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本編

コマンド▼『胎盤を蹴る』

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脈打つ鼓動と温かい血(?)の流れを感じる。
目を開いて自分の姿を確認しようとするが、この存在自体がまだ生まれて間もないのか、瞼がくっついて離れない。細胞に転生でもしたのか?
今度は人間じゃなかったり・・・・・・・・・してな。
ただ、ここは心地がいい。俺はこのまま彷徨っていたい。


「もうすぐ生まれそうなんじゃがなあ……」

生まれるって、俺か?

渋い老紳士っぽい声が鼓膜を揺さぶる。
優しそうなおじいちゃん、そんな感じ。
俺はこの声の主の孫として生まれるのだろうか。
それか嫁のばあちゃんか愛人とハッスルしたんだろうなあ……。
想像したらちょっとアレだが、この身体が俺の母さんのものに変わりない。
大事に育ててもらえるなら、喜んでもらえて産声を上げるよ。
だけどまだもう少しこのぬるま湯にいさせてくれ。


「ホッホッホ、早く会える日が楽しみじゃ」

何か反応してあげたいな。
フンッ!

「おお!今蹴ったぞ!そうかそうか、お前も早くここから出てきたいか」

あ、俺今胎盤か何か蹴ったのか。
たったそれだけでこんなに嬉しがってくれて……望まれた生命も悪くないものだな。

きっと、濱田准はまだじゅんもレノ・ゼロムヴァースも最初はこうやって家族からその誕生を祝福されたんだろう。
二度も無駄にしてしまって、死に方も酷いものだったが……内容としては別段悪いものじゃなかったと思う。
それぞれの人生、どちらも必死に努力して培ったものは、世渡り下手な俺に今度こそプラスとして働くはずだから。

「毎日語りかけておったが、『お前』と呼び続けるのは忍びないのう。
何かいい名前……」

毎日話しかけてくれてたって、暇人だな。
いやまあ老人ならどこに行っても暇な存在か。

それにしても、名前か~!かっこいい名前を付けてほしいな。
前の「レノ・ゼロムヴァース」、実は結構気に入ってたんだよ。
単純にRPGの主人公感あって、ルックスもイケメンだったから似合ってたしさ。
女の子から呼ばれた時の『レノ』って響きも良かった。
これを超える名前なんてそうそう出てこないんじゃねえの~?

うーん、うーん、と悩みまくるじいちゃん。
おうおう悩め悩め!
この俺を満足させてくれよ?(どこから目線だ)

「ど、ドミ……ノ」

ドミノ?!
一旦落ち着こうか、それはピザ屋の名前だ。
俺の偏見だが、その名前にされると将来メタボになることが約束されてる気がする。
いつだって俺はイケメンでありたいんだよ!

「なんか違うなあ……」

フンッ!

「お前もそう思うか……。どうしようかのう?
語感はこんな感じでいくとして……」

ええ、語感変えてくれないの?
大事なとこじゃん、じいちゃん慎重に考えよ?

ドムドム……デミデミ……。
聞こえる単語が洋食チックな雰囲気でよろしくない。
意思表示が『胎盤を蹴る』しか出来ないので、あまりこの身体の持ち主に負担をかけたくないし……極力静かにしているけど。

「デミグラス!!! 」

フンッ!!!(すまない、母さん!)

それハンバーグにかけるソースやん!
じいちゃん、やめて考え直してお願いしますぅ!

「今までで一番大きな反応じゃったな!
お前さんも気に入ったか、『デミグラス』。
今日からお前の名前はデミグラスじゃ!」

あああああーっ…。
どうやら阻止できなかったらしい。
俺の次の名前『デミグラス』確定かよ……!

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