第二の人生は王子様の花嫁でした。

あいえだ

文字の大きさ
上 下
60 / 93
本編

洞穴の奥

しおりを挟む
「あの…俺はどういう風によそから言われてるんでしょうか…?」
「え?」

何故か洞穴の奥を一緒に探検することになった俺たちはトレジャーハンターのダリウスの後ろをついていっている。ダリウスは俺に上着を貸してくれて、そのシャツに手を通すと何だか強くなったような気さえする。

「白い妖精…と呼ばれてるのがなんでかなって。俺はしがない田舎貴族の普通の男なのに、なんでそんな噂にのぼってんのかなと不思議になって」
「ああ…。お喋り好きな外交官の中で、ある国のアホ王子にとてつもない美人の婚約者がいるって話があってな、興味本位でそれがどんどん伝わっていったらしい」

う、聞くんじゃなかった…と少しだけ思ってしまった。

「俺は仕事柄、王族や貴族に顔が利くしそういう噂は仕事に結び付くんで記憶はしているんだ。とてつもない美人…ま、納得だな。レイはかなりの美人だな」

俺の顔をちらりと見たダリウスが目尻をくしゃっとして笑った。暗がりの中でもその笑顔は爽やかに見えた。

「アホ王子と別れてベン王子に乗り換えたのか?」
「…乗り換えるとか感じ悪くない?違います。ベンが俺のその噂を頼りに迎えにきてくれた、というか…救ってくれました」
「そっか。すまん。まあなんにせよ良かったじゃないか、その後のあのアホ王子、王になれないそうだし」
「よくご存じですね…」
「まあ、情報は大事だからな。俺が今から狙う獲物はそういうアホな王族の依頼だ。持つと幸運が訪れるというありもしない験担ぎだけのために欲しがって大金を積む。馬鹿馬鹿しいが、俺はそれが仕事だからな」
「依頼って…なに?」

俺の問いにダリウスは少しだけ宙を見て、それからため息をついてぽそりと呟いた。

「ドラゴンの鱗。それも金のドラゴン」

はっ?ドラゴン?そんなもん…いるな。聞いたことがある。まあ、大きなは虫類みたいなものもいるけれど、それは大きなトカゲと変わらないまた別のものだ。ドラゴンは知能が非常に高く、戦闘力も並ではないと聞いている。
そしてゲットたちのよりずっと稀少なため、幻の生物と呼ばれ、一生に一度お目にかかるかどうかのものだ。

「この山には金のドラゴンが棲んでいるんだ。ほぼ地下に生息してるからめったに出てこないがな」
「ドラゴンか…見たことない。ダリウスはたくさん見てきたの?」
「ああ。ま…そもそも弟がドラゴンを飼ってるからな…」
「へっ!?飼えるの?」
「ん、まあ…」

そんなもの飼えるってダリウスんちはどんな家なんだ…。

「この奥にいるのは調べがついてる。だが鱗なんて剥がさないと手に入らないんだ。それには気絶させて頂くしかない…面倒だな」

ちっ、と舌打ちしながらダリウスが細い穴をくぐる。俺とゲットも追うとすぐに大きなホールのような場所に出た。天井から少しだけ星空が見えてとても美しかった。

そのすぐ下の崖に窪みがあり、そこに藁のようなものを敷いて金色の生き物が寝ているように見える。

それは確かに金のドラゴンに違いなかった。























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...