第二の人生は王子様の花嫁でした。

あいえだ

文字の大きさ
上 下
59 / 93
本編

銀髪のハンター

しおりを挟む
洞穴の向こうから音がする…俺たちに緊張が走った。

足音が近づいてくるのがわかった。人だ…!追っ手か!?俺は心臓の音がめちゃくちゃに大きくなった。

人とわかればゲットの警戒心は高まるばかりだ。唸り声を上げて俺を庇うように身を進めてくれる。俺はゲットを守りたくてがっちり抱き締めた。

ザクザクと足音が近づいてくる。逃げることもできず、俺たちはその相手を睨み付けた。

「…なんだってこんなところに豹が…」

黒装束に包まれた大きな男のようだ。背中に大きな剣を背負っている。そして低いイケメンボイス。

「っ…何者だ!?」

俺は震える声をなんとか隠そうと厳しく敵意むき出しの虚勢を張った。

「いや、それは俺の台詞だろ…なんだお前も銀髪に赤い目じゃないか」

ばさり、と男がフードを取る。

男性の銀の髪が露になり、赤い瞳がこちらを見ている。これはかなりのいい男だ。整った顔に少し大きな瞳、焼けた肌。こいつは…旅装束のような格好だけど、戦士のようにも見える。

「これは…ただ事ではないな、手錠なんて」

男性は腰に下げたポケットバッグから何か道具のような針をだすと、俺の手錠の鍵穴に突っ込んで難なくそれを外してくれた。
あまりの瞬間技に俺とゲットが驚く。
皮が剥けて赤くなった手首に軟膏まで塗ってくれた。

「あ…りがとうございます…」
「いや、それより大丈夫かその豹、だいぶ体力を消耗してるぜ」

そう言われた俺はゲットを見た。目に力がない。

「ほら、これを食え」

男性が慣れた手つきで丸薬のようなものをゲットの口に無理やりねじこんだ。この人、豹が怖くないの?ゲットも一瞬の出来事にびっくりしてゴクンと薬を飲み込んでしまった。

「滋養強壮の丸薬だ。かなり効くぜ、お前にもひとつやるよ…見たところどこかから逃げてきたように見えるが?」
「あ、はい…」
「うーん、豹なんてこの国では王族くらいしか飼えねえ生き物だけど…もしやまさか、なあ。王宮から?」

この人は何者なんだろう?よく知ってるなぁ。俺は驚いて銀髪の男性を見る。

「…ああ、紹介が遅れたな。俺はダリウスっていうモンだ。トレジャーハンターをして世界を回ってる」
「トレジャーハンター?」

そういえばそんな職業の人がいるとは聞いたことがある。珍品や幻の生き物など、依頼があれば探して手にいれてくる。屈強の体と最上の審美眼を持つ者だけが一級のトレジャーハンターになれるという。だがものすごく報酬額が高いらしく、一流のトレジャーハンターに頼めるのは王公貴族や財閥などの一握りの金持ちだけだ。

「ここらへんに依頼品が眠ってるという話を聞いてこの国へ探しにきたんだが…。お前、王宮から逃げてきたのか?」
「ううん…逆…王宮から拐われたんだ。俺はレイ。誘拐されたみたいで、この豹が助けに来てくれた」
「誘拐とは…おまえ王族か?」
「ううん…違う。使いのものだよ。ただ、この豹とは仲良しなの」

安易に知らない人に深い話はしないほうがいいと思い、情報はできるだけ少なくした。

「…おまえ、もしかして…」
「え?」
「その白い髪、銀だがな…まさか、白い妖精、ってやつ?最近王子がそんな美人を手にいれたって噂は聞いたことがあるんだが。でないとそんなトラブルに巻き込まれないだろ」

へっ…?

俺とゲットはダリウスが大変な情報通なことにびっくりしてものすごい顔をしてたと思う。

「お、ビンゴか。わかりやすいな!」

そう言って彼は愉快そうに笑った。













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...