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本編

元婚約者ウッド

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大嫌いで二度と会わないと思っていたウッドが目の前にいる。全身鳥肌がブツブツと立ち、俺は寝覚めが悪すぎて吐き気がしてきた。

「なんだレイ、久しぶりに会えたのにそんな顔するなよ」

ウッドが笑いながら俺に声をかけてきたけれど、俺が変な顔をしてるのは嫌だからに決まってるじゃん、喜ぶわけがないことに気づいてくれ。

「ベン王子の元で幸せに暮らしてそうだな…少し太ったんじゃねえの?」

そう言って俺の頬をするんと撫でる。うわ、気持ち悪っ!俺は首を振ってその手を拒む。

そこで気づいた。
手錠がかけられている。

「俺をどうするつもり…?」
「は?俺はもう何も失うものはないからな。皇位継承も下がったし、今のままじゃ絶望的だ…そこで、この人に声をかけられたんだよ」

ウッドがそう言って隣の初老の男性を見た。見た目はそこそこ立派ななりをしている、おそらく高位の貴族だろう。

「皇后陛下の従兄弟にあたられる、グリーンヒル公爵だ。皇后陛下のご実家の宰相でもあられる」

…は?クレオンの国の宰相…?ということはクレオンが大嫌いな兄の相棒ということになる。

ベンの国がA国なら、皇后の実家でありクレオンの国はB国としておく。
このグリーンヒル公爵ってオッサンはB国の宰相だ。そして俺の生まれた国、この気持ち悪いウッドが王子をしている国はさしづめC国としておこう。

一番の大国がベンの父とシュワルツの治めるA国。
それよりも小国なのが皇后とクレオンの実家B国。

弱小で田舎の俺の生まれたC国。その国の王位さえウッドは弟が生まれたためもう継げなさそうだ。

「レイを失ってから俺は全てを失ったんだよな…よく考えてみりゃ、レイがそばにいるときは順調だったんだ。それが全てなくなった。なぜか少し考えてみたんだ」
「…自業自得なのにどこを考えることがあるんだ?転生者だっけ?あの女がいるじゃないか」

御都合主義らしいムカつく考え方に俺はついツッコんでしまった。
浮気して俺を捨てたあの行為が全ての元凶ではないのか。まあ俺にはラッキーでしかなかったけどな。

「まあそう言うな…それから気になって調べてみたんだよな…」
「…何を?」

「転生者が生まれると、その母親は命を失うんだってな。お前の母もレイを生んだら命をなくしたよな?んで、調べてみると転生者が生まれるという日食の日だった。異世界と何かが繋がるのだろう、前世の世界での自分の死、この世界のその幸運と偶然が重なった時にここへ生まれ直してくる…って文献には書いてあった」

俺の全身が凍りついた。

「…な、にが言いたい…ウッド…」

震える俺の声に、ウッドが強烈に嫌らしい顔で笑いかけた。

「なに、お前が転生者なのではないかと思ってな…グリーンヒル公爵と利害が一致したもので。…取り返しに来た」








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