14 / 93
本編
転生者である俺の告白
しおりを挟む
演奏を終えた俺に、目を潤ませたベンが俺を抱き締めて尋ねてきた。
「この曲はレイの作ったものなのか…?とにかく素晴らしいんだが」
「あ、いや、違う…」
これは世界の巨匠が作った、俺の世界ではとても有名な曲ばかりだ。
「じゃ、誰が?あの国ににそんな素晴らしい曲を作る作曲家がいるなど聞いたことがないぞ」
そ、そうだよね、その通りです。これは俺の前世の昔からの巨匠が作り上げた歴史的超有名曲。そんなことも考えずうっかり弾いてしまったことを後悔した。
「あ、あの…でも、俺じゃないの…」
「レイ、そういう隠し事は嫌だと言った筈だが」
ぱくぱくと挙動不審な俺に、ベンの眉間が険しくなる。
だってそれを言ったら…。
「レイ」
もう一度、ベンが俺を低い声で呼んだ。とうとう俺は観念してしまった。
「お、怒らないで聞いてくれる?言うの遅いとか、嫌いになるとかやめてね…」
「は?なる訳がないだろう?言わないほうが怒るわ」
早く言えとばかりにベンが俺の額に自分の額をゴチンと当てた。痛い、でもその仕草にもキュンとしてしまう自分がいる。
「俺ね…前世の記憶があるんだ、よ」
ベンの目がみるみるうちに見開かれる。
「レイお前…て…」
「そう、転生者。異世界から転生した音楽家だったんだ。さっきの曲は俺の世界では有名な曲。もう弾かない、これからはこの国の曲を弾くから楽譜をちょうだい」
あまりのことにベンが言葉を失っている。
「たいして驚くことじゃないよ。人に初めて言ったけど…親にも誰にも黙ってたんだ」
「俺の他には誰も知らないのか?」
「ん」
しばらく考えてからベンが俺を抱き締める。
「誰にも言わないほうがいい。俺の胸のうちにおさめておく、伝説がデリケートすぎる事案だからな…」
転生者を手に入れた者は王座が約束されるという伝説。
ベンは王位継承第二位だ。一位には兄のヴォルフがいる。俺の存在はヴォルフの王冠を危うくするものだ。それはベンも望んでいない。
ベンが駄礼もいないこの部屋で俺を膝にのせ、唇を奪うようなキスをする。
「ん…っ」
思わず吐息がもれてしまう。
「だからといってレイは私のなかでは何も変わらない、私の愛しいレイだ」
「ベン…」
そんな甘い言葉をピンポイントにくれる、この痒いところにいちいち届く感じが好き!俺はベンの首に手を巻き付ける。
「すぐに有名どころの楽譜を揃えよう。早くレイの演奏が聞きたい。部屋に戻ろうか、その楽器は父上に頂けるよう手配するから安心して持って帰ろうな」
俺の手にしっくりなじむ、最高の楽器が手にはいった。
部屋に戻るとベンが抱き締めて、またキスをしてきて、俺たちはまた愛し合った。
あの楽器の部屋で、誰かが俺たちの話を聞いていたなんて思いもしないで。
「この曲はレイの作ったものなのか…?とにかく素晴らしいんだが」
「あ、いや、違う…」
これは世界の巨匠が作った、俺の世界ではとても有名な曲ばかりだ。
「じゃ、誰が?あの国ににそんな素晴らしい曲を作る作曲家がいるなど聞いたことがないぞ」
そ、そうだよね、その通りです。これは俺の前世の昔からの巨匠が作り上げた歴史的超有名曲。そんなことも考えずうっかり弾いてしまったことを後悔した。
「あ、あの…でも、俺じゃないの…」
「レイ、そういう隠し事は嫌だと言った筈だが」
ぱくぱくと挙動不審な俺に、ベンの眉間が険しくなる。
だってそれを言ったら…。
「レイ」
もう一度、ベンが俺を低い声で呼んだ。とうとう俺は観念してしまった。
「お、怒らないで聞いてくれる?言うの遅いとか、嫌いになるとかやめてね…」
「は?なる訳がないだろう?言わないほうが怒るわ」
早く言えとばかりにベンが俺の額に自分の額をゴチンと当てた。痛い、でもその仕草にもキュンとしてしまう自分がいる。
「俺ね…前世の記憶があるんだ、よ」
ベンの目がみるみるうちに見開かれる。
「レイお前…て…」
「そう、転生者。異世界から転生した音楽家だったんだ。さっきの曲は俺の世界では有名な曲。もう弾かない、これからはこの国の曲を弾くから楽譜をちょうだい」
あまりのことにベンが言葉を失っている。
「たいして驚くことじゃないよ。人に初めて言ったけど…親にも誰にも黙ってたんだ」
「俺の他には誰も知らないのか?」
「ん」
しばらく考えてからベンが俺を抱き締める。
「誰にも言わないほうがいい。俺の胸のうちにおさめておく、伝説がデリケートすぎる事案だからな…」
転生者を手に入れた者は王座が約束されるという伝説。
ベンは王位継承第二位だ。一位には兄のヴォルフがいる。俺の存在はヴォルフの王冠を危うくするものだ。それはベンも望んでいない。
ベンが駄礼もいないこの部屋で俺を膝にのせ、唇を奪うようなキスをする。
「ん…っ」
思わず吐息がもれてしまう。
「だからといってレイは私のなかでは何も変わらない、私の愛しいレイだ」
「ベン…」
そんな甘い言葉をピンポイントにくれる、この痒いところにいちいち届く感じが好き!俺はベンの首に手を巻き付ける。
「すぐに有名どころの楽譜を揃えよう。早くレイの演奏が聞きたい。部屋に戻ろうか、その楽器は父上に頂けるよう手配するから安心して持って帰ろうな」
俺の手にしっくりなじむ、最高の楽器が手にはいった。
部屋に戻るとベンが抱き締めて、またキスをしてきて、俺たちはまた愛し合った。
あの楽器の部屋で、誰かが俺たちの話を聞いていたなんて思いもしないで。
90
お気に入りに追加
4,169
あなたにおすすめの小説
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる