上 下
32 / 93
本編

ベンの思い

しおりを挟む
あれから迷惑なのにちょくちょくクレオンが遊びに来るようになった。さすがにベンのいないときは部屋には入らないけれど、クレオンはとにかくベンのことが好きなようで、一向に離れるそぶりはない。

幼馴染みだから、俺より前のつきあいだし邪魔はできない。でも、どうも恋愛ではなくただの友情なようだ。

それより。

クレオンが俺に馴れ馴れしい。ベンははっきりいって気づいていない。
ゲットも悪い人じゃないと言って懐いてるし、どうもゼルまで陥落している。

俺にとっては皇后側の人でしかないんだけれど…だけど、俺よりここに関係が深いから無下にはできないんだ。

まあ、でも、仲よくなるにつれ彼の色んなことがわかってきた。

「クレオンの兄君はご息災か?」

ベンが本棚を整理しながらクレオンに尋ねた。クレオンの兄君?そう思っているとクレオンが笑って答える。

「ああ、元気だよ。時々起きて散策したりしてる」
「それはよかった」

ベンがほっとしたような顔をした。
起きて散策?ん?病弱なのか?俺が不思議そうな表情をしていると、クレオンが笑って教えてくれた。

「俺の兄は生まれつき病弱でね…でも、先代国王の遺言で彼が跡継ぎなんだ。それはそれで大変なんだけど…でも、優しくていい兄上だよ」

わ、なかなかもめるやつだ。

「嘘だ、クレオンの兄が優しいわけねえよ」

隣で豹のゲットが不満そうに言った。そうか、ゲットはクレオンのもとで生まれたから知ってるんだ。

「わがままで、いつもクレオンをいじめてきたくせに。俺だって殴られたのは覚えてる。あんなやつが国王になったら最悪だ。みんなクレオンが国王になるのを願ってるんだよ」

そ、そうなのか…。それでも俺には兄が優しいというクレオン、気を遣ってくれてるのか俺にはバレたくないのか…。

ベンは少し複雑そうな表情をしていた。たぶん、クレオンの事情を知ってるんだな。

「ベンにはあんな素敵なヴォルフがいていいなぁ」

クレオンが少し遠い目をして言った。

「うん?ヴォルフ?ああ…」

そんなクレオンにあからさまに兄の自慢はできないよなベン…。

そうか。クレオンはあんな優しい兄のいるベンが幼い頃から羨ましかったのかな。だから何でもベンのものを欲しがってたのかもしれない。

「ベンは何でも持ってるな、ほんとに。こんなすばらしいレイがそばにいて…同じ王子なのに俺とは天地の差」

そういうクレオンの心の闇を見た気がして俺は少し目を伏せた。

するとベンが俺を抱き寄せて指を絡めてきたので、少し驚いて彼を見るとクレオンを優しく切ない表情で見つめている。

ベンも同じ思いなんだな…。優しいベン。大好き。

俺はベンの指をきゅっ、と軽く握って撫でた。
















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に飛ばされた僕の従騎士生活

コプラ
BL
気づけば大学生の僕は戦いに明けくれる騎士の従者になっていた。僕の神社由来の力が敵から狙われる⁉︎ 目の前で生死をやり取りする雄々しい彼らの元で何とか生き抜こうとする僕の波瀾万丈な毎日。 #異世界の中で無意識成り上がり#スパダリ攻略し過ぎて激甘展開に⁉︎ #自覚なしの甘えた#周囲を翻弄 #スパダリの苦悩 ※印は背後注意が正解です(萌えるエロを目指してます汗) ♡戦国時代の衆道をイメージして書いてます♡騎士同士の厳しい状況下での甘い癒しがお好きな方にオススメです♪ ☆戦闘シーンもあります 第9回BL大賞28位

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。 短編用に登場人物紹介を追加します。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ あらすじ 前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。 20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。 そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。 普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。 そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか?? ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。 前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。 文章能力が低いので読みにくかったらすみません。 ※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました! 本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

処理中です...