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本編

ベンの部屋に

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俺はベンの部屋に案内された。

「レイを連れてきたら一緒に住もうと勝手に思ってたんだけど…いいだろうか?」

暖色系のインテリアに統一された、シンプルネイルながらにもセレブ感のある部屋だった。二人で住むにも充分広い。なんかの観光番組で見た、何部屋もあるスイートルームのようだ。さすがは大国の王子だと思った。

「必要なものはゆっくり揃えよう」

そう言って部屋の確認をするようにベンが色々と見て回っている。留守にしてる間にも手入れはしっかりされてたんだな。俺なんて自分ちである公爵の城は荒れ果ててたぞ。

クリーム色のソファにヒョウの置物があったので、それにもたれるようによいしょと腰かける。

つるっとした毛皮。
あれ?なんか温かいような。

そろりそろりと置物を見ると、目が合ってしまった。

不安なので目をそらし、二度見した。

やっぱり目が合う。

「これ良くできてるなぁ」

と呟いて顔の部分を撫でようと手を伸ばし、口の辺りをぐいぐいとさすったら…。

かぱっ。

「いっ!!?」

いきなり剥製の口が軽く開いて、噛まれそうになって手を引っ込めた。

「…バカな人間だな、俺を剥製と間違えたな」

ひ、ヒョウが喋った!?

「だって、そんな全く動かなかったから間違うし、だいたい部屋にそんな危険動物いるとは思わないじゃん!」

俺はヒョウに思いっきりぶちまけ、二人はしばらく沈黙した。

「…お前、俺の言葉がわかるのか?」
「え?普通にわかるじゃん」
「いや、普通わからないぜ、俺、危険動物たわしな」

イケメンボイスでヒョウがべらべら喋ってる…。

「マジで?俺しかわかんないの?」

ヒョウはこくこくと頷いた。

「ああ。そんな人間初めて会った。お前はもしかして、ベンがよく言ってた白い妖精か」
「白い…妖精とか自分では恥ずかしすぎてわかんないんだけど、そう呼ばれてたみたいだね、どっかの寒い地域のお土産みたいな呼称だよな…」

ヒョウはぷっ、と笑うと俺に顔をすりつけた。

「俺はゲット。ベンの親友だ」
「親友…」
「ああ、いつもベンはそう言ってくれてる」

ペットとかよりずっといいね、その呼び方。

「なんだゲット、もう仲良くなったのか?」

なにやら荷物を運んできたベンと使用人たちが現れ、彼が俺たちに話しかけた。ゲットがソファから飛び出してベンにじゃれつく。

「グォウ」
「ただいまゲット、レイと仲良くなれてよかった。…レイ、お前の荷物、置いとくぞ」

ベンにはゲットの言葉は普通の動物語のようだ。俺には今のは二重音声に聞こえた。

ベンが俺のために用意してくれた服や生活用品がすぐに整えられていく。

本当に、新生活が始まったんだと実感した。




















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