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本編

呪いと陛下の関係

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俺はとりあえず今までのいきさつを話した。
ベンは当然のことだけれど、ダリウスが俺の拉致事件にとても驚いていた。

「B国の宰相絡みか…あの国はめんどくせぇんだよな、無理難題の依頼がよくあったんだ。確か皇后はそこの王女だっけか…」

ダリウスがため息をついた。ほんとよく知ってるね…。するとドラゴンもため息をついた。

『私も昔はB国の山奥に棲んでいたんだがな…王族などのあまりにも醜い欲望に嫌けがさしてこの国に来たのだ。私の魔力を狙い、王族があれこれとやって来られてうっとおしかったからな』

はぁー、とドラゴンとダリウスのため息がハモる。ほんとなんなのB国って…。

二人とも宰相や皇后を知っているんだ…。なんだか気の毒になってきた。

「まて、王家にかけられた呪いっつったか?」
『ああ…だから国王が私に会いにきた。どうすれば呪いが解けるか、って』
「で、どう答えたんだ?金のドラゴン」

ふう、とまたため息をつき、ドラゴンが宙を見上げる。

「呪いは解けんが、呪った人間の腹にそれを転化して人の形をなし命となって宿らせることはできる、そして国王、貴様がその子を育て浄化すればよい、とだけ教えてやった」

それ…まさか。

「エルンスト…」

小さな、囁くような声でベンが呟いた。

まさか、呪った人間は皇后で、その呪いをその身に纏って生まれたのがエルンストだとすれば、黙ってその子を育てている国王とシュワルツの行動もわかる、一時皇后に奪われたけれど、彼らはまたエルンストを取り返した。

「そうだ。ベン王子、お前の弟のエルンスト王子のことだ。彼は王家にかけられた呪いを私の魔力で人化し、呪った人間に宿らせた」

まあ、男同士で結婚しても、何かこの国にある不思議な力で子どもができちゃうんだよね、それ、魔法って言えば話が早いよね…。ベンもヴォルフもそうやって生まれてきたんだもん、エルンストの出生の秘密が浄化させるための人形だとしてもさして驚かないっちゃー驚かないか。

『ベン王子が気にやむ必要はない。呪った人間が悪いのだ。呪いはその子からその人間の胎内に巣くい、今となってはかなりの苦痛を強いてるはず』

クックッ、とドラゴンが目を細めて笑った。

「ちょちょっとドラゴンが浄化するってわけにはいかなかったのか?」

ダリウスが頭をかきながらドラゴンに言った。

『あの呪いはかけられた者にしか解けん。私ができるのは方向を少し変えるだけ。呪いは国王が解かねばならんのは変わらん。呪った者を愛せば解ける、それが呪ったものの望みだからな…。だが国王は「それは絶対嫌だ!あいつを愛するくらいなら呪いの子ども浄化して育てる」と突っぱねおった。
いや、あんなにアレルギー反応を出されて即拒絶されるとは思わなかった…。相当、相手のことが嫌いなのだな』

ドラゴンが苦笑しながらの説明に、今度はそこにいた全員がため息をついた。

国王陛下ぁ…。

嫌いなのはわかるけど。


「政略結婚というか、皇后に勝手に押し掛けられたようなものだからな…。父上がいらんというのに強引に」

ベンが空を見上げて言うと、ダリウスがきょとんとして尋ねる。

「それ、拒否とか国外追放はできなかったのか?」

「当時のB国の領土の中に我が国がどうしても欲しい要の島があってな…ライバル国の監視に必要だったんだ。だからあの皇后を受け入れる代わりに島を譲る条件を出した」

ベンが淡々と話し始める。

「そのために父上と結婚するはずだったシュワルツは婚約を破談にされ、あの女が皇后になったんだ…それでも父上はシュワルツを離さず宰相としてそばに置いた。だけど先に生まれたものが王位を継ぐ決まりを盾に父上はさっさとシュワルツにヴォルフとわたしを生ませたんだ。皇后やその周囲がが呪いをかけて滅ぼそうと企んだのは容易に想像がつく…くそ」

悔しげにベンが唇を噛んだ。

「生まれたエルンストが…気の毒だ…」

俺もそう思う。一番の被害者は彼かもしれない。そう思えるベンがやっぱり好き。
俺は悲しげに目を細めたベンの背中をそっと撫でてあげるしかできなかった。









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