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髪の毛
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119 髪の毛
目覚めるとフェルの腕の中だった。腕を伸ばして暖房をつける。そしてフェルの腕の中に戻ってまた目を閉じた。
今日は仕事は休み。だから2度寝したって良いのだ。
そのままフェルの胸に顔を埋める。
柔らかくて、暖かい。いい匂いがする。たまには良いよね。幸せな温もりに包まれてふたたび意識を手放した。
目を覚ました時もフェルの腕の中にいた。頭の後ろがなんかムズムズする。
少し体を起こすと僕を見つめるフェルの顔があった。
「起きたのか。あまりに気持ちよさそうに寝ていたからな。起こすのも悪いと思ってそのままにしておいた」
「今何時?」
頭の後ろを触ると髪の毛が編み込んである。なにこれ?三つ編み?
「もうすぐ9時だな。すまぬ。少し退屈してケイの髪の毛で遊んでいた。似合うぞ。とても可愛い」
「え?これどうやったらほどけるの?」
「今ほどいてやるから向こうをむいてろ」
フェルが優しく僕の髪の毛をほどきブラシをかけてくれる。
「髪の毛伸びたのではないか?少し切ってやろうか?」
「じゃあお願いしようかな。あんまり長いと仕事で邪魔になったりするからね」
朝ごはんを食べてからフェルに髪を切ってもらった。意外とフェルは器用で、仕上がりもいい感じだった。
「フェルはもう髪の毛伸ばさないの?」
足元に敷いた布に落ちた僕の髪の毛を麻の袋にまとめているフェルに何気なく聞いてみる。
「どうかな。あまり長いと洗う時に面倒なのだ。村を出た時にバッサリ切って良かったと思ってはいるのだが。ケイは長い方が好きか?」
「まあ、前ほど長くはなくても、もう少し長い髪の方が好きかな。森で出会った時のフェルってお姫様みたいだったもの」
フェルの顔が赤くなる。
「そ、そうか……ならばもう少し髪を伸ばしても、良いかもな。ケイが好みだ……と言うなら仕方ない」
少し動揺しているフェルもかわいい。
髪を切ってもらった後はフェルと一緒に訓練をする。
フェルは素振りをして、僕は弓の練習だ。
お昼ご飯を食べたらガンツの工房に向かう。
製氷皿を受け取ったら、また納期が迫っているものがあるから手伝って行けと言われた。
これ解体用のナイフかな。20本丁寧に仕上げの研ぎをする。前より歪んでいるものが少なくなったとガンツに言うと、皆僕の研ぎ方を参考にして上達しているのだと言われる。今日もお弟子さんが何人か見学に来ていた。
今日の仕事のお代は新しい道具を作ってもらうことで相殺する。
ゆで卵のスライサーを作ってもらった。2個作ってもらったからお店にも置いておこう。サラダを作る時に便利だ。
その後ガンツとお茶を飲みながら話をする。
炊飯器の開発の目処がたったそうだ。3男が土鍋を作れる職人を何人か引き抜いてきたらしい。
一升炊ける大型のものを5台ほどお願いした。
お風呂に行く前にゼランドさんの商会で買い物をする。
お弁当箱をもう2個買い足した。
フェルがもう一着エプロンが欲しいと言うので、エリママの店で選んだ。
薄いピンクのすっきりとしたデザインのものを選んで、頭に結ぶハンカチもそれに合った色のものを買った。
そしてまたゼランドさんの商会に戻って、フェルがエプロンのポケットに入るメモ帳を買った。
シンプルな便箋が目に留まったので、僕はそれを買うことにした。丈夫な油紙で作られた封筒も買う。
公衆浴場に行きお風呂に入る。今日は髪を切ってもらったから念入りに頭を洗った。
髪の毛を乾かしながら明日の予定をフェルに聞く。
フェルはまたゴブリン退治に行くそうだ。明日は新人冒険者のパーティと一緒らしい。また8時にギルド前に集合するのだだそう。
夕食は肉じゃがを作ってみた。ゴードンさんちのジャガイモが本当に美味しいから作ってみたくなった。
出汁は前に作った肉味噌を少しと、干した小魚を粉末にしたものを少し入れる。
肉は薄切りにしたオーク肉を使った。
先にお砂糖を入れて少し煮込む。玉ねぎ、ニンジン、じゃがいもの順に煮込み、じゃがいもに半分くらい火が通った頃に醤油と味醂を入れてオーク肉を入れて落とし蓋をする。ちょうどいい大きさの蓋があって良かった。じゃがいもに火が通ったら一度火を止めて冷ましておく。味見をしたけど、出汁の味が、やっぱり記憶とは少し違う。これはこれで美味しいのだけれど、何か違うな。鰹節か。どうやったら作れるんだろう。
冷ましている間に味噌汁と、ほうれん草の胡麻和えを作った。
フェルはお茶を飲みながら僕が料理する様子を見ている。なんだか楽しそうだ。
だいたい準備ができたら肉じゃがの仕上げをする。
弱火で焦がさないように気をつけながら、肉じゃがの水分を飛ばしていく。
前世の記憶にある肉じゃがは水分を飛ばして、少しじゃがいもの表面が粉を吹くくらいにしていた。崩れないように注意して鍋の中のじゃがいもを転がした。
なんだか地味な夕食になったけど、とても美味しそうだ。
フェルがじゃがいもを必死で冷まして、次々に口に入れる。もっと一気に食べたいみたいだけど、まだじゃがいもの芯が熱いらしい。
逃げないからゆっくり食べればいいのに。
オーク肉を入れるタイミングかな?それとも肉の厚みかな?少しだけオーク肉が硬かった。
レシピ帳に今日の肉じゃがのレシピを書いて、反省点を隅の方に書いておいた。
明日は昨日より少しだけ上手くやろう。
フェルの言う通りひとつひとつできるようになって行けばいいんだ。
レシピを書き終えたら、素振りを終えたフェルが布団の中に入って来た。
くっついて今日も眠った。
目覚めるとフェルの腕の中だった。腕を伸ばして暖房をつける。そしてフェルの腕の中に戻ってまた目を閉じた。
今日は仕事は休み。だから2度寝したって良いのだ。
そのままフェルの胸に顔を埋める。
柔らかくて、暖かい。いい匂いがする。たまには良いよね。幸せな温もりに包まれてふたたび意識を手放した。
目を覚ました時もフェルの腕の中にいた。頭の後ろがなんかムズムズする。
少し体を起こすと僕を見つめるフェルの顔があった。
「起きたのか。あまりに気持ちよさそうに寝ていたからな。起こすのも悪いと思ってそのままにしておいた」
「今何時?」
頭の後ろを触ると髪の毛が編み込んである。なにこれ?三つ編み?
「もうすぐ9時だな。すまぬ。少し退屈してケイの髪の毛で遊んでいた。似合うぞ。とても可愛い」
「え?これどうやったらほどけるの?」
「今ほどいてやるから向こうをむいてろ」
フェルが優しく僕の髪の毛をほどきブラシをかけてくれる。
「髪の毛伸びたのではないか?少し切ってやろうか?」
「じゃあお願いしようかな。あんまり長いと仕事で邪魔になったりするからね」
朝ごはんを食べてからフェルに髪を切ってもらった。意外とフェルは器用で、仕上がりもいい感じだった。
「フェルはもう髪の毛伸ばさないの?」
足元に敷いた布に落ちた僕の髪の毛を麻の袋にまとめているフェルに何気なく聞いてみる。
「どうかな。あまり長いと洗う時に面倒なのだ。村を出た時にバッサリ切って良かったと思ってはいるのだが。ケイは長い方が好きか?」
「まあ、前ほど長くはなくても、もう少し長い髪の方が好きかな。森で出会った時のフェルってお姫様みたいだったもの」
フェルの顔が赤くなる。
「そ、そうか……ならばもう少し髪を伸ばしても、良いかもな。ケイが好みだ……と言うなら仕方ない」
少し動揺しているフェルもかわいい。
髪を切ってもらった後はフェルと一緒に訓練をする。
フェルは素振りをして、僕は弓の練習だ。
お昼ご飯を食べたらガンツの工房に向かう。
製氷皿を受け取ったら、また納期が迫っているものがあるから手伝って行けと言われた。
これ解体用のナイフかな。20本丁寧に仕上げの研ぎをする。前より歪んでいるものが少なくなったとガンツに言うと、皆僕の研ぎ方を参考にして上達しているのだと言われる。今日もお弟子さんが何人か見学に来ていた。
今日の仕事のお代は新しい道具を作ってもらうことで相殺する。
ゆで卵のスライサーを作ってもらった。2個作ってもらったからお店にも置いておこう。サラダを作る時に便利だ。
その後ガンツとお茶を飲みながら話をする。
炊飯器の開発の目処がたったそうだ。3男が土鍋を作れる職人を何人か引き抜いてきたらしい。
一升炊ける大型のものを5台ほどお願いした。
お風呂に行く前にゼランドさんの商会で買い物をする。
お弁当箱をもう2個買い足した。
フェルがもう一着エプロンが欲しいと言うので、エリママの店で選んだ。
薄いピンクのすっきりとしたデザインのものを選んで、頭に結ぶハンカチもそれに合った色のものを買った。
そしてまたゼランドさんの商会に戻って、フェルがエプロンのポケットに入るメモ帳を買った。
シンプルな便箋が目に留まったので、僕はそれを買うことにした。丈夫な油紙で作られた封筒も買う。
公衆浴場に行きお風呂に入る。今日は髪を切ってもらったから念入りに頭を洗った。
髪の毛を乾かしながら明日の予定をフェルに聞く。
フェルはまたゴブリン退治に行くそうだ。明日は新人冒険者のパーティと一緒らしい。また8時にギルド前に集合するのだだそう。
夕食は肉じゃがを作ってみた。ゴードンさんちのジャガイモが本当に美味しいから作ってみたくなった。
出汁は前に作った肉味噌を少しと、干した小魚を粉末にしたものを少し入れる。
肉は薄切りにしたオーク肉を使った。
先にお砂糖を入れて少し煮込む。玉ねぎ、ニンジン、じゃがいもの順に煮込み、じゃがいもに半分くらい火が通った頃に醤油と味醂を入れてオーク肉を入れて落とし蓋をする。ちょうどいい大きさの蓋があって良かった。じゃがいもに火が通ったら一度火を止めて冷ましておく。味見をしたけど、出汁の味が、やっぱり記憶とは少し違う。これはこれで美味しいのだけれど、何か違うな。鰹節か。どうやったら作れるんだろう。
冷ましている間に味噌汁と、ほうれん草の胡麻和えを作った。
フェルはお茶を飲みながら僕が料理する様子を見ている。なんだか楽しそうだ。
だいたい準備ができたら肉じゃがの仕上げをする。
弱火で焦がさないように気をつけながら、肉じゃがの水分を飛ばしていく。
前世の記憶にある肉じゃがは水分を飛ばして、少しじゃがいもの表面が粉を吹くくらいにしていた。崩れないように注意して鍋の中のじゃがいもを転がした。
なんだか地味な夕食になったけど、とても美味しそうだ。
フェルがじゃがいもを必死で冷まして、次々に口に入れる。もっと一気に食べたいみたいだけど、まだじゃがいもの芯が熱いらしい。
逃げないからゆっくり食べればいいのに。
オーク肉を入れるタイミングかな?それとも肉の厚みかな?少しだけオーク肉が硬かった。
レシピ帳に今日の肉じゃがのレシピを書いて、反省点を隅の方に書いておいた。
明日は昨日より少しだけ上手くやろう。
フェルの言う通りひとつひとつできるようになって行けばいいんだ。
レシピを書き終えたら、素振りを終えたフェルが布団の中に入って来た。
くっついて今日も眠った。
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