外追放はできなかったのか?」

「当時のB国の領土の中に我が国がどうしても欲しい要の島があってな…ライバル国の監視に必要だったんだ。だからあの皇后を受け入れる代わりに島を譲る条件を出した」

ベンが淡々と話し始める。

「そのために父上と結婚するはずだったシュワルツは婚約を破談にされ、あの女が皇后になったんだ…それでも父上はシュワルツを離さず宰相としてそばに置いた。だけど先に生まれたものが王位を継ぐ決まりを盾に父上はさっさとシュワルツにヴォルフとわたしを生ませたんだ。皇后やその周囲がが呪いをかけて滅ぼそうと企んだのは容易に想像がつく…くそ」

悔しげにベンが唇を噛んだ。

「生まれたエルンストが…気の毒だ…」

俺もそう思う。一番の被害者は彼かもしれない。そう思えるベンがやっぱり好き。
俺は悲しげに目を細めたベンの背中をそっと撫でてあげるしかできなかった。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...