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女性騎士
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2 女性騎士
倒れていた女性をおぶって山を降りる。
鎧を着たままでは運べなかったので外させてもらった。
鎧を脱いだその女性は、思ったより軽かった。
1時間ほどかけて慎重に山を降りた。
家に着いてじいちゃんに事情を話す。
じいちゃんと2人で2階の僕の部屋に運び、ベッドに寝かせた。
「ポーションを飲ませたならしばらくすれば目を覚ますはずじゃ。目を覚ましたらきっと驚くじゃろうからそばについててやりなさい。家の手伝いは今日はいいから」
そう言ってじいちゃんは下に降りて行った。
じいちゃんは村で唯一の食堂をやっている。
食堂と言っても、お金をとって料理を出す、というわけではない。
村の人が自分の畑で採れた収穫物を持ってきて、それと交換で食事を出すのだ。
自炊の苦手な人や独身の人などが利用している。
僕は昔から料理するのが好きだったので小さい頃からよくじいちゃんの手伝いをしてた。
今ではすっかり料理の腕も上達して、森でとってきたキノコや薬草、野草などを入れて作る僕のスープはけっこう評判がいい。
今はいろいろあってお客さんには出していないんだけど。
村をでたら王都に行き、料理人でもやろうかと思っている。
それにしてもきれいな人だな。
整った顔をしたその女性はベッドで静かに寝息を立てている。陽の光があたると髪の毛が金色に輝く。まるで物語のお姫様みたい。
枕元に椅子を持ってきて、ベッドのそばに座りながらその女性を眺めた。
まつ毛長いなぁ。
高そうな鎧を着てたけど騎士なのかな?
女性騎士。なんかかっこいいな。
でも、なんであの山に倒れていたんだろう。山越えしてきたのかな?
ということは隣国の騎士なのかな?
僕の村は王国の外れにある。山一つ越えれば隣国だ。
山の奥には強い魔物が出るから僕は行ったことはない。危険なぶん、いい素材も取れるのだけど、両親はその山の奥で魔物にやられてしまった。
両親が戻らないので、2人を探しに山狩りに出た村の狩人が、両親の遺品を持ってきてくれた。
死体は、山に埋めてきたそうだ。
それにしても大丈夫かな?
頭の傷は治療したけど他には傷はないかな?
こんな綺麗な顔に傷でも残ったらかわいそうだ。
おでこに手を当てて前髪を上に上げる。
他にもないかと、顎に手をあてて顔を横に向けようとする。
瞬間、女性の目がぱちっと開く。
僕はびっくりして椅子から転げ落ちてしまった。
女性がかばっと体を起こして辺りをキョロキョロとしている。
少しベッドから離れて、できるだけ優しい声で話しかけた。
「おはよう……でいいのかな?君は山の中で倒れていたんだ。僕が見つけて手当てしたんだよ。ポーション飲んだの覚えてる?そのあと僕の家まで運んできたんだ。ここは安全だから大丈夫だよ」
なんとか落ち着きを取り戻して、その女性は少し固い口調で自分の名を名乗った。
「助けていただいたことに感謝する。私はフェリシアだ。隣国で騎士をしている…いや、もうしていた……か、少し事情があって山を越えた。少年、ここは……王国でいいのか?」
「フェリシアさんっていうんだね、僕はケイっていうんだ。ここは王国の外れにある村だよ。なんか事情があるみたいだけど、まずは怪我の具合はどう?どっか痛いところある?」
「そうか、無事山越えできたのか……途中大きな熊に襲われて、かろうじて撃退はできたのだが、体当たりでふっ飛ばされてしまってな、その時足の骨を折ってしまったようだ。今は……痛みはないがまだ少し体が重い気がするな」
マジックバッグから最後の中級ポーションをとりだしてフェリシアさんに渡す。
「内臓が傷ついてたら大変だからポーションもう1本飲んでおいて。僕はフェリシアさんが着れるものを探してくるよ。体も拭きたいでしょ。お湯もとってくるね。あ、それからフェリシアさんの装備は外させてもらったよ。鎧を着たままだと僕の力じゃ運べなくて。落ちてた剣とかも持ってきたから確認して」
そう言ってマジックバッグからフェリシアさんの装備を出した。
1階に行ってじいちゃんにお湯を用意してもらい、母さんが着てた服を適当に見繕って、まだ使ってない新品のタオルとお湯を持って2階に上がった。
部屋をノックして返事が聞こえたので中に入る。
女性の対応なんてしたことないから少し緊張してしまった。
「これ死んだ母さんが着てたものなんだけど、よかったらこれに着替えて。お湯はここに置いておくね。着替えたものはまとめて置いてくれれば洗濯するよ」
「じゃあまた後で来るから。着替えたら横になってて」
飲み終わったポーションの瓶を回収して、マジックバッグを持って下に降りる。
台所兼厨房にいき、お茶を淹れる。
バッグから少しだけど、今日取れた山菜と薬草を出して下処理する。
そうこうしているとお茶ができた。
木製の湯呑みのコップにお茶を入れ、村では貴重品の砂糖を少し溶かした。
2階に上がり、部屋に行くとフェリシアさんはもう着替えていた。
美人は何を着ても似合うのか、上品そうなお金持ちのお嬢さん。そんな姿をしていた。
少しの間見惚れてしまって、僕は固まってしまう。
いやいや、しっかりしろ僕。
気を取り直してフェリシアさんにお茶を渡す。
「お腹空いてるよね?今からご飯作るからもう少し休んでて。そんな大したものは用意できないけどできるだけ美味しいもの作るから」
洗濯物を受け取って下に降りた。
鎧下というのか、丈夫そうな薄手の服を洗濯桶に入れて生活魔法で水を入れる。
小さい火の玉を出して水に入れ、ぬるま湯を作った。
洗濯物の中に下着が入ってるのを見て、慌てて母さんの下着を持って上に上がり、顔を真っ赤にさせながら下着をフェリシアさんに渡す。
やばい、まともに顔が見れない。恥ずかしい。
逃げるように下に降りてスープを作ることにした。
倒れていた女性をおぶって山を降りる。
鎧を着たままでは運べなかったので外させてもらった。
鎧を脱いだその女性は、思ったより軽かった。
1時間ほどかけて慎重に山を降りた。
家に着いてじいちゃんに事情を話す。
じいちゃんと2人で2階の僕の部屋に運び、ベッドに寝かせた。
「ポーションを飲ませたならしばらくすれば目を覚ますはずじゃ。目を覚ましたらきっと驚くじゃろうからそばについててやりなさい。家の手伝いは今日はいいから」
そう言ってじいちゃんは下に降りて行った。
じいちゃんは村で唯一の食堂をやっている。
食堂と言っても、お金をとって料理を出す、というわけではない。
村の人が自分の畑で採れた収穫物を持ってきて、それと交換で食事を出すのだ。
自炊の苦手な人や独身の人などが利用している。
僕は昔から料理するのが好きだったので小さい頃からよくじいちゃんの手伝いをしてた。
今ではすっかり料理の腕も上達して、森でとってきたキノコや薬草、野草などを入れて作る僕のスープはけっこう評判がいい。
今はいろいろあってお客さんには出していないんだけど。
村をでたら王都に行き、料理人でもやろうかと思っている。
それにしてもきれいな人だな。
整った顔をしたその女性はベッドで静かに寝息を立てている。陽の光があたると髪の毛が金色に輝く。まるで物語のお姫様みたい。
枕元に椅子を持ってきて、ベッドのそばに座りながらその女性を眺めた。
まつ毛長いなぁ。
高そうな鎧を着てたけど騎士なのかな?
女性騎士。なんかかっこいいな。
でも、なんであの山に倒れていたんだろう。山越えしてきたのかな?
ということは隣国の騎士なのかな?
僕の村は王国の外れにある。山一つ越えれば隣国だ。
山の奥には強い魔物が出るから僕は行ったことはない。危険なぶん、いい素材も取れるのだけど、両親はその山の奥で魔物にやられてしまった。
両親が戻らないので、2人を探しに山狩りに出た村の狩人が、両親の遺品を持ってきてくれた。
死体は、山に埋めてきたそうだ。
それにしても大丈夫かな?
頭の傷は治療したけど他には傷はないかな?
こんな綺麗な顔に傷でも残ったらかわいそうだ。
おでこに手を当てて前髪を上に上げる。
他にもないかと、顎に手をあてて顔を横に向けようとする。
瞬間、女性の目がぱちっと開く。
僕はびっくりして椅子から転げ落ちてしまった。
女性がかばっと体を起こして辺りをキョロキョロとしている。
少しベッドから離れて、できるだけ優しい声で話しかけた。
「おはよう……でいいのかな?君は山の中で倒れていたんだ。僕が見つけて手当てしたんだよ。ポーション飲んだの覚えてる?そのあと僕の家まで運んできたんだ。ここは安全だから大丈夫だよ」
なんとか落ち着きを取り戻して、その女性は少し固い口調で自分の名を名乗った。
「助けていただいたことに感謝する。私はフェリシアだ。隣国で騎士をしている…いや、もうしていた……か、少し事情があって山を越えた。少年、ここは……王国でいいのか?」
「フェリシアさんっていうんだね、僕はケイっていうんだ。ここは王国の外れにある村だよ。なんか事情があるみたいだけど、まずは怪我の具合はどう?どっか痛いところある?」
「そうか、無事山越えできたのか……途中大きな熊に襲われて、かろうじて撃退はできたのだが、体当たりでふっ飛ばされてしまってな、その時足の骨を折ってしまったようだ。今は……痛みはないがまだ少し体が重い気がするな」
マジックバッグから最後の中級ポーションをとりだしてフェリシアさんに渡す。
「内臓が傷ついてたら大変だからポーションもう1本飲んでおいて。僕はフェリシアさんが着れるものを探してくるよ。体も拭きたいでしょ。お湯もとってくるね。あ、それからフェリシアさんの装備は外させてもらったよ。鎧を着たままだと僕の力じゃ運べなくて。落ちてた剣とかも持ってきたから確認して」
そう言ってマジックバッグからフェリシアさんの装備を出した。
1階に行ってじいちゃんにお湯を用意してもらい、母さんが着てた服を適当に見繕って、まだ使ってない新品のタオルとお湯を持って2階に上がった。
部屋をノックして返事が聞こえたので中に入る。
女性の対応なんてしたことないから少し緊張してしまった。
「これ死んだ母さんが着てたものなんだけど、よかったらこれに着替えて。お湯はここに置いておくね。着替えたものはまとめて置いてくれれば洗濯するよ」
「じゃあまた後で来るから。着替えたら横になってて」
飲み終わったポーションの瓶を回収して、マジックバッグを持って下に降りる。
台所兼厨房にいき、お茶を淹れる。
バッグから少しだけど、今日取れた山菜と薬草を出して下処理する。
そうこうしているとお茶ができた。
木製の湯呑みのコップにお茶を入れ、村では貴重品の砂糖を少し溶かした。
2階に上がり、部屋に行くとフェリシアさんはもう着替えていた。
美人は何を着ても似合うのか、上品そうなお金持ちのお嬢さん。そんな姿をしていた。
少しの間見惚れてしまって、僕は固まってしまう。
いやいや、しっかりしろ僕。
気を取り直してフェリシアさんにお茶を渡す。
「お腹空いてるよね?今からご飯作るからもう少し休んでて。そんな大したものは用意できないけどできるだけ美味しいもの作るから」
洗濯物を受け取って下に降りた。
鎧下というのか、丈夫そうな薄手の服を洗濯桶に入れて生活魔法で水を入れる。
小さい火の玉を出して水に入れ、ぬるま湯を作った。
洗濯物の中に下着が入ってるのを見て、慌てて母さんの下着を持って上に上がり、顔を真っ赤にさせながら下着をフェリシアさんに渡す。
やばい、まともに顔が見れない。恥ずかしい。
逃げるように下に降りてスープを作ることにした。
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