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本編

ベン激怒り

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とうとうベンの出番が来てしまった。うわぁドキドキする…違う意味で!

どうか俺に気づかないでほしい。

だけれども…このクレオンが余計なことをしやがった。

「ベン、がんばれー!」

うわ!声かけんじゃねえ!

すると闘技場に出てきた甲冑姿のベンが剣を構えたと同時にこの声が発せられた。クレオンの声にぎょっとしたベンがこちらを見て…。

固まった?フリーズしてるような気がした。
俺だよね?完全に俺を認知したよね?

ベンの相手はからだが一回り大きい屈強そうな騎士。見るからに鍛えてるのがわかる。

「おお、あいつ強いぞ…知ってる」

エルンストが声を上げた。強いのか、ベンがんばって!俺は心の中で祈る。

そして試合がはじまった。

やはり、微妙な戦いになってしまっている。弱くはないもののベンの動きは精彩を欠いていた。恥ずかしいのかな?

俺に余程見られたくなかったのかな…。そう思うと何だか悲しくなってくる。

俺はカッコいいベンが見たい、応援したかったのに。
やっぱりそんなに迷惑だったんだ…俺がいるだけで負けちゃうくらいに。

予想通りの展開に皇后一派は満足そうだ。ニヤニヤしながらベンを見ているのがすごく腹立たしかった。

少しベンが優勢になった。相手の剣を受けてるだけだったのが攻めに転じ始めている。

「あら、クレオン、ベンががんばってるわよ、レイから応援するように言ってやりなさい」
「はい」

すると、クレオンが俺の腰にするっと手を廻して抱き寄せようとした。

「あ、ちょっと!やだっ…!」

俺は身をよじってそれから逃れるために声を上げた。それにも関わらずクレオンは俺の脇から胸にかけて指を伸ばし、俺の胸に触れ、周囲にみえないようにこっそりと服の上から乳首を探し当てた。暴れようとするけれど、クレオンの腕には到底叶わない。

「や、やだ…いや…!」

乳首の先を擦られ、さすがに声を出すのがためらわれた俺は唇を噛んで耐えようとした。

すると。

ベンが相手の騎士を一撃で倒した。

あれ?さっき優勢にはなってたけどいい勝負だったはずなのに。もう瞬殺?そんなあっけない幕切れだ。
相手の騎士はうずくまり、気を失ってしまった。

ざわつく闘技場内。そして。

クレオンのマントの一部がいきなり捲れ上がり、階段状になっている壁に勢いよく張り付いた。

それは。マントに短剣がぶっ刺さり、壁に杭のように打ち込まれたからだった。

その一撃に引っ張られたクレオンが俺に触れていた手を外された形になる。

その短剣は遠く離れたベンの手から放たれたもの。
投げたポーズのベンが体勢を整え、一気にこちらへ走ってきたのだ。数秒とかからず俺は抱き上げられてベンの腕の中に収められる。

「…こんな特等席に招待してもらえたとは、レイ、皇后さまにお礼を言うんだな」

ベンが俺をお姫様抱っこしながら、皇后を睨み付けてそう言った。

「あ、ありがとう、ございました…」

俺がたどたどしく礼を言うと、皇后達の顔から笑顔が消える。

「帰ろうか、戦いを楽しみたかったけど早く終わらせる事にしたんだ」

そうだったのか…ほんとは騎士よりめちゃくちゃ強いんだなベン…。かっこいい、俺の王子様だ。
「ごめんなさい…邪魔しちゃった…」

しゅんとして頭を垂れるとベンが笑った。

「俺の戦うところ見たかったんだろ?」
「うん、カッコよかった」
「そっか」

「…ベン」

ベンが放った短剣を壁から抜きながらクレオンが彼を呼んだ。ベンがクレオンを睨んだ。

「お前がここに来てたとはな…隣国の王子がなんだってこんなところに」

隣国の王子?クレオンが?俺は目が?になる。

「しばらくここに留学するんだよ、この大国を見習って、王になるためにね、伯母上である皇后様がいつまでもいていいって言ってくれてるから、好きなだけいるよ、よろしくな。昔のようにまた遊ぼう、良かったらレイも一緒に」

俺の名前を呼んだクレオンがニヤリと笑った。







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