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サンドラ姉さん
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115 サンドラ姉さん
「ケイくん、ちゃんとお水とか飲んでる?店のコップは自由に使っていいからちゃんと水分補給するのよ。夏場なら倒れちゃうこともあるんだから」
とにかく夢中でやっていたから、水を飲むと言う発想がなかった。気づけばけっこう汗もかいている。
「小僧。昼はこんな感じだ。焦らずに自分ができる範囲のことができてればいい。そこの野菜の皮をむいて、ロイに聞いて下処理をしておけ。そのあと昼飯だ」
賄いを作るロイに聞きながら、野菜を指定された大きさに切る。
あー、これがビーフシチューに使うやつね。そしてこっちはフライドポテトか。
その日どれだけ用意するかは日によって変わったりもするけど、ビーフシチューはいつも分量が決まっていて、それ以外はボードに書いてある量を用意することになっているらしい。ボードの見方も教えてもらった。
今日は休み明けだったから朝ボードに指示がなかったのだそうだ。普段は前の日の在庫を見たり、お客さんの入る量を見越してアレクサンドラ姉さんか、師匠がボードに仕込みの指示を残していくそうだ。
ロイは食糧庫の余った野菜でキッシュを作り、パンと今日のスープと一緒に出してくれた。
パンに良く合った味付けのキッシュは美味しかった。スープも悪くない。
だけどアレクサンドラ姉さんの評価は違った。
「ロイー。アンタ新人が来たからって得意な料理を出さなくてもいいじゃない。これ先週も食べたやつよ。新しいことに挑戦しないとダメよ。勉強にならないわ」
「申し訳ないっす。ケイくんが仕事ができるからちょっと無難にいきました。変に失敗した料理を出すよりかはこの方がいいかなって」
「そういうのよくないと思うわ。でもこの料理がいいところは余り物を自由に使えることよね。年明けで、保冷庫の整理をするにはいいとは思うわ。味も悪くないし」
「ロイ、僕も美味しいと思うよ。栄養もあっていい料理だと思う」
「ありがとうっす。休憩したら夜の営業の準備っすよ」
休憩中は自由にお茶を入れて飲んでもいいと言うことだったので麦茶を淹れて飲んだ。ついでに作り置きも作ってしまおうと、氷魔法で氷を作りやかんを冷やしておいた。
「ケイくん。あなた氷魔法が使えるの?何この入れ物」
「僕はあんまり魔力が強い方じゃないんですけど、練習したらなんとかできるようになって。この容器に水を入れて水の温度を魔法で下げていくんです。かなり温度が下がったらこうやって何か衝撃を与えれば」
金属製の製氷皿の中の水があっという間に氷になる。
「ちょっとすごいじゃないの。アタシが作ると塊になっちゃうのよ。ほらこんな風に」
アレクサンドラ姉さんが空中に手をかざせばその手の中に魔力が集まりあっという間に氷の塊ができる。
「これ割るの結構苦労するのよね。そのお皿、製氷皿っていうの?どこのお店で売ってるの?」
「アレクサンドラさんすごいですよ。僕の魔法じゃそんなことできないですから。製氷皿はガンツって鍛治師に作ってもらったんです。値段はよく知らないけど今度頼んでみましょうか?」
アレクサンドラ姉さんは製氷皿を試して、あっという間に氷を作る。よほど気に入ったのかどんどん氷を量産していく。
すごいなぁ。アレクサンドラ姉さんって魔法がすごくうまいんだ。
「サンドラ!何やってる!どうすんだこの氷。早く片付けろ」
師匠に怒鳴られてアレクサンドラ姉さんは肩をすくめて笑った。
余分な氷を外に捨てて来たアレクサンドラ姉さんは製氷皿を6つ注文した。店の分と自分の分らしい。ガンツのことも知ってた。昔から付き合いがあるらしい。
「アタシ将来は飲み物も提供するお店をやりたいのよ。これなら夏場でも冷たい飲み物を提供できるわ」
アレクサンドラ姉さんは保冷庫の氷を保存しておく場所を教えてくれて、この氷の補充を僕に任せると言った。些細なことだけど任せられて嬉しかった。
「アレクサンドラは長いからサンドラでいいわ。アタシもこれからケイって呼び捨てにするから」
「わかりました。サンドラ……サンドラ姉さんでもいいですか?」
「いいわね。これからはサンドラ姉さんって呼びなさい」
やっぱり姉さんでよかったか。兄さんって言ってたらどうなっちゃったのかな、ぶん殴られてたかも。
午後の仕込みは夜に出すメニューの下拵えになる。メニューを一冊借りてきて、それを見ながらロイにやり方を教えてもらった。教えてもらったことはノートにメモする。
「ケイくんすごいっすね。教えたらすぐどんどんできるようになるじゃないですか」
「忘れないように必死だよ。今日覚えたことだけでもう頭がパンパン」
氷が自由に使えるようになったことでサンドラ姉さんはボウルを2つ使ってハンバーグのタネを冷やしながらこねている。
師匠からはガンツに代金は俺に請求するように言っておけと言われた。製氷皿はどうやら採用らしい。
夜のメニューの主なものをあげていくと、昼出していたハンバーグとオークソテーの他に、ビーフシチューともう一品日替わりのシチュー。オムレツ、コロッケ、チキンカツ、ホーンラビットのもも肉の香草焼き、ロールキャベツなどがある。
あとはおつまみのような細かい単品料理を日替わりで2種類。今日はフライドポテトとホーンラビットのクリーム煮。
サラダは夜は単品の注文になる。日替わりで在庫にある野菜を使って作るのだそうだ。
ドレッシングを指定されて、これを使ってサラダを作れと言われる。
少しマヨネーズに近い酸味の効いたドレッシングだった。
レタスは大量にあるのでそれを使うのは確定で、入れるなら赤いものかな。トマトはないからニンジンを細切りにして少しだけ塩を振って揉み込んで置いておく。
ゆで卵を作ってそれをみじん切りにした。何か少し食感を出したくて、パンを細かく切って油でさっと揚げた。
ちぎったレタスに水気を切ったニンジンを散らして、ゆで卵と即席のクルトンを入れ、最後にドレッシングをかける。
師匠のところに持っていき、味見してもらう。
「原価がかかりすぎだ。ゆで卵は半分にしろ。他はいい。サラダは今日はおまえが作れ」
よかった。大丈夫みたいだ。
サンドラ姉さんもサラダを少し食べて、僕に向かってウインクする。
「ケイ、このパンを揚げたものはもう少し細かくするといいわ。そこのパン2個使っていいから今のうちに作っておきなさい」
丁寧にパンを細かく切ってクルトンを作った。ニンジンも少し作り置いておく。
夜の営業が始まるともうめちゃくちゃだった。
「ケイくんその皿違うっす。コロッケはこっちの皿っすよ」
出来上がった料理はロイと僕で配膳する。その間にサラダの注文が入ったら手早く作らなくてはいけない。
「ロイ!ビーフシチューこれで最後。もうオーダー受けちゃダメよ」
品切れの料理はボードに書き込む。
「オーダー、テーブル3番、Aが3つ、B1つ、サラダ1つとフライドポテトです」
よく出るハンバーグはランチの時の呼び方でオーダーを通す。
「ケイ、カウンター3番とテーブル4番、ビールのおかわり持って行って」
サンドラ姉さんはハンバーグを焼きながらドリンクも作っている。
「お待たせしましたビールです!」
「小僧、上がったぞ。テーブル1番だ」
だんだん混乱してくるけどとにかく言われた通りに動く。
あ、サラダも作らなきゃ。
手早くサラダを盛り付けて3番のテーブルに持っていく。ビールの追加を頼まれたのでサンドラさんに伝えた。
「ケイくん。洗い物が溜まってきたっす。給仕は僕がいくからお願いっす」
いろいろ間に合わなくなってきた、洗い物は水魔法を使って急いで済ませる。
お皿を棚に戻して、また出来上がった料理を運んで……フェルが来たのにも気づかなかった。
「お待たせしました。ロールキャベツです。あ、フェル。ごめん忙しくて気づかなかった。もうそろそろお客さんも減ってくるからゆっくり食べて待ってて」
9時ごろになりお客さんの流れが落ち着くと、師匠が賄いを作ってくれた。
これを食べて片付けをしたら今日はもう終わりでいいとのこと。カウンターのフェルの隣が空いていたからそこで賄いを食べる。
「だいぶ忙しそうだったな」
「夜のメニューはけっこう種類があるからね。いろいろ覚えることがあったりして大変だよ」
今日の賄いはチキンソテーだった。オークのステーキと同じトマトソースがかかっていて、美味しかったのでフェルにも少しあげた。
「なに?2人は知り合いなの?」
「いろいろあって、一緒に住んでいるんです。帰りの時間を合わせたいから、これからもよく食べにくると思います」
「あら、ケイにもそういう人がいたのね。それにしても美人さんね。名前はなんていうの?」
サンドラ姉さんがお茶を飲みながらいろいろ聞いてくる。
「私はフェルという。普段は冒険者をやっている。これからよろしく頼む」
「アタシはアレクサンドラよ。長いからサンドラで良いわ。ケイと同じようにアタシのことはサンドラ姉さんって呼んで。これから仲良くしてくれると嬉しいわ」
賄いを急いで食べ終えて洗い物を片付ける。交代でロイが賄いを食べに行った。
フェルはロイとサンドラ姉さんと3人で楽しそうに話をしている。
「小僧。明日のスープのレシピだ。頭に入れておけ。そのうちお前にも作らせる。材料を朝のうちに用意しておけ。それと店の鍵を渡しておく。明日はロイがいないからな。今日より忙しいぞ」
師匠はそう言って仕事に戻って行った。
後片付けも終わってロイと僕は勤務終了だ。深夜の営業は師匠だけでやるらしい。
サンドラ姉さんは明日の仕込みを少しやったら帰るのだそうだ。
公衆浴場が閉まるので、急いでお風呂に入りに行く。
営業時間ギリギリまでお風呂に浸かって疲れをとる。
洗濯機を回しながらフェルの髪を乾かして、お互い今日あったことを報告しあった。
ずっと緊張してたから、フェルと過ごすいつもの時間にとても癒される。
けっこう疲れてたんだろう。家に戻って布団に入るとそのまますぐ寝てしまった。
フェルが隣で僕の髪を撫でている。
それが気持ち良くてあっという間に眠りに落ちてしまった。
「ケイくん、ちゃんとお水とか飲んでる?店のコップは自由に使っていいからちゃんと水分補給するのよ。夏場なら倒れちゃうこともあるんだから」
とにかく夢中でやっていたから、水を飲むと言う発想がなかった。気づけばけっこう汗もかいている。
「小僧。昼はこんな感じだ。焦らずに自分ができる範囲のことができてればいい。そこの野菜の皮をむいて、ロイに聞いて下処理をしておけ。そのあと昼飯だ」
賄いを作るロイに聞きながら、野菜を指定された大きさに切る。
あー、これがビーフシチューに使うやつね。そしてこっちはフライドポテトか。
その日どれだけ用意するかは日によって変わったりもするけど、ビーフシチューはいつも分量が決まっていて、それ以外はボードに書いてある量を用意することになっているらしい。ボードの見方も教えてもらった。
今日は休み明けだったから朝ボードに指示がなかったのだそうだ。普段は前の日の在庫を見たり、お客さんの入る量を見越してアレクサンドラ姉さんか、師匠がボードに仕込みの指示を残していくそうだ。
ロイは食糧庫の余った野菜でキッシュを作り、パンと今日のスープと一緒に出してくれた。
パンに良く合った味付けのキッシュは美味しかった。スープも悪くない。
だけどアレクサンドラ姉さんの評価は違った。
「ロイー。アンタ新人が来たからって得意な料理を出さなくてもいいじゃない。これ先週も食べたやつよ。新しいことに挑戦しないとダメよ。勉強にならないわ」
「申し訳ないっす。ケイくんが仕事ができるからちょっと無難にいきました。変に失敗した料理を出すよりかはこの方がいいかなって」
「そういうのよくないと思うわ。でもこの料理がいいところは余り物を自由に使えることよね。年明けで、保冷庫の整理をするにはいいとは思うわ。味も悪くないし」
「ロイ、僕も美味しいと思うよ。栄養もあっていい料理だと思う」
「ありがとうっす。休憩したら夜の営業の準備っすよ」
休憩中は自由にお茶を入れて飲んでもいいと言うことだったので麦茶を淹れて飲んだ。ついでに作り置きも作ってしまおうと、氷魔法で氷を作りやかんを冷やしておいた。
「ケイくん。あなた氷魔法が使えるの?何この入れ物」
「僕はあんまり魔力が強い方じゃないんですけど、練習したらなんとかできるようになって。この容器に水を入れて水の温度を魔法で下げていくんです。かなり温度が下がったらこうやって何か衝撃を与えれば」
金属製の製氷皿の中の水があっという間に氷になる。
「ちょっとすごいじゃないの。アタシが作ると塊になっちゃうのよ。ほらこんな風に」
アレクサンドラ姉さんが空中に手をかざせばその手の中に魔力が集まりあっという間に氷の塊ができる。
「これ割るの結構苦労するのよね。そのお皿、製氷皿っていうの?どこのお店で売ってるの?」
「アレクサンドラさんすごいですよ。僕の魔法じゃそんなことできないですから。製氷皿はガンツって鍛治師に作ってもらったんです。値段はよく知らないけど今度頼んでみましょうか?」
アレクサンドラ姉さんは製氷皿を試して、あっという間に氷を作る。よほど気に入ったのかどんどん氷を量産していく。
すごいなぁ。アレクサンドラ姉さんって魔法がすごくうまいんだ。
「サンドラ!何やってる!どうすんだこの氷。早く片付けろ」
師匠に怒鳴られてアレクサンドラ姉さんは肩をすくめて笑った。
余分な氷を外に捨てて来たアレクサンドラ姉さんは製氷皿を6つ注文した。店の分と自分の分らしい。ガンツのことも知ってた。昔から付き合いがあるらしい。
「アタシ将来は飲み物も提供するお店をやりたいのよ。これなら夏場でも冷たい飲み物を提供できるわ」
アレクサンドラ姉さんは保冷庫の氷を保存しておく場所を教えてくれて、この氷の補充を僕に任せると言った。些細なことだけど任せられて嬉しかった。
「アレクサンドラは長いからサンドラでいいわ。アタシもこれからケイって呼び捨てにするから」
「わかりました。サンドラ……サンドラ姉さんでもいいですか?」
「いいわね。これからはサンドラ姉さんって呼びなさい」
やっぱり姉さんでよかったか。兄さんって言ってたらどうなっちゃったのかな、ぶん殴られてたかも。
午後の仕込みは夜に出すメニューの下拵えになる。メニューを一冊借りてきて、それを見ながらロイにやり方を教えてもらった。教えてもらったことはノートにメモする。
「ケイくんすごいっすね。教えたらすぐどんどんできるようになるじゃないですか」
「忘れないように必死だよ。今日覚えたことだけでもう頭がパンパン」
氷が自由に使えるようになったことでサンドラ姉さんはボウルを2つ使ってハンバーグのタネを冷やしながらこねている。
師匠からはガンツに代金は俺に請求するように言っておけと言われた。製氷皿はどうやら採用らしい。
夜のメニューの主なものをあげていくと、昼出していたハンバーグとオークソテーの他に、ビーフシチューともう一品日替わりのシチュー。オムレツ、コロッケ、チキンカツ、ホーンラビットのもも肉の香草焼き、ロールキャベツなどがある。
あとはおつまみのような細かい単品料理を日替わりで2種類。今日はフライドポテトとホーンラビットのクリーム煮。
サラダは夜は単品の注文になる。日替わりで在庫にある野菜を使って作るのだそうだ。
ドレッシングを指定されて、これを使ってサラダを作れと言われる。
少しマヨネーズに近い酸味の効いたドレッシングだった。
レタスは大量にあるのでそれを使うのは確定で、入れるなら赤いものかな。トマトはないからニンジンを細切りにして少しだけ塩を振って揉み込んで置いておく。
ゆで卵を作ってそれをみじん切りにした。何か少し食感を出したくて、パンを細かく切って油でさっと揚げた。
ちぎったレタスに水気を切ったニンジンを散らして、ゆで卵と即席のクルトンを入れ、最後にドレッシングをかける。
師匠のところに持っていき、味見してもらう。
「原価がかかりすぎだ。ゆで卵は半分にしろ。他はいい。サラダは今日はおまえが作れ」
よかった。大丈夫みたいだ。
サンドラ姉さんもサラダを少し食べて、僕に向かってウインクする。
「ケイ、このパンを揚げたものはもう少し細かくするといいわ。そこのパン2個使っていいから今のうちに作っておきなさい」
丁寧にパンを細かく切ってクルトンを作った。ニンジンも少し作り置いておく。
夜の営業が始まるともうめちゃくちゃだった。
「ケイくんその皿違うっす。コロッケはこっちの皿っすよ」
出来上がった料理はロイと僕で配膳する。その間にサラダの注文が入ったら手早く作らなくてはいけない。
「ロイ!ビーフシチューこれで最後。もうオーダー受けちゃダメよ」
品切れの料理はボードに書き込む。
「オーダー、テーブル3番、Aが3つ、B1つ、サラダ1つとフライドポテトです」
よく出るハンバーグはランチの時の呼び方でオーダーを通す。
「ケイ、カウンター3番とテーブル4番、ビールのおかわり持って行って」
サンドラ姉さんはハンバーグを焼きながらドリンクも作っている。
「お待たせしましたビールです!」
「小僧、上がったぞ。テーブル1番だ」
だんだん混乱してくるけどとにかく言われた通りに動く。
あ、サラダも作らなきゃ。
手早くサラダを盛り付けて3番のテーブルに持っていく。ビールの追加を頼まれたのでサンドラさんに伝えた。
「ケイくん。洗い物が溜まってきたっす。給仕は僕がいくからお願いっす」
いろいろ間に合わなくなってきた、洗い物は水魔法を使って急いで済ませる。
お皿を棚に戻して、また出来上がった料理を運んで……フェルが来たのにも気づかなかった。
「お待たせしました。ロールキャベツです。あ、フェル。ごめん忙しくて気づかなかった。もうそろそろお客さんも減ってくるからゆっくり食べて待ってて」
9時ごろになりお客さんの流れが落ち着くと、師匠が賄いを作ってくれた。
これを食べて片付けをしたら今日はもう終わりでいいとのこと。カウンターのフェルの隣が空いていたからそこで賄いを食べる。
「だいぶ忙しそうだったな」
「夜のメニューはけっこう種類があるからね。いろいろ覚えることがあったりして大変だよ」
今日の賄いはチキンソテーだった。オークのステーキと同じトマトソースがかかっていて、美味しかったのでフェルにも少しあげた。
「なに?2人は知り合いなの?」
「いろいろあって、一緒に住んでいるんです。帰りの時間を合わせたいから、これからもよく食べにくると思います」
「あら、ケイにもそういう人がいたのね。それにしても美人さんね。名前はなんていうの?」
サンドラ姉さんがお茶を飲みながらいろいろ聞いてくる。
「私はフェルという。普段は冒険者をやっている。これからよろしく頼む」
「アタシはアレクサンドラよ。長いからサンドラで良いわ。ケイと同じようにアタシのことはサンドラ姉さんって呼んで。これから仲良くしてくれると嬉しいわ」
賄いを急いで食べ終えて洗い物を片付ける。交代でロイが賄いを食べに行った。
フェルはロイとサンドラ姉さんと3人で楽しそうに話をしている。
「小僧。明日のスープのレシピだ。頭に入れておけ。そのうちお前にも作らせる。材料を朝のうちに用意しておけ。それと店の鍵を渡しておく。明日はロイがいないからな。今日より忙しいぞ」
師匠はそう言って仕事に戻って行った。
後片付けも終わってロイと僕は勤務終了だ。深夜の営業は師匠だけでやるらしい。
サンドラ姉さんは明日の仕込みを少しやったら帰るのだそうだ。
公衆浴場が閉まるので、急いでお風呂に入りに行く。
営業時間ギリギリまでお風呂に浸かって疲れをとる。
洗濯機を回しながらフェルの髪を乾かして、お互い今日あったことを報告しあった。
ずっと緊張してたから、フェルと過ごすいつもの時間にとても癒される。
けっこう疲れてたんだろう。家に戻って布団に入るとそのまますぐ寝てしまった。
フェルが隣で僕の髪を撫でている。
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