第二の人生は王子様の花嫁でした。

あいえだ

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本編

お引っ越しの礼

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エルンストがヴォルフの宮殿に引っ越した。

それはそれは壮絶に強行されたようだった。
呆然とする皇后の前で騎士団員がサクサクとエルンストの荷物をまとめ、あれよあれよと完遂してしまったのだ。
その後エルンストを追ってヴォルフの宮殿まで皇后が供を引き連れて来たけれども…。

宮殿の前で衛兵に追い返されたらしい。ヴォルフの厳命により一切入れなかったそうだ。
…見たかった…。やるな、ヴォルフ。

あの日、陛下の部屋にみんなが集まっていたのは、陛下の誕生日の宴の会議だったそうだ。
当然王宮は大きな宴会が催される。国民総出で陛下の誕生日を祝う日でもある。

それとは別に王族の衣装やもろもろのややこしい決めごとがあるのだ。
食事会は俺にもなんとベンの隣の席が与えられていたのには驚いた。
ただの恋人という不安定な地位にいる俺にこれはとても嬉しかった。

だって、それって、公認してくれたも同然なんだもん。

今日はベンと図書室で待ち合わせなのだ。会議から直接向かうベンと落ち合うのだ。一緒の部屋に住んでいるけどなんだかくすぐったいような気持ちで嬉しい。

図書室へ向かう途中、突如俺の側についていたゲットが突然唸り声を上げた。不審に思った護衛のアルが腰に帯びた剣に手を伸ばす。

すると。

とすっ、とアルの腕に何かが刺さった。


矢だ。

これは…前に見た騎士団の矢だ。おそらく偽物のほう。どこから飛んできたかわからないし、腕を押さえてアルが膝を崩した。
ゲットが矢を射た者を見つけ一気に走っていく。
その時。俺の目の前が真っ暗になり、首の後ろをトンと衝撃が走った。
耳に遠く、アルが俺を呼ぶ声がする…ような気がして、意識が遠のいていく。

ふわっ、と浮遊感が体を襲い、俺はそれきりわからなくなってしまった。



「ん…」

目が覚める。僅かに瞼を開けると明るい光が入ってきた。

「お目覚めですね…レイ」
「やっと起きたか」

ん?複数の人間の声がする。それも聞いたことがあるようなないような…。俺はぱかっ、と目を開けた、

そこには。

知らないリビングのソファに寝かされている俺と、その正面のソファに腰かけている初老の知らないオッサンと。

大嫌いな元婚約者、ウッドがニヤニヤしながら俺を見ていた。












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