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序章
二人の旅立ち
しおりを挟む薄いオレンジ色の光が二人の営みを優しく照らす。
脱ぎ散らかされた衣類と擦れるシーツの音。
交わる吐息は熱を帯びて酒で温まった体温をさらに熱くする。
滑らせた掌はスラリと長く美しい脚をゆっくりと撫で、次第に下へ下へと伸びていき、既に濡れたそこに指をつぷ、と沈めた。
すぐに反応して跳ねる身体も可笑しくて愛おしい。
「は、ぁ……」
「アーノンさん、可愛い」
「やだ…っ…言わないで…」
幼い頃から目を奪って離さなかった彼女の艶めかしい豊満な身体。いつからか触れたいと思うようになっていたこの形の良い大きな胸も、この吸い付くような白い肌も全て今は俺だけのものだ。
普段は飄々とした雰囲気を纏っている彼女の、快楽に歪む顔にとてもそそられる。
汗で頬に張り付いた前髪をすくって、そっと唇を寄せた。
「ふふ。くすぐったい……」
夜は次第に更けていく。
・・・
朝日の眩しさと、頭を撫でられる優しい手の感触で目が覚める。
勇者の旅立ちの朝がやってきた。
「おはよう、レノ」
「おはようございます、アーノンさん」
「アーノン『師匠』、だ」
「はーい」
昨夜の出来事は胸の中にしまえってことだろう。
俺はあくまでこの人と師弟の関係で、それ以上にはなれない。
精神的には彼女よりいくつか年上なのに、見た目にまだ幼さが残るからか、いつまでも子供扱いでそれが歯がゆい。
自然と膨らむほっぺたに人差し指を押し付けられる。
「ただまあ、なんだ。昨日のキミはその……カッコよかったと思う。一人の男として」
「……カッコいいのは当たり前です。なんたって世界を救う勇者ですよ?
どんどん男らしくなっていって俺はいつか貴女を見返すんですから」
「ハハ、そーかい。楽しみにしてる」
これから俺はこの広大な世界の各大陸を巡礼し、勇者を支えるパーティーに必要不可欠な、魔法使いや僧侶を仲間にしなければならない。
大陸を回ったあとは、魔族によって支配された「不浄の地」を目指す。そこで人間達から恐れられているダークエルフの王を討ち殺し、不浄の地を人間の手に取り戻すことが勇者の使命だ。
約二年の旅路になる予定だが、あくまで目安であり、俺が手際よく仲間を増やせればの話。
二人とも着替えると、一緒に食べる最後の朝食で六年の思い出を振り返り、会話に花を咲かせた。
「では師匠、どうかお体に気を付けて、お元気で。」
「ああ、そのことなんだが」
「はい?」
「私もキミの旅に同行しようと思う」
「は?」
「なんだ、不満か?」
「……いえ」
不満か、と聞きつつ自分が一番不満そうな顔なの辞めてほしい。
むしろ心強いけど、危険の伴う旅に一緒に行くのは嫌というか……。
この人本当にわかってるのか?
死ににいく弟子の最期を見たいってどんな神経してんだよ。
さすがの俺もわーい!とか言えねえぞ。
というか、むしろ悲しい。
黙り込む俺に、師匠が矢継ぎ早に言葉を浴びせる。
「勘違いしないでくれよ!キミのことが好きだからとかじゃなくて、師匠としてキミの人生に最期まで関わりたくなったから……。
ただそれだけだ」
なんだそれ。
好きって言ってるようなもんじゃん。
照れた顔が昨夜を彷彿とさせて、俺も釣られて一緒に赤くなった。
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