フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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装備

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 59 装備

 「しかしこれは不思議な食べ物じゃの。ワシは甘いものはあまり食べんが、これは美味い」

 ガンツがプリンを食べながらしきりと感心している。
 フェルは一口ずつ大切に食べているみたいだ。うれしそうに口に運ぶ姿がかわいい。

「プリンって言うんだよ。ガンツに作ってもらった泡立て器で作ったんだよ」

「材料を混ぜる時に使うと言っておったが、どうじゃった?使いにくいところはあったか?」

「泡立て器は全く問題なかったよ。卵とかをね、大量に溶きたい時とかに使うんだ。あとは他にもいろいろお菓子を作るのに使えるね。料理を出す店なら使いたがると思うよ」

「そうか、クライブのやつにも見せてみるかの。ワシはあまり料理はしないが便利なんじゃろ?これがあると」

「うん。だいぶ違うよ。箸とかでもいいんだけどさ、効率が全然違うんだ。本当は魔道具にして自動でこの先の部分が回転するといいんだけど、そうなると値段も高くなっちゃうからね。いつか余裕ができた時にお願いするよ」

「軸から先を回すだけならそんなに高くはならんと思うがの。まあいいそれはそのうち作るとしよう。欲しくなったら言え」

「ありがとうガンツ。自動で回るやつはね、こう、この泡立てる部分が2つ並んであるといいな。手でかき混ぜないからもう少し丈夫な材料で作って欲しい」

「そうか、ワシの知り合いが、料理屋をやっとるからそいつにでも使わせて作ってみるとしよう」

「それがいいかもね。出来上がったらそのうち僕も注文するよ」

 後片付けをしているとガンツが僕たちの装備を持ってやってきた。

「フェルの盾と腕の装備じゃな。それからケイの頭の装備じゃ」

 少し小型の銀色の盾と白い手甲、それからイヤーカフのような銀色のアクセサリーだった。
 手甲はフェルによく似合っていた。指の関節と手首の部分が白い金属でできていて、おしゃれな模様が入っている。
 腕や肘に当たる部分は革でつくられていた。

「なるべく軽いものをと思い素材を選んだつもりじゃ。関節の具合を見たいから少し動かしてみてくれんか?」

 フェルが言われた通り指の関節や手首を動かしていく。
 ガンツは気になるところを見つけるとその都度フェルを止めて気になった部分に印をつけていった。

 ガンツの調整が終わって手甲を装着したフェルに、ガンツは剣を振ってみるように指示する。
 外に出てフェルが素振りを何度かする。
 ガンツがまた気になるところがあるとフェルを止めてその部分に印をつける。

「ガンツ、これはいいぞ。こんなに手に馴染む防具は初めてだ」

「もう少し調整が必要だの。フェル、お前さん思ったより手首が柔らかいんじゃな。てっきり力で強引に切り付ける感じじゃと思っていたが」

「私はあまり対人の戦いは経験がなくてな、魔物との戦いが多かったのだ。魔物の中には硬い外殻を持つものもいる。そういった硬い魔物にも刃筋が通るように工夫せざるを得なかったのだ。身体強化をするとしても、やはり女の筋力では男の力に敵わない。剣にしても全力で振れる回数は限られてくるから、一撃の攻撃力をあげるにはそれなりに斬り方を工夫する必要があったのだ」
 
「東の国の剣術に少し似ておるの。彼らは斬ることに特化した剣術を使う」

「子供の頃に一度東の国の剣士を見たことがある。師事したわけではないが確かに言われてみれば少し似ているのかもしれない」

「手甲は少し軽くするぞ。少し強度は落ちると思うがあまり影響はないじゃろう。明日の朝取りに来い。さてケイの防具じゃったな。ほれ、つけてみい」

 そう言われてイヤーカフのような装飾品をつけて見る。つけて魔力を流すと顔の周りに何か壁のようなものができる。

「ガンツ、これってもっと薄くできない?もう少し見やすくなるといいんだけど」

 分厚いガラス越しに外を見ているような感覚に違和感があった。

「もっとはっきりとものが見たいんだ。少し薄くはできないの?」

 ガンツはイヤーカフを自分でもつけてみて何か考えている。

「これも明日の朝取りに来い。ちょっと調整しておく」

「ありがとうガンツ、あと弓を引くのに邪魔にならなきゃいいんだけど」

「それも含めて調整じゃな。ところでケイ、お前魔力が見えるのか?」

「え?魔力が見える?そんなこと言われてもよくわからないよ。村では魔法のことを教えてくれる人なんていなかったし。魔法を使うとさ、なんか空気が少しだけ歪んで見えるというか、揺らいでる感じがするんだけどそれって普通じゃないの?」

「普通ではないのう。たまにそういう魔力が見えるという者は存在する。数多くいるわけではないがの。この魔道具が作り出す魔力の防壁が感じられるということは魔力が見えているのではないかと思うぞ」

 村では魔法を教えてくれる人がいなかったから、これが普通だと思ってた。

「特別珍しいわけではないが、誰でもそう見えるわけではない。ケイは誰かにきちんと魔法の使い方を習ったほうがいいかもしれんぞ」

 ガンツはそういうがあいにくそんなお金も伝手もない。魔法を習ったとしても、そんなに威力のある魔法を使える魔法使いになれるとは思わなかった。

「まあ、魔法はいいよ。才能ないと思うし、習ってもせいぜい器用なことができるくらいだと思うし」

「氷魔法でも習えば料理に使えるのではないか?」

 話を横で聞いていたフェルが提案する。

「確かにそうかも。そしたらプリンとかもっと冷たくして、保存もできるよ!」

「ガンツ!知り合いに氷魔法の使い手はいないか?プリンがもっと美味しくなるらしいぞ!」

「うーむ。いないことはないのだが……あいにくあまり王都には来ないしな。どこかの森の奥に住んでいて変なやつなんじゃ。それでも数年に一度は顔を見せにくるから来たら教えるぞ」

「うん。ほんとに都合のいい時で構わないよ。ありがとう」

 装備一式は明日の朝取りに来ることにして帰ることにした。
 
 
 
 








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