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 朝は遅めに西の街を出発してギルドに着いたのはもう夕方だった。
 西の街からは街道が整備されていたので馬車もそんなに揺れず快適だった。

 昼食は新人パーティの3人が作ってくれた。小麦粉を練って伸ばしたものを鍋に入れた汁物料理で、素朴な味がして美味しかった。聞けば3人の故郷の郷土料理なんだって。

 村にはそんなのなかったなぁ。まあ、じいちゃんの料理が郷土料理といえばそうか。食堂やってたしな。

 村の名物ってスープだけか。

 会議室で報酬を受け取る。予想以上にホーンラビットが狩れたことと、近隣の地域の発展に協力したとして、王城からも特別報奨金が出て、一人銀貨50枚の報酬が出た。
 その後ギルマスの部屋に呼び出されて、話を聞かれる。

「今回これほどのホーンラビットが駆除できたという報告はすでに王城にも届いてる。これから会議があるが、とりあえずお前たちの仕事は終わりだ。お疲れさん。新人育成の試験的な事も含まれていたが、どうだった?あいつら厳しくなかったか?」

 ギルマスはコーヒーを淹れてくれて、今回の感想を僕たちに聞いてくる。
 
「いえ、むしろかなり丁寧に指導していただいたと思います。連携の取り方を中心に、厳しかったけどとても勉強になりました」

「今回は新人の中でも見込みがありそうなやつを厳選したからな。ここからもっと駆け出しの連中に合わせてどう段取りをつけて行くかだな」

 ギルマスはそう言ってコーヒーを飲む。

「あの狩りのいいところは獲物が次々に出てくるところだな。間違えてもすぐ反省してやり直すことができる。効果的に戦闘の経験を積むならいい方法だと思うぜ」

 これからあの狩りのやり方は新人育成のため、ギルドが報酬を出して定期的に開催するらしい。王国からの援助もあるようだ。
 その後、狩り過ぎたホーンラビットの土地に与える影響を調べ、問題がなければ全ギルドに公開されるそうだ。
 やり過ぎなければ僕たちがこれからあの狩りのやり方でホーンラビットを狩ってきても問題ないけど、大量に狩ってくるのは控えて欲しいとのことだった。
 狩り場の選定もあるのでやりたい場合はギルドに申請して欲しいと言われた。

「それにしても約2000体?1日500体以上か?どんだけ狩って来てるんだよ」

「ははは、ちょっとやりすぎちゃいました」

「王家から報奨金が出るかと思うが、どうする?いくらくらい欲しい?」

「こんなことで商売するつもりはないですよ。こんな狩りのやり方なんていずれ誰かがほっといても思い付いたと思います。そろそろちゃんとした家に住みたいから、その家を借りる費用がもらえたらそれでいいです」

「家賃でいいって、豪華な屋敷がもらえるかもしれないんだぜ」

「そんなの絶対いりません」

 ギルマスの部屋を出て受付にいく。サリーさんがいたので、王都で部屋を借りるにはどうしたらいいのか聞いてみた。
 サリーさんはもうそろそろ業務時間が終わるらしいので、「ギルドの食堂で待ってて」と言って、残りの仕事を片付け始めた。

 食堂で果実水を頼んでサリーさんを待つ。奥の方で黒狼の人たちがお酒を飲んでいた。

「お待たせしちゃってごめんね。部屋を借りたいってことだったわよね」

「はい。でも僕たち何も知らないので、どのくらいのお金が必要かとか教えて欲しいんです」

「大体銀貨5枚から高いところでも10枚くらいでひと月借りられるわ。南地区だと大体6枚から7枚ってとこじゃないかしら。でも物件があるかどうかよね。なかなか部屋が空かないらしいし、王都では建物の数も限られているのよね。新しく建てる土地もないし」

 確かにスラム以外で王都に空き地のようなものはない。

「今、外壁の拡張工事をやっているんだけど、はじめは貴族街の方からやっているからこの辺はまだ先ね。西区の方とかに空きはありそうだけど……ちょっと不便なのよねあの辺。あとは家を買ってしまうっていうのがあるけど……ちょうどいい物件にはなかなか出会えないと思うわ。赤い風の人たちだって家を買うのに3年も待たされたっていうから」

 そうなんだ。なかなか現実は厳しいな。

「どこか街の中で働く場合は下宿する人が多いわ。どこか空いてる部屋を借りてそこに住むの。でも冒険者は嫌がられるのよね。汚れて帰ってきたりするから。だから南支部にいる人たちは宿暮らしをしている人が多いわ。ちょっと割高だけど、月に銀貨10枚から15枚くらいじゃないかしら?」

「あのー実は僕たち、2人で住もうと思っているのですが……それだと宿でも限られてきますよね……」

「あらー?そうなの?なるほどねぇ」

 サリーさんは少しいやらしい目つきで僕らを見る。

「そうなると……。まず下宿は無理ねー。部屋は一応、商業ギルドで紹介してくれたりはするけど、物件があるかどうかはわからないわ。昔はうちでも紹介してたんだけど、貸せる物件がなくなっちゃって、紹介してあげたくてもできないのよ。優秀な冒険者さんたちも、家が買えないからって拠点を移してしまったりするのよね。南の城壁が広がれば、うちでも冒険者のための寮みたいなものを作ろうって話が出てるんだけど、何年先になるかわからないわ」

 とりあえず商業ギルドに行ってみることにしよう。いろいろ教えてくれたサリーさんにお礼を言う。

「あ、そうだわ。ケイくんにいい依頼が紹介できそうなの。明日の午後にギルドに来てくれる?明日は何か依頼を受ける予定だった?」

 明日は炊き出しの準備をして、のんびり過ごすつもりだった。
 明日の午後ギルドに顔を出すことにしてサリーさんと別れた。

 久しぶりの公衆浴場は広くて気持ちが良かった。洗濯物が溜まっていたので、洗濯の魔道具を動かしつつ、フェルの髪を乾かす。

「明日時間があったら商業ギルドに行ってみる?だいぶ貯金も増えたから、部屋は借りれそうだけど、なんか厳しそうだね」

「初めて王都にきた時はだいぶ発展していると感動したが、住人が増えていくと住む場所にも困るのだな」

「たとえばさー。ゴードンさんちのあたりで家を探してそこに住むっていうのもアリだと思うんだけど。ちょっと遠いよね。ゴードンさん朝は3時くらいに起きて、畑の仕事を少しやってから野菜を売りにきてるらしいよ。ちょっと大変だよね」

「ケイは街の中で仕事を探すつもりなのだろう?あそこからでは毎日大変だぞ」

「そうだよねー馬車でも買う?」

「それを置いておくところがないであろう。ギルドでも預かってくれないと思うぞ」

「そうだよねー」

 帰ってからもその話は続いていた。

「宿の部屋が開くのを待って、仮に住めたとしても2人一緒に住めるちょうどいい部屋があるとは限らないし……。別々の宿とかになるくらいだったらもうこのままテントでもいい気がしてきたよ」

「私もそれで構わないぞ。宿が別々になるよりはその方が良い」

「そしたらさーもっとテントの暮らしが楽になる道具とかを買うのに少しお金を使ってみる?」

「それもいいかもしれんな。ガンツに頼めば何か便利なものが出てくるのではないか?」

 ガンツが未来の猫型ロボットみたいに扱われている。

 明日はフェルと午前中訓練をして、午後から買い物と物件探しをしてみることにした。











 


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