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本編
ゼルの怪我
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ゼルの怪我は順調に治っている。よかった。
毎日怪我をおしてゼルがやってきて、夜までゲットと隣に寄り添うんだ。そんなにまでして一緒にいたいんだな。ほほえましい。
「仲良いね、ほんとに…」
そう言う俺にゲットが嬉しそうに照れ、ゼルが笑う。
「お前とベンほどではないがな」
え、そうかな…。俺の方が照れてしまった。
あれからベンは俺を激しく抱く。昨夜も外が白々と明けるまで離してはくれなかった。ベンの匂い、逞しい体、俺はできるだけそれを感じたくて彼に抱きついて体を開く。
まあ、俺も男なのでお互いに気持ちよくなりたいし。
「何の話だ?」
護衛のアルがやってきて、ゲットの頭を撫でた。会話がよく通じなくてもゲットとゼルはアルのことが好きなようだ。よく懐いているのは彼が悪人ではないことを表しているのかもしれない。
「ん?ゲットとゼルが仲良いって話」
「ああ…ゼルもゲットと同郷だもんな」
「え、そうなの!?じゃあクレオンのとこ?」
俺はゼルを見た。
「俺はクレオンの父親である王からの正式な贈り物なんだ。自分で言うのも何だが一応黒豹は稀少種なんだぜ。だーかーら、俺を傷つけた奴らは本気で覚悟した方がいいと思うぜ…」
「エルンスト…だよね?」
その名前に隣で聞いていたアルが反応して立ち上がった。そういえば、騎士団の矢を偽造してる件を調べているはずだ。
「それでなんだがな…」
ゼルが話し始める。俺が怪訝な表情になったのか、アルが通訳を求めた。
ゼルの話によると、あの騎士団の矢の羽の材料は国内で取れるある鳥の羽を加工しているのだそうだ。王家の護衛として美しく選ばれた材料で作られていて、あの矢は儀礼用であり実用のものとは違うのだそうだ。要するにイベントもの。
その存在を王宮でのほほんと暮らしている皇后一派やエルンストが知っているかは怪しい。
「あの羽はうちの国の…いや、ややこしいな、故郷のアヒルの羽を彩色したやつだな。食ったことがあるからわかる」
げっ…!
俺はその証言に凍りついた。
「な、なんて?レイ?」
固まった俺にアルが通訳を急かした。
「あの羽は…ゼルの故郷のものだって」
「…な…!ベン様にすぐ報告を」
「うん!」
アルの目が大きく見開かれた。
まてまて、ゼルの故郷って、皇后の故郷じゃん!
なんとなくだけど、俺たちに立ち塞がる大きな得たいの知れないものが見えてきたような気がした。
毎日怪我をおしてゼルがやってきて、夜までゲットと隣に寄り添うんだ。そんなにまでして一緒にいたいんだな。ほほえましい。
「仲良いね、ほんとに…」
そう言う俺にゲットが嬉しそうに照れ、ゼルが笑う。
「お前とベンほどではないがな」
え、そうかな…。俺の方が照れてしまった。
あれからベンは俺を激しく抱く。昨夜も外が白々と明けるまで離してはくれなかった。ベンの匂い、逞しい体、俺はできるだけそれを感じたくて彼に抱きついて体を開く。
まあ、俺も男なのでお互いに気持ちよくなりたいし。
「何の話だ?」
護衛のアルがやってきて、ゲットの頭を撫でた。会話がよく通じなくてもゲットとゼルはアルのことが好きなようだ。よく懐いているのは彼が悪人ではないことを表しているのかもしれない。
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「ああ…ゼルもゲットと同郷だもんな」
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「エルンスト…だよね?」
その名前に隣で聞いていたアルが反応して立ち上がった。そういえば、騎士団の矢を偽造してる件を調べているはずだ。
「それでなんだがな…」
ゼルが話し始める。俺が怪訝な表情になったのか、アルが通訳を求めた。
ゼルの話によると、あの騎士団の矢の羽の材料は国内で取れるある鳥の羽を加工しているのだそうだ。王家の護衛として美しく選ばれた材料で作られていて、あの矢は儀礼用であり実用のものとは違うのだそうだ。要するにイベントもの。
その存在を王宮でのほほんと暮らしている皇后一派やエルンストが知っているかは怪しい。
「あの羽はうちの国の…いや、ややこしいな、故郷のアヒルの羽を彩色したやつだな。食ったことがあるからわかる」
げっ…!
俺はその証言に凍りついた。
「な、なんて?レイ?」
固まった俺にアルが通訳を急かした。
「あの羽は…ゼルの故郷のものだって」
「…な…!ベン様にすぐ報告を」
「うん!」
アルの目が大きく見開かれた。
まてまて、ゼルの故郷って、皇后の故郷じゃん!
なんとなくだけど、俺たちに立ち塞がる大きな得たいの知れないものが見えてきたような気がした。
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