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本編
皇后対決
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皇后が完全に表情を無くしたのを見てしまった。
人間、怒りすぎるとどんな顔していいのかわかんなくなるのかな。こっわ…。
「そ…それは陛下が直接おっしゃったのでしょうか、それとも…」
「シュワルツではないですよ、残念ながら」
絞り出したような皇后の声に、ベンがクスッと笑い、皇后ご一行様は青ざめた。
ポケットマネーにしては安くはない。それも血税で過ごしてる身、元は外国の王女と言えどそんな金はなかなかポンと出せる額ではない。
ん?それって…。俺は何かのひっかかりを感じたけれど、それはとりあえず置いといた。
「どうです?エルンストは貴方の息子だ、迷惑をかけた責任は保護者にある」
ベンのその言葉に、突然皇后が高らかに笑った。
「ほほほ、それを仰るならば陛下もエルンストの父親ですわ。ならばその責任の一端を負うのが筋かと」
ベンはきっとその返答すら予定のものだ。笑みを崩さなかった。
「…父上は、エルンストが王子であることにむしろ感謝しろと仰ったのですが…どういう意味かわかりますか?」
しばらく部屋にかなり重い沈黙が流れた。
ゲットまで固まっている。
「ま、ま、まさか!エルンストは間違いなく陛下のお子です!ベンとはいえ許しませんよ!一体なにを?」
「…は?私は何も言ってないですよ?ま、そこは父上と貴方の問題ですから私には関係ありませんし。この責任さえとって頂ければ結構です。あと、エルンストと貴方はレイに一切近づくな。もしまた何かしてくるようならば…」
「ど、どうなさるっていうの?」
皇后がきっ、とベンを睨み付けた。うわぁモンスターは違うね、まだ気力があるんだな。
「ふふ、それはご想像にお任せします」
ベンが満面の笑顔でそう言ったとたん、部屋にぞくりとした恐怖が流れた。
全力で潰します、とか覚えておいてください、とか普通はそう言うもんじゃないの?なんか斜め上をいっただけに怖さが倍増した。
ベンに逆らうのは絶対やめよう…。
「くっ!宰相譲りの大口、嫌らしいったら!」
「最高の賛辞ですね。用は済んだ、お引き取りいただきしましょう、アル」
「はっ」
アルがベンに呼ばれ、カツカツと足音を鳴らして進み出て、ドアを勢いよく全開し、出ていけとばかりに頭を下げた。
「お、お前は…まさか、帰って…!」
皇后がアルを見て仰天した。
「忘れたい顔でしょうに、覚えていてくださったとは光栄です。レイの護衛として王命を賜りました。レイに仇なすものは誰であろうと敵として切り刻みますのでしかとお心に留めてくださいますようお願い申し上げます」
さ、最後の言葉にドスが利いてる…!
皇后はくわっ!と俺を睨み付けるとドカドカと足音をやかましく踏み鳴らして出ていった。
とりあえず敵は退散…。俺はへなへなとゲットの毛皮でふわふわの首に顔をめりこませた。
聞いてるだけで疲れた…。するとベンの手のひらが俺を撫でて、抱き締められた。
人間、怒りすぎるとどんな顔していいのかわかんなくなるのかな。こっわ…。
「そ…それは陛下が直接おっしゃったのでしょうか、それとも…」
「シュワルツではないですよ、残念ながら」
絞り出したような皇后の声に、ベンがクスッと笑い、皇后ご一行様は青ざめた。
ポケットマネーにしては安くはない。それも血税で過ごしてる身、元は外国の王女と言えどそんな金はなかなかポンと出せる額ではない。
ん?それって…。俺は何かのひっかかりを感じたけれど、それはとりあえず置いといた。
「どうです?エルンストは貴方の息子だ、迷惑をかけた責任は保護者にある」
ベンのその言葉に、突然皇后が高らかに笑った。
「ほほほ、それを仰るならば陛下もエルンストの父親ですわ。ならばその責任の一端を負うのが筋かと」
ベンはきっとその返答すら予定のものだ。笑みを崩さなかった。
「…父上は、エルンストが王子であることにむしろ感謝しろと仰ったのですが…どういう意味かわかりますか?」
しばらく部屋にかなり重い沈黙が流れた。
ゲットまで固まっている。
「ま、ま、まさか!エルンストは間違いなく陛下のお子です!ベンとはいえ許しませんよ!一体なにを?」
「…は?私は何も言ってないですよ?ま、そこは父上と貴方の問題ですから私には関係ありませんし。この責任さえとって頂ければ結構です。あと、エルンストと貴方はレイに一切近づくな。もしまた何かしてくるようならば…」
「ど、どうなさるっていうの?」
皇后がきっ、とベンを睨み付けた。うわぁモンスターは違うね、まだ気力があるんだな。
「ふふ、それはご想像にお任せします」
ベンが満面の笑顔でそう言ったとたん、部屋にぞくりとした恐怖が流れた。
全力で潰します、とか覚えておいてください、とか普通はそう言うもんじゃないの?なんか斜め上をいっただけに怖さが倍増した。
ベンに逆らうのは絶対やめよう…。
「くっ!宰相譲りの大口、嫌らしいったら!」
「最高の賛辞ですね。用は済んだ、お引き取りいただきしましょう、アル」
「はっ」
アルがベンに呼ばれ、カツカツと足音を鳴らして進み出て、ドアを勢いよく全開し、出ていけとばかりに頭を下げた。
「お、お前は…まさか、帰って…!」
皇后がアルを見て仰天した。
「忘れたい顔でしょうに、覚えていてくださったとは光栄です。レイの護衛として王命を賜りました。レイに仇なすものは誰であろうと敵として切り刻みますのでしかとお心に留めてくださいますようお願い申し上げます」
さ、最後の言葉にドスが利いてる…!
皇后はくわっ!と俺を睨み付けるとドカドカと足音をやかましく踏み鳴らして出ていった。
とりあえず敵は退散…。俺はへなへなとゲットの毛皮でふわふわの首に顔をめりこませた。
聞いてるだけで疲れた…。するとベンの手のひらが俺を撫でて、抱き締められた。
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